スプラトゥーン3に学ぶUX改善
どうも、エンジニアのgamiです。
スプラトゥーン3、発売されましたね。そこから僕の生活は崩壊し、世界にインクを塗る作業に可処分時間の大半が当てられています。
それによりnoteの更新も滞っていたわけですが、ウデマエもいったんS帯まで上がったことなので、コントローラーを置いてキーボードを叩いています。
僕はスプラトゥーン2も累計320時間以上プレイしていました。前作とスプラトゥーン3を比較すると、プレイヤーの体験が大きく向上していると感じます。
今回はスプラトゥーンのUXがどう改善したかについて、プレイしていない人にもわかりやすく説明します。
なぜゲームから体験設計を学ぶべきか?
そもそも「スプラトゥーンから体験設計を学ぶ」と言っても、ゲームを全くしない人からすれば違和感があるかもしれません。ゲームは単なる娯楽であって、そこから何かを学べるようなものには見えない人もいるでしょう。
一方、ビジネスの文脈で「ゲーミフィケーション」という言葉が真面目に語られるように、ヒトの体験作りにおいてゲームほど先進的な分野は他にありません。なぜゲームはそれほど体験作りの参考にされるのでしょうか?
同じデジタルコンテンツでも、たとえばECサイトのユーザーには「モノを買う」という目的が、レシピアプリであれば、「料理を作る」という目的があります。それらの目的を達成できれば、体験が良いというのは二の次になります。一方で、ゲーム事業というのは娯楽を提供してお金をもらうビジネスです。ほとんどのプレイヤーにとって、ゲームをする目的は「楽しい体験を得ること」であり、体験自体が目的となっています。ゲームクリエイターとしては良い体験を作ることがビジネスの成功に直結するわけで、他業種と比べても良い体験作りに対する切実さが段違いです。
特にスプラトゥーンのようなビッグタイトルのゲームはプレイ人口も多く期待値も高いため、プレイヤー体験を少し良くするだけで大きなリターンがあります。その分、ゲーム開発の歴史の中で積み上げられてきた知恵が、これでもかと詰め込まれています。
さらにゲームは体験設計の自由度も高いです。たとえばスプラトゥーン3では3D CGで「バンカラ街」という架空の街がつくられ、プレイヤーはその中を自由に散歩することができます。
ゲームは静的なものではなく、プレイヤーとの細かな相互作用を前提とするコンテンツです。プレイヤーは操作性の高いコントローラーを持ち、プレイヤーとゲームソフトはインタラクティブにやりとりしながら一緒に体験を作っていきます。我々が目の前の事業を良くするためにゲームから学べることはたくさんあります。
待ち時間を「短い」と感じさせる工夫
スプラトゥーンの基本的な遊び方は、「オンラインでマッチングした8人が4対4に分かれてバトルをする」ということになります。マッチングは自動で行われ、両チームで強さやブキに大きく偏りが出ないようにいい感じにチームが組まれます。オンラインマッチに参加する人は、自ら待機ロビーに入ります。当然待機ロビーに入る時刻は人に依って異なるので、いい感じのマッチングが成立するまでは10〜60秒程度の待機時間があります。
スプラトゥーン2では、マッチング待機時間が地味にストレスになるという課題がありました。マッチング中は参加者の名前が表示されるのを眺めながらただ待つことしかできず、途中で抜けることもできません。
スプラトゥーン3ではこのストレスが大きく軽減されており、マッチング待機中もロビーを自由に歩き回ることができます。ロビーにはブキの試し打ちができる場所もあり、操作練習をしながら待てるわけです。
操作練習がノッているときには、あんなに長く感じた待機時間が「短い!もっと練習させてくれ!」と感じることもあります。ネガティブな体験をポジティブなものに反転させる、素晴らしい体験設計といえます。
ちなみにこうした待機画面設計は最近のゲームでは割と一般的で、たとえばスマブラの最新作でもオンライン対戦のマッチング待機中はCPUと対戦しながら操作練習ができます。
スプラトゥーン3では、他にも前作でストレスの原因になっていた様々な待ち時間を軽減する体験向上策が盛り込まれています。
