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その会議、必要?「非同期ファースト」の考え方

どうも、エンジニアのgamiです。

仕事をする中で、不用意にミーティング(MTG)を入れられることがあります。そんなとき、つい「これ非同期でよくないですか?」と言ってしまいます。

もちろん、全てのMTGが悪だとは思いません。しかし、便利なSaaSの普及によって、非同期的な仕事の進め方というのが格段にやりやすい時代になりました。非同期的コミュニケーションをうまく取り入れることは、本質的な価値に向き合い楽しく働くための、第一歩かもしれません。


なぜ人類は無駄なMTGを撲滅しなければいけないか?

非同期的に仕事を進めることのわかりやすい価値は、同期的なMTGを減らせることです。そもそも、なぜ同期的なMTGを減らさないといけないのでしょうか?

もちろん、MTGの時間自体が減れば、参加者はその浮いた時間で他の作業ができます。それに加えて、MTGが同期的であることの弊害も存在します。

一般に、デスクワークが多い仕事では一人で集中して思考したり作業したりする時間が必要になります。そして人間が思考や作業のコンテキストを切り替えるためには、普通コストがかかります。特に抽象的で深い思考が求められるような作業は、再び着手するときにあれこれ思い出す時間がかなり取られます。つまり、仕事で成果を上げるためには、まとまった作業時間をいかに確保するかが重要になります。

たとえば、AさんがBさんに資料のレビューをしてもらうためのMTGをセットしたとします。このMTGには、次の要素が含まれています。

AさんがBさんに資料の説明をし、レビューを依頼する
Bさんが資料を確認し、コメントする

もし、このMTGをばらしてお互い非同期に「依頼」と「確認」を進められるとしたら、次の図のように各自が作業時間を調整できるようになります。

スクリーンショット 2021-04-19 5.20.58

このように、1つの同期的なMTGを非同期的な各々の作業に分割したことで、AさんもBさんも「まとまった作業時間」をより長く確保できるようになります。

同期的とは、「みんな一緒にやりましょう」ということ

ここで改めて、「同期的/非同期的」という言葉についてイメージを揃えておきましょう。

同期(synchronous)や非同期(asynchronous)という言葉は、情報技術の分野、特に通信やそれを伴うプログラムの話でよく登場します。そのイメージを持って、人間同士のコミュニケーションや共同作業についてもこれらの言葉が使われるようになりました。

「同期的である」とは、簡単に言えば「みんな一緒にやりましょう」ということです。参加者全員が他の作業を止めて同時に時間を確保し、まとまったタスクを実行します。具体的には、電話やMTG(会議)などは同期的なコミュニケーションといえます。

逆に「非同期的である」とは、「各自でやっておいて」とか「終わったら教えて」といった具合です。一般的には、メールやチャットを使ったコミュニケーションは非同期的なものになります。また、ドキュメントを作成して各自で読んでもらうというのも、非同期的な仕事の進め方といえます。

ただし、「チャットツールを使えばコミュニケーションが必ず非同期になる」というわけではない点には注意が必要です。たとえば、LINEで家族や友人とチャットするとき、対面で会話をしているようなスピードでラリーが続くこともあります。同期か非同期かという違いは、結局は「相手の返信がすぐに返ってくる」という期待を持っているかどうかの違いでしかありません。その意味では、「非同期的である」ということの本質は、「すぐに返答が来るという期待を捨てること」にあるといえます。

非同期という武器でMTGを駆逐する

かつて、仕事上のコミュニケーション手段は基本的に会議か電話しかありませんでした。もちろん重要な書類は非同期的に郵送されていたでしょうけれど、日常の些細なコミュニケーションに手紙を使うのはあまりにも時間がかかりすぎます。そこから、1990年代に電子メールが仕事で使われるようになります。Outlook Expressが1996年、Gmailが2004年に登場します。2010年代からは、次第に電子メールの役割の一部がチャットツールに置き換えられました。ChatWorkは2011年、Slackは2013年、Teamsは2017年にリリースされています。

こうしてみると、「非同期コミュニケーション」という選択肢を日常の仕事で気軽に選べるようになってから、そこまで日が経っていないことがわかります。ビジネスメールの普及から約20年、ビジネスチャットツールの普及から約10年ほどしか経っていないわけです。私たちは、どのようにこの「非同期的な仕事の進め方」という武器を使っていけばいいのでしょうか?僕の考えを書きます。

