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『NARUTO-ナルト- 烈伝』シリーズのカバーデザインについて聞いてみました。
どうも、お疲れさまです。WEB担当のソラです。
WEB担当・ソラ
今回は、大好評を博した『カカシ烈伝』『サスケ烈伝』に続く第3弾『ナルト烈伝』の発売にあたり、『NARUTO ーナルトー烈伝』シリーズの装丁について、担当されたデザイン会社テラエンジンの、高橋健二さんにお話を伺いました。
10月4日発売の『ナルト烈伝』表紙
そもそもデザインの作業はどうやって始まるのか
―カバーデザイン、そもそもどのようにして製作が始まるんですか?
高橋:まず編集者さんとの初回の打ち合わせで、どのような売り方をするかをリサーチしながらイラストの方向性を考えます。
―小説の内容は共有されるんでしょうか?
高橋:はい、打ち合わせのときに編集者さんがプロットや企画書を用意してくれているので、それらを見ながら内容を共有していきます。
―なるほど。打ち合わせの結果、今回の「烈伝シリーズ」の方向性は、どういったテーマになったのでしょうか。
高橋:「新伝シリーズ」と「烈伝シリーズ」は、各3冊をひとつのグループとしつつも、独立したストーリーとして読めるので、ナンバリングもしませんでした。
そこで、1冊でも完結するような絵柄にしつつ、それでもやっぱり3冊買って欲しいので、揃えたときのおまけとして絵が繋がるような仕掛けを考えました。
個人的な思い出ですが、ジャンプコミックスの『ドラゴンボール』の背表紙の絵柄が繋がる仕掛けは秀逸で、本棚に並べて絵が繋がっていく感じがいいんです。ドラゴンが繋がった後、どんな展開になるのか??楽しみで想像しながら、わくわくして揃えてました。
(二人目のヤジロベーが出てきたときは仲間内でざわつきましたが)
あのときの感覚を思い出しながら、今回のデザインを考えていきました。
「烈伝シリーズ」を並べたところ。かっこいい!
―ドラゴンボール!コミックスの背表紙覚えています!そこから着想を得ていたとは!
高橋:『NARUTO』の小説シリーズでいうと、次の新刊のタイトルを予告するので、イラストがどんな風に繋がっていくかなど、想像して楽しんでくれたらいいな、という感じでラフを設計して岸本先生にイラストを発注します。
―ラフというのはそういうことだったんですね!『NARUTO』の小説はデザイナーから先生にイラストを発注すると。先生が描いた絵をもとにデザインするものだと思いこんでいました!
3冊とも統一感のあるイラストがあがってきたかと思うのですが、描き下ろしイラストを初めて見たときの感想を聞きたいです。
高橋:完結している作品なので、岸本先生の新しいイラストが見れるのはやっぱり嬉しいです。
その中でも『サスケ烈伝』は良い意味で期待を裏切れそうだと思いましたね。サクラの顔が目に飛びこんでくるイラストですからね。
サクラを入れることは打ち合わせで決めていましたが、サスケよりも大きく配置することはチャレンジでした。ちょっと心配でしたが、実際に公開されたあとの反応を見ると、うまくファンに響いてくれたみたいで安心しました、というよりヨシッ!って感じです。
公開当初から、日本はだけではなく海外のファンからも大きな反響があった『サスケ烈伝』の表紙
裏表紙まで描かれたイラスト
―『サスケ烈伝』の表紙が公開されたときの反響はものすごかったです!
また今回は表紙から裏表紙までまたがってイラストが使用されていますが、Jブックスの装丁ではこうしたものは珍しい印象です。
高橋:まず最初に「烈伝シリーズ」を設計する際に『サスケ烈伝』から組み立てました。
サクラの顔を大きく配置したかったのですが、表紙だけだと顔しか描いてもらえず、勿体ないなと。そこで裏表紙まで伸ばす横長の絵を先生に描いていただきました。『NARUTO』小説シリーズはピンナップが毎回入るのでそこで全景が見られるようにしました。
買った人した全景が見られません。これもおまけです。
―全景は実際に手にとった読者が見れるように、隅々まで考えられているのですね…!上がってきたイラストを、どのようにデザインに落とし込んでいくのでしょうか?
