跳躍の秘密② 踏切のあれこれ
久しぶりの更新になってしまいました。まだ寒暖差が激しい日々が続いていますが良いトレーニングはできていますか?
今回は、間が空いてしまいましたが前回の続き、跳躍について書いていこうと思います。前回は助走について書きました。
今回のテーマは「踏切」です。
さて。前回の記事で、跳躍の記録は踏切時の初速で決まる、とお伝えしました。間違いではないのですが、前回少し省いた説明があります。それは踏切方の話。記録は踏切時の初速で決まる、と言うからには、踏切が上手くいかないと様々な問題が発生するわけです。ではどんな問題でしょうか?
たまに走幅跳や走高跳で、踏み切った瞬間にまるで膝カックンをされたかのようにバランスを崩す選手がいます。トップ選手でもたまに起こることがあります。よくそれを「つぶれた」と表現します。跳躍はつぶれてしまうと遠く、高く跳べません。
この原因は大まかに分けると2つの原因があります。
1つ目は踏切の技術的問題で、上から踏むような踏切をしてしまい、助走スピードに踏切脚が負けてしまうことです。
…絵心が全くなくてすみません。
ただ走っていて踏切板や踏切位置で叩きつけるような踏切をしてしまうと上の絵の左のようになってしまいます。一方、右の絵のように支えを作ると、上手く地面の反発力を得ることができます。もちろんこの時の重心位置は踏み切った脚の真上になっているのが必須です。
この改善のためには、少し感覚的な話になるのですが、踏切の時に、踏切脚を踵から前にスッと地面を擦るように出すとちょうど良いかと思います。特にミニハードルでドリルを行う場合は、極端にやってみて良いかと思います。実際助走をしてこの動きをすると、極端さは無くなって、自然に地面の反発力が得られるような踏切になると思います。この動きは、全力100%で走っているときにはできません。前回の記事にも書きましたが、助走スピードを維持しようと考えるとできない動きなので、段々助走スピードを上げていった最後であればこれができる余裕が生まれると思います。
2つ目の問題は、リードレッグと呼ばれる、踏切と反対脚の問題です。
①の場合、リードレッグが遅れています。踏切の時にあごを上げすぎたり、身体が反った状態で踏み切ると起こりやすい現象です。身体は跳び上がりたいのに、導くべき脚が追いついていないので、結果跳び上がる勢いが減ってしまいます。
②の場合、リードレッグを高く上げ過ぎようとするあまり、腰が落ちてしまい、やはり正しく地面の反発力が得られません。絵は若干誇張しましたが、実際、「リードレッグは高く上げなさい」と言う指導者は多く、また学校体育でもそのように教える様子も見てきました。
踏切で大事なのは、リードレッグを高いか低いかで判断するのではなく、タイミングがいいかどうかで判断することです。これは①にも通じることですね。踏み切った瞬間に、リードレッグの膝が踏切脚よりも前にある、ということがまず前提です。踏切のタイミングに合わせて膝がポンっと前に出る、と言う感覚をやはりドリルで追求してみてください。
ここからは、なぜ踏切が大事なのかを別の視点でお話します。
跳躍種目というのは、水平方向に走ってきた力を上方向へ変換しなければいけない競技です。踏切にはその変換の役割があります。水平方向から垂直方向への変換を別の言い方に変えると、重心の移動方向が変わる、ということです。本ブログで何回も登場している重心の話がまた始まります。
皆さんは垂直跳びをする時にはどういう動作をしますか?
きっと皆さん、両手を後ろに思い切り振って、同時に膝を曲げて、両手を前に振った勢いで一気に膝を伸ばしてジャンプすると思います。実は跳躍種目はこれと同じ原理で跳んでいるんです。
え?と思う方もいるかもしれません。確かにそうなんです。垂直跳びと全くもって一緒なわけではありません。跳ぶ方向と使う力が違うので、見た目は違います。しかし、重心を引き上げる、という原理は垂直跳びも跳躍種目も変わりません。
上の図も何だかへなちょこですみませんが、一応助走での重心位置の変化を簡単に書いた図です。どの跳躍種目でも踏切1歩前で軽い沈み込みをしています(棒高跳、三段跳はさほど沈みませんが)。垂直跳びで言う、腕を後ろに振って膝を曲げた状態です。そこから踏切に向かって重心が上がって踏切ります。この重心位置の差が、跳躍に角度を生みます。なので、踏切の大事さについて書いていますが、踏切1歩前で踏切の準備ができるかどうか、と言うのも大きなポイントになります。跳躍種目ではもちろん片脚で踏み切りますので、重心を引き上げるためには、リードレッグはもちろん、両腕も(厳密に言えば肩も)総動員することが大事です。
本当はこれを書いている午前中に動画を撮りたかったのですが、天気が悪くて撮れなかったので、これから色々トレーニング方法を下手くそな絵で描いていきます。
①長座ジャンプ
長座の姿勢から肩と腕を引き上げて、その力だけでジャンプするというドリルというか遊びです。これができるようになると、踏切時に大きな力になると思います。
②台を使ったトレーニング
上の画像は走高跳の練習法の1つです。30センチか45センチの台を使って踏み切ります。
こちらは走幅跳の例です。(1)は踏切位置に、踏み切り板カバーなどを置いてそれを使って跳ぶパターン、(2)は、踏切2歩前にゴムマットやタータンの切れ端かなんかを置いて、1歩前の沈み込みを意識的に生み出す方法です。
走高跳の例も走幅跳の例も、どちらも、重心移動を意識的に作り出すことをしていて、身体にその感覚を染み込ませることが狙いです。どちらもよく見かける練習ですが、目的を理解しないと無駄に跳ぶだけになってしまいますので、これまで書いたことも頭に入れつつ取り入れてみてください。
今回は跳躍種目の踏切について書きました。跳躍種目を教えられる人って意外と周りにいないんじゃないでしょうか?と、自分の周りを見ているとそう思っています。指導者が居なくて困っている跳躍選手のために少しでも力になってくれれば幸いです。
次回からは少しコアな記事を書いていこうかなと思っています。ある種目のこれってなんで?や、どうしたらいいの?など、テーマをさらに絞ってみようと思います。
それでは。