スプラトゥーンでは2時間毎にオンライン対戦のゲームルールとステージがローテーションするようになっています。前作では、ゲーム起動時に現在のルールを紹介する「ハイカラニュース」というムービーを毎回見る必要がありました。このムービーがスキップできないことが、プレイヤーの小さなストレスの種になっていました。
今作でも同じ位置づけとして「バンカラジオ」というムービーが流れるのですが、その名の通りラジオでも聞くことができるようになりました。ラジオモードにすると、画面左上にテキストで内容を表示させつつゲームをすぐに始めることができます。
またスプラトゥーンのようなオンライン対戦ゲームにおいては、マッチングしたユーザーが「回線落ち」してしまうという問題が付きまといます。前作ではゲーム開始時に1人が回線落ちして3対4の不利なゲームになっても、ゲームをスキップすることができませんでした。基本的に3人チームでは勝ち目がないので、ただ勝負が決まっているゲームの終わりを待つしかできませんでした。今作では、ゲーム序盤に誰かが回線落ちすると自動で試合が終わるという親切設計になっています。
ゲームに限らず、ユーザーに「何もできない待機時間」を強いるのは体験を悪くします。たとえばWebサイトやアプリのローディング画面が長いときには、Tipsなどの読み物を表示するのが有効です。ディズニーランドでは待ち時間も内装を眺めたり隠れミッキーを探したりして楽しめるようになっています。
「負けたときのストレス」を乗り越えるための「褒め」
スプラトゥーンでは、オンライン対戦の戦績によって「ウデマエ」と呼ばれるプレイヤーランクが上がっていきます。多くのプレイヤーは、このウデマエを上げることを最初の目的にします。
一方で、スプラトゥーンは4対4のチーム戦であり、見ず知らずの味方と即席のチームを組んで戦うことになります。ときには味方のミスで負けが込んで自分のウデマエが下がることもあります。
もちろん楽しいゲームに適度なストレスは必要です。強い敵や困難な状況のストレスを乗り越えて得た勝利こそ、より大きな楽しさにつながります。しかし、自分がどんなに良いプレイをしていても味方のせいで負けたとなると、ときにはゲームをやめたくなるほどの強いストレスがかかってしまいます。
そこでスプラトゥーン3では、試合終了後の画面がとにかくポジティブになっています。前作では、とにかく「あなたのチームは負けたんですよ」ということを強調され悔しさが掻き立てられるリザルト画面になっていました。
今作では、たとえ負けた試合であってもまずは勝利チームの決めポーズが表示されます。自分のチームの負けを悲しむ前に、勝った相手チームに拍手を送ることを促されます。
また「自分は頑張ったが試合には負けた」というときには個人表彰を貰えるようになりました。
頑張ったことをシステムに評価してもらえるので、負けた悔しさをポジティブに乗り越えられるようになっています。ちなみに、個人表彰は自分のウデマエのポイントにもちゃんと反映されるようになっています。
このようにスプラトゥーン3では「褒めること」がユーザー体験の向上に上手く使われています。こちらもゲームに限らず応用できる体験作りの工夫と言えます。たとえばユーザーに多くの学習を強いるSaaSなどのサービスでは、ユーザーの努力を正しく認識して適切に褒めることで、ユーザーのモチベーションを上げることができます。たとえばSalesforceの学習プラットフォームであるTrailheadでは、コースの受講状況に応じてバッジを貰うことができます。まさにゲーム的な体験設計といえます。
ちなみに、ゲームの体験設計については『星のカービィ』や『スマブラ』の生みの親である桜井政博さんが最近始めたYouTubeチャンネルがとてもわかりやすいです。5分前後の短い動画で、面白いゲームを作るための体験設計の工夫などがわかりやすく解説されておりおすすめです。
ぜひみなさんも、スプラトゥーン3で上質なユーザー体験について学びましょう!僕のフレンドコードは SW-3981-0449-5596 です。
ほな カイサン!!!
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