高橋:イラストをデザインに落とし込む作業は、発注時にほぼ設計ができあがっているので、ストンとハマります。先生がなんと、ラフ通りに描いてくれるのです。
初めて発注して仕上がってきたときはビビりました。
岸本先生はデザイナーに対しても敬意を持って仕事をされる方なんだと思います。ありがたいです。
―イラストを発注する際に、「サクラを大きく配置したい」と考えてラフを作ったとのことですが、サクラが額当てをしている、という部分も高橋さんのラフ通りだったのでしょうか?あれにはびっくりしました。
高橋:いえ、顔の表情などは編集者さんがリクエストされていたようなのですが、発注したラフでは額当ては描いていませんでした。
サクラの額当てには自分もびっくりしました。きちんと巻くときは女の忍として負けられないとき…たぶん、子供時代に一度巻いたっきりですよね。この作品に対する岸本先生の想いも感じられました。
―なるほど、素敵なお話ですね!それでは実際に、ラフを作って、岸本先生に発注をするまでの作業は、どの程度時間がかかるものなのでしょうか。
高橋:打ち合わせをしてからふわーっと考え続けていたりしますが、催促のメールが届いてから(汗)だいたい1日使って考えていますね。
―たった1日!?
高橋:あまり長い時間をかけずに、その分集中してラフを切ります。『NARUTO』の小説シリーズは大体そうやってきていますね。
―す、すごい!プロの仕事だ…!今回のシリーズで、特に反響が大きかった『サスケ烈伝』ですが、装丁のトーンが紫になっていることで一部のファンから「サスケとサクラ、それぞれのイメージカラーとなっているブルーとピンクを掛け合わせてこの色になったのではないか」という指摘がありました。
高橋:デザインの構図はあらかじめ想定するのですが、カラーリングはイラストを見て決めています。サスケとサクラのイラストの仕上がりを見て、このイラストが一番活きるカラーは何かな、と考えて紫としました。
この二人にピッタリのイメージカラーになりましたね。
他にもプランは用意してあった
―今回「烈伝シリーズ」の装丁で、ボツ案や修正などはあったのでしょうか。
高橋:新規タイトルや文芸作品はいっぱい提案していっぱいボツになるのですが、『NARUTO』小説シリーズに限っては提案するときにとっちらからないようにデザインを絞って提案してます。世界観がしっかりできている作品なので。今回はこういうコンセプトですと伝えて、間違ってないか確認をしてもらってる感じです。提案前のサムネイルはたくさん考えてあるので、別のプランはすぐ用意できるようにはしています。
実際のカバーの基となるラフ以外にも別のプランが!
これを見ると額当ては岸本先生のアイデアだったことがよくわかる。
高橋:提案時は編集の添田さんがものすごく褒めてくれるので、モチベーションがグングン上がって、良い気分でデザインできます。
修正もほとんどありません。めっちゃ褒め上手です。いつもありがとうございます。
モチベーションを上げまくる編集者・添田
細かいところまで、妥協なくデザインしていく
―特にデザインで時間のかかったところはありましたか?
高橋:実はサブタイトルの「◯◯と◯◯」の部分のデザインに時間がかかっています。カカシ、サスケ、ナルトと全て違うデザインになっています。
例えば最新作『ナルト烈伝』ではうずになっています。この部分のデザインを踏襲して、本編の各章のトビラもうずになりました。
実際の作業画面。
サブタイトルなどシリーズを並べながら作業していることが伺えます。
作業を経て、『ナルト烈伝』はうずのデザインになった。
木ノ葉のマークにも見える!
―「秘伝シリーズ」から今回の「烈伝シリーズ」まで、全てシリーズで題字のテイストが違います。題字のデザインはどうやって決まるのですか?
高橋:題字は基本的には僕の方から提案しています。エンタメ感の強いものは太くゴツッとさせたり、シリアスなものは細めでシュっとさせるとか、作品のイメージを形にしてます。忍者らしさでいうと、白土三平先生の忍者漫画のデザインが好きで、ちょっと意識してるかもです。
沢山のシリーズを担当している高橋さん。題字にもこだわりが!
―『NARUTO』や『BORUTO』のノベライズの装丁を多く手がけられていますが、中でも思入れのある作品はありますか。
高橋:最初にご依頼をいただいた『ド根性忍伝』です。お話をいただいたときはメチャくちゃ嬉しかったです。大好きな作品でもあったので。あと、自由に製作させてくれたんですよね。スリーブケースや箔押し、カバー裏にマンガを刷ったり…
高橋さんが初めて手掛けた『ド根性忍伝』。箔押ししたり…
カバー裏にマンガを刷ったり…
帯のミナトのコメントまで、作り込まれています。
ー最後に、『NARUTO』のキャラクターの中で、好きなキャラがいましたらお聞かせください。
高橋:伝説の三忍です。『NARUTO』の世界観のベースになるキャラと関係性が現れている感じがするし、忍者としての魅力が詰まってますよね。
テラエンジン高橋健二さん、沢山のお話ありがとうございました!
先生への発注や、文芸作品とマンガノベライズの違いなど、全く知らないお話をたくさん聞かせていただきました…!
高橋さんがカバーデザインをされた『NARUTO烈伝』シリーズ、ぜひご覧ください!
シリーズ立ち上げ時の編集、添田の記事はこちら