まず、同期的なMTGなどというものは基本的には無い方が望ましいはずです。前述した通り、同僚の中でもどの時間帯に自分の作業時間を確保したいかというのは当然異なります。

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こうした各人の事情を無視して同期的なMTGをバカスカ入れることは、参加者全員の作業効率を落とすことになります。(ちなみに参加者の多いMTGほど被害者が多くなります。)逆に、同期的なMTGによって実現したいことを非同期的な各自の作業に落とし込めれば、各人が自分の予定や計画を自由にコントロールできる余地が広がります。メンバーが十分に自律的であれば、自由度が高いほど効率が上がります。

非同期的な仕事の進め方に慣れると、多くのMTGは時間を短縮できたりそもそも無くせたりすることに気付きます。中でも、特に非同期で進めた方がいいことが2つあります。

1つ目は、情報共有です。MTGの場などで行われる同期的な情報共有は、参加者間の差異を無視して一律に行われます。往々にして、理解力や知識に乏しい人のレベルに合わせて行われてしまい、多くの人にとっては無駄の多い作業になります。これらに差がある以上は、「ドキュメント化したから読んでおいてね。わからなかったら訊いてね」と非同期的に確認作業を投げた方が一般に効率が上がります。

2つ目は、思考を深めることです。MTGをすると参加者の思考が深まると誤解しがちですが、そもそも浅い思考同士を持ち寄っても思考は浅いままです。資料を読み込む、より良い方法を考える、といった作業は、大抵はまず一人でやった方が良い結果になります。「叩き台作ったのでコメントください!」みたいな非同期の依頼を投げた方が、じっくり読み込んだ上で本質的な指摘を得られることが多いです。その結果として必要性を感じたときに初めてMTGをセットすればいいと思います。

ちなみにこういうことをいうと、「非同期に依頼してもやってくれないかも......。」という不安の声が上がりがちです。しかし、同期的にMTGをしたところで興味が薄い人はもともと聞いていないので問題ありません(暴論)。

「非同期ファースト」という考え方

ということで、仕事上のコミュニケーションは「まず非同期でできないか」と考えた方が、不必要にメンバーの時間を奪ったり効率を下げたりすることが減ります。この考え方を、「非同期ファースト」と呼んでみることにします。

「非同期ファースト」を進める活動は、会議や電話などの同期的なコミュニケーションに対して疑問を投げかけるところから始まります。

その会議、そもそも必要ですか?
・1時間って長くないですか?事前に内容を共有してもらえれば、予め読んでコメントしますよ
いきなり電話もらってもお答えできないので、まず資料だけメールでもらっていいですか?

立場や文化によってはこうした発言をしにくいこともあるかもしれません。僕は新卒で某大企業に入りましたが、1年目で上司に対してこんな発言をしろ言われても恐ろしくてできなかったと思います。しかし、このような素朴なフィードバックをすることはとても重要です。そうしないと、無駄なMTGは増え続け、本質的に価値ある仕事に集中できなくなり、仕事が前に進みにくくなってしまうからです。チームや事業のための価値あるフィードバックを蔑ろにするような組織は根本から腐っているので、立て直すか辞めるかした方が良いと思います。

一方、「非同期ファースト」は、全てのコミュニケーションを非同期で完結させようとする「非同期原理主義」ではありません。まず「非同期でできないか?」を考えて、それでも同期的なコミュニケーションをした方がいいという結論になることも、たくさんあります。

同期的なMTGには、複合的かつ多様な効果があります。たとえば、状況やMTGのやり方次第で次のような効果を得ることができます。

各人の深い思考を戦わせて、よりよい結論を導く
チーム立ち上げ初期にMTGを繰り返して、目線合わせをする
肉声で熱意を聞くという体験を共有することで、メンバーのモチベーションを上げる
週次のショートミーティングで毎回Next Actionを決めて、作業のペースづくりに使う
若手メンバーの教育のために、思考や作業のプロセスを追体験させる
緊急で対応が必要な作業を、複数人集まって高速に完了させる

結局「非同期ファースト」というのは、「同期と非同期の配分や使い分けを最適化しましょう」という話でしかありません。一方で、これまでの仕事の進め方は「同期ファースト」が普通でした。何も考えないと「とりあえず会議しましょう」となってしまい、同期的コミュニケーションに偏ってしまいます。そのバランスを取るために「非同期でできないか?」とまず考えてみる、という考え方が、「非同期ファースト」なのです。

