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ロマネ・コンティを飲みたいな

来年(2025年)1月27日、僕は50歳の誕生日を迎えます。

昨年、応援している若者たちから48歳の誕生日を盛大に祝ってもらった時に「これ以上しあわせな誕生日パーティーなんて、もうない」と感じてしまったので、いつも誕生日のお祝いをいろいろ企画してくれる若者にも「もう盛大なパーティーとかはやらなくていいよ」と伝えています。

ただ、50歳という節目の誕生日を迎えるにあたって、ひとつだけやりたいことがあります。

それは「自分が応援している若い起業家たちからロマネ・コンティをご馳走になりたい」ということです。
その理由にはこんなエピソードがあります。

僕の会社が上場した2013年に、起業してから10年間ずっとサポートしてくれた「師匠」に何かお礼をしたくて「なにがいいですか?」と聞いたら「ロマネ・コンティを奢ってもらいたいねぇ」と即答されました。

当時、ワインの知識なんてまったくなかったんですが、ロマネ・コンティが高いワインだということは知っていましたし、イケイケだった某IT企業の経営者が六本木で何本も空けたとかいう噂も聞いていたので「そういうアブク銭で飲む酒なんだ」程度の認識でした。

実は僕の師匠はワイン通で、積極的に勉強会にも参加して、さまざまな高級ワインを毎日のように飲んでいるような人です。

その師匠が「ロマネ・コンティなら『バロンオークラ』で江川さんに開けてもらわないとね」というので、一緒にホテルオークラに行きました。

バロンオークラといえば、知る人ぞ知るワインダイニングの名店です。お店に着いて軽く食事をして、そろそろロマネ・コンティの登場かなと思ったら「じゃあ当日のワインを選びましょう」という話になって。

その時はじめて、今日はワインを選んで予約するための日なんだ!ということに気がついたんです。ロマネ・コンティって、ふらっと行って簡単に飲めるようなワインじゃないんですね。

そして、世界で一番多くロマネ・コンティを開栓したといわれている、ソムリエの江川和彦さんに連れられてワインセラーに入りました。

厳重に管理された奥の部屋には1万本以上のワインが並び、その中でも特別な場所に一本あたり数百万円のロマネ・コンティがずらっと並んでいます。

その中に珍しいマグナムボトルがあったので「これはもう予約済みですか?」と江川さんに聞くと「はい。これは、とある常連の方が、死ぬ直前の一本はこれにするということで、ずっと取り置きしてあるんです」。

ーーなんだか、自分なんかが飲んではいけないお酒のような気がしました。

実際に飲んだロマネ・コンティのボトル

せっかくなので、僕らの作った会社が創業した年=2002年のボトルを選んでもらって、飲む日を決定。あまり記憶にないですが、確か一本300万円くらいしたと思います。

ソムリエは、その日から毎日、横になっているワインをゆっくりと起き上がらせて、飲む日までオリがゆっくりと沈むようにするのも仕事なんだそうです。

本当の高級ワインというのは、こうやって大切に飲むものなんですね……。
こうして、忘れもしない2013年9月13日、生まれてはじめてロマネ・コンティを飲む日がやってきました。師匠と奥様、3人の創業メンバーとともに再びバロンオークラへ。江川さんが「お待ちしておりました」と特別な部屋に通されます。

そこには江川さんが撮影したロマネ・コンティの葡萄畑の大きな写真が飾られていて、テーブルがひとつだけ。ロマネ・コンティを飲む人だけが入れる部屋だそうです。

そこから2時間半かけて、一本のワインをパン2切れだけと合わせて、ゆっくり、ゆっくりと飲んで行きました。

江川さんは24時間かけてロマネの味の変化を観察したことがあるそうです

時間と共に変化する味を一口ずつ味わい、その合間に江川さんの素敵なエピソードをたくさん聞かせてもらいました。

もちろん僕は味の良し悪しなんてわかるはずもなく、ただ魔法のように味が変化するワインに驚いていました。

ワインを最後まで飲み切って、師匠と奥様がとても喜んでいる姿を見て、僕たちはなんだかとてもいいことをした気分になりました。

バロンオークラ「ロマネの部屋」にて

僕はその日以降、ロマネ・コンティはもちろん高級ワインといわれるものを一度も飲んでいません。たとえば経営者が集まる会食なんかで、寿司屋なのに「高いワインを開けましょう!」という話になったりするんですけど、なんだか経営者同士のマウンティング合戦みたいだし、そんな無駄なお金を使いたくないと思って遠慮してしまうのです。

だって僕はもう最高のロマネ・コンティを最高のシチュエーションで飲んだのだから、そんなワインに失礼な飲み方をする必要がないんです。

あ、師匠が僕に教えたかったのはこういうことなのかと。自分のお金で買ったからこそワインを真剣に味わおうと思ったし、最高の体験をしてしまえばそれ以降邪念に囚われることはないんだと。

もしあのロマネ・コンティの部屋での経験がなかったら、いろいろな誘惑に負けて、見栄を張りたいためだけに、無駄なお金を無駄にワインに注ぎ込んでいたかもしれません。

だから、いま僕が応援している経営者のタマゴたちにも同じことを伝えたい。そのひとつのきっかけとして、僕の50歳の誕生日を口実に、ロマネ・コンティを一緒に飲みたいなと思っているのです。

残念ながら、江川さんはホテルオークラを退職されてしまったようです。まったく同じ経験はできないかもしれませんが、いろいろと探してみたいと思います。

これは空けたあとのボトルで悪ふざけしたときの一枚です。まだまだ修業が足りない時代の僕がやったことなので許してください。

それでは今日も素敵な1日を。ジャンプ🚀!!!

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