複合の魅力〜北京五輪 ノルディック複合 ノーマルヒル〜
このレースを表現する言葉が見当たらない。。。
それほど凄まじく、ノルディック複合の魅力が詰まったレースでした。
大きな集団で牽制しながらゴール前スプリント、といったオーソドックスなものではなく
小グループで戦いながらも
最後まで、「逃げグループ」と「追いグループ」が死力を尽くし
ゴール前で双方のグループが交錯しての決着という
手に汗握る試合展開でした。
前半ジャンプ
今季、そして張家口に来てからも
ピリッとしないジャンプを続けていた山本涼太。
本来の力が出るとジャンプ選手のようなとんでもないジャンプを見せます。
そんなジャンプを本番で決めてきました。。。
75m付近から、フワッとバーンから離れ推進していく、この技術。
羨ましい限りです。。。
序盤の空中の揺れと、着地でやや足が広がったので
思ったよりも飛型点は伸びませんでしたが
飛距離と着地に関してほぼ完璧だったと思います。
2位と38秒差でスタートという大量のマージンを獲得しました。
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この山本涼太が飛んだ近辺は、風の状態がよく
Greiderer、Rydzek、といった
走力のある選手が飛距離を伸ばしてきました。
一方で、トップ10のところでは
やや風の状況がおとなしくなり、山本涼太を除くと
タイム差が大きくない、混沌とした順位表となりました。
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何より、大きな特徴としては
プレビューの時に挙げた
Herola、Graabak、Geigerが近いタイム差で固まっていてグループになっているところ。
もう一つの注目は走力のある
Greiderer、Rydzek、Schmidの3人がタイム差がほぼなく
前述したグループと30秒ほどという
追いつけるか、逃げ切れるか微妙なタイム差で前にいるというところでした。
後半の展望
普通のコースであれば、可能性は低いながらも山本涼太の逃げが決まるか
Greiderer、Rydzek、Schmidが涼太を吸収し4人での争い。
さらに、この4人が牽制するとHerola、Graabak、Geigerが追いついてきて混沌とする。
その3パターンと考えるのがベターでした。
一方で、予想を難しくしたのが標高。
プレビューでも挙げましたが
1600mを超える標高に加えて
長い登りがあり、タフなコース。
レースタイムは24分くらいと予想できていたので10キロにしては短いですが
ペースを間違えると一気にダメージがくることが容易に予想できました。
慎重に入るのか、前を追ってからレースを組み立てるのか
各選手、判断が難しかったと思います。
死闘の行方
逃げを選択しなかった山本涼太は、大量リードを2.5キロで使い切りました。
一方で、後ろの集団から逃げる、間違っても涼太を逃させないと
Greiderer、Rydzek、Schmidの3人は前半からハイペース気味でレースを進めました。
早々に勝負を決めたかったのでしょう。
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一方で、落ち着いて入ったのが
後ろのHerola、Geiger、Graabakの最速グループ。
慌てて追うことなく、先頭を交代しながらチャンスを窺っていました。
そのため、前半戦はなかなか前との差は縮まらず
それを見て、個人的に「追いつくのは難しそう」と考えていました。
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先頭集団
走力が非常に高いドイツのRydzekとSchmidが先頭を交代しながら
ペースを落とさず、後ろのグループからの逃げを選択する一方
走力が高いものの、やや分が悪いGreidererはほとんど前に出ませんでした。
みるみる消耗していくSchmid。
残り1周となって、まだ20秒差。
後ろのグループは3周で20秒しか詰められなかったので
逃げ切れると確信したRydzek、最終周の最初の長い登りでアタックし
勝負を決めにかかりました。
そうして、Schmidは振るい落とし
Greidererも大きく消耗させ、突き放すことに成功。
普段であれば、ここで決着し2大会連続の金メダルだったでしょう。。。
後ろからペースを上げてくる集団
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Herolaを中心に、先頭を交代しながら我慢を続けていた
Graabak、Geiger、Herolaの集団。
3周目からGeigerとGraabakを中心にしてペースアップ。
この1周で10秒縮めると、最終周はさらにペースアップし
4周目の登り
RydzekのペースアップについていけなかったSchmidを、捕まえる体制に入りました。
さらにその先、登りの頂上付近で、Greidererの力尽きかけている姿も見えていたのでしょう。
登りでSchmidをパスして、一気に銅メダル争いが混沌とさせると
更にペースアップしました。
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序盤、そして最終週でGreidererを振り切るのに力を使ったRydzek
ゴールまでわずかな距離ではありましたが、ペースが極端に落ちました。
そこにきて、ペースを上げて追ってくる
GeigerとGraabak
ゴール数百m手前
下り坂から、勢いに乗ったGeigerとGraabakは最後の登りで
GreidererとRydzekに追いつき、一気に抜きました。
抜かれたことによって力尽きたRydzek
そしてゴール前の争いは、GeigerとGraabakへと移り
Graabakの強力なスプリントを封じ込める、速度維持を見せて
Geigerが制しました。
銀メダルにGraabak、力尽きたRydzekを抜き去ったGreidererが銅メダルを獲得しました。
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Rydzek、Schmid。
走力のあるドイツ人コンビが勝負をやや焦ったが故に
普段と違う、高地独特のダメージに耐えきれなかったように見えました。
一方でその2人に隠れてチャンスを待っていたGreidererが銅メダルに粘るという
ペース配分と駆け引きの面白さを見ることができました。
そして
なんといっても、後半のGeiger、Graabakの走りは圧巻でした。
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この日、とんでもない走りを見せたGeigerよりも
速くて、めっちゃ飛んでいくRiiberがいるというのは
考えないでおきましょう。。。。
日本チーム
Geiger、Graabak、Herola、Lamparterの高速トレインに食らいつき
ラップ4位、7位入賞を果たした渡部暁斗さん。
この試合展開での
金メダル争いには、ジャンプでもう5mほど必要でした。
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渡部善斗さんが13位で、前半から順位をキープしました。
やや風に泣かされ、出遅れはしましたが
集団に食らいつき続けました。
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山本涼太が14位。
高地順応や、独走での走りでペースを掴めず
大量マージンを有効活用しきれませんでした。
涼太に関しては、ジャンプの得意な3人の欠場が大きく響く形となりました。
誰かがいれば、一緒に走りペースを掴めたかもしれません。
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谷地宙が30位。
会心のジャンプを決めて、5位スタートと上々な前半となりましたが
狙いを定めたLamparterのペースについていけずに消耗し
順位を大きく落としました。
色々チャレンジしながら、競技力向上の術を探っている段階なので
特にネガティブな要素は見当たりません。
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差がつきにくいノーマルヒル
標高、コースプロフィール、雪質と
どれをとっても走力が重要視されるこの地では
まずは飛んでいかなければ、勝負に入っていけません。
また、陽性で欠場した4人が参戦すれば
大きく試合展開が変わります。
日数も経ち、高地順応力も問われるのでしょう。
全く違うラージヒルが見れると思うので
今から既に楽しみです。
実力以上の走力を見せたアメリカチーム。
彼らは直前のワールドカップをスキップしており
高地で調整していたのでしょう。
高地の難しさが浮き彫りになっています。