非同期的に仕事を進めるためのコツとSaaS

最後に、僕が仕事の中で実践している内容について載せておきます。

非同期に仕事を進めるには、コツがいります。それを説明するためのキーワードは、次の3つです。

1. 透明性
2. フローとストック
3. timeout

これらを実現するために役立っているSaaSは、僕が仕事で使っているだけでも次の5つがあります。

Slack
GitHub
Dropbox Paper
esa
Miro

これらのコツやツールの使い分けについて、簡単に説明します。

前述のように、非同期の本質は「すぐに返答が来るという期待を捨てること」でした。ポジティブに言い換えれば、「勝手に進めてくれるという期待を持つこと」ともいえます。この「勝手に進めてくれる」という状態を維持する上で重要なのは、情報の「透明性」を高く保つことです。組織やチームに関する情報がオープンにされていると、各メンバーはそれを見て勝手に思考を進めることができます。人事に関するものなど一部の秘匿すべき情報以外は、デフォルトで公開する文化をつくることが重要です。具体的には、一部のメンバーとの連絡もSlackのpublicチャンネルでやる、MTGの様子は録画を残したり議事録を残したりする、などです。

一方で、こうした非同期の情報共有をすべてチャットツールでやろうとすると、情報がすぐに流れてしまってキャッチアップしにくくなるという問題もあります。そこで重要になるのが、「フローとストック」の使い分けです。後から検索で掘り起こしたくなるような情報は、すぐに流れてしまうチャットではなく、なるべくドキュメント管理ツールに残すべきです。

ちなみに、「フローとストック」の間にもグラデーションが存在し、それぞれ適したチャネルやツールが異なります。Slack上の会話も、口頭での立ち話よりはストック性が高いです。また、Dropbox PaperやGoogle Driveは書きかけのドキュメントにコメントをする用途に向いていますが、ある程度固まった内容は階層構造が作りやすく検索性の高いesaなどに移した方が良かったりします。

非同期的なコミュニケーションにも課題があります。その1つは、何かを依頼した場合に、依頼者側がその進捗を管理する必要があるということです。効率を上げるために非同期的な進め方を採用したのに、進捗管理のコストがそれを上回ってしまえば本末転倒です。これを解決するには、被依頼者と依頼者の双方で工夫が必要です。被依頼者は、オープンな場で進捗のログをこまめに公開するのがおすすめです。Slackやチケット管理ツール上に作業ログを残しておくと、依頼者が進捗を非同期的に確認することができるようになります。一方、依頼者は「timeout」を設定しておくことで、「依頼内容の進捗確認をする」というタスクをいったん忘れることができます。timeoutとは、情報技術の世界では「一定時間以内に処理が終わらない場合に処理を中止すること」といった意味で使われます。仕事上では、たとえば依頼と同時にSlackやGoogleカレンダーのリマインダを設定しておき、リマインダの期限が来たときに進捗が見えなかったら「終わりました?」と言う、みたいなことをよくします。

最後に、非同期的な仕事の進め方に役立つSaaSと使い方を紹介します。僕の好みで選んでいるので、似たような別のツールでも良いと思います。

# Slack(チャット)
- 非同期ファーストの最大の味方
- フローのやりとりは、基本的にSlackでやる
- 限界が来たら、MTGしたり別のツールにストックしたりする

# GitHub(チケット管理)
- 依頼事項をissueにまとめて投げる
- 作業毎に自分でissueを立てて自ら作業ログを残すこともある
- トピックに紐付けて残したいやりとりは、Slackではなくissue上のコメントでやる

# Dropbox Paper(ドキュメント共有)
- 考えたことを書いてコメントもらいたいときに使う
- 定例MTGの議事録でもよく使う

# esa(ドキュメント管理)
- 社内に年単位で残したいドキュメントを書く
- ただし、他人が書いたドキュメントを書き換えることには躊躇しない
- Dropbox Paperよりもストック寄り

# Miro(オンラインホワイトボード)
- ブレスト系の議論で、事前に付箋で案出ししてもらうときに使う
- 思考をテキストで表現できない場合にも、図で書いてコメントもらったりできる

以上です!最後まで読んでいただいてありがとうございました。

何か質問やコメントあれば、お気軽にくださいー。@jumpei_ikegami

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