マクロレンズの世界 vol.1 細部
マクロ撮影入門
1)寄れるレンズ
マクロレンズは、[接写]+[拡大]を特徴とするレンズです。
「接写レンズ」と呼ばれることもあります。
注: 遠方の被写体を拡大するレンズは「望遠レンズ」といいます。
お店でマクロレンズを購入するときは、
「花粉を撮れるレンズください!」
と指定するとよいでしょう。
寄れる距離は製品によって異なります。
スペック欄で10cm~20cmまで寄れる製品であることを確認します。
上手に撮れれば、すばらしい造型の世界が広がります。
2)被写界深度の感覚を手に入れる
レンズを入手したら試験撮影を開始します。
どこまでピントが合って、どこからボケるのか。
距離や絞りを変えてたくさん撮り、被写界深度の感覚を掴みます。
寄れば寄るほど、ピントが合う範囲は狭くなります。
撮りたいものに合わせて、適宜、絞りを調節します。
一般に、科学系の写真では、ボケは少ないほどよいです。
構造や質感を明瞭に示すことが求められます。
アート系の写真では、積極的にボケを活用します。
魅せたいもの以外をボカして、視線を焦点に誘導します。
3)複数枚、撮る
手持ちしたカメラは微妙に揺れます。
息をとめても完全にはとまりません。
雌しべの先端にピントを合わせたいとき、1mmの揺らぎは致命的です。
対策は「数打ちゃ当たる」です。
僕は20~30枚撮ることもありますが、そこまでする必要はありません。
狙い通りに撮るつもりで3回シャッターを押せば、
そのうちのどれかは、たぶんピントが合っています。
注: 株全体を撮るときは神経質にならなくて大丈夫です。
写真解説
① ビヨウヤナギ(オトギリソウ科)
ヒペリカム属の中で、最も優美な雄しべを持ちます。
公園の植栽は、園芸種ヒドコートへの置換が進んでいるので、
現在では、本種を見つけること自体、難しいかもしれません。
② ムラサキツユクサ(ツユクサ科)
ムラサキツユクサの雄しべの細毛は、細胞一つ一つでできています。
昔は光学顕微鏡で観察するものでしたが、今はデジカメで写せます。
③ トキワツユクサ(ツユクサ科)
上記より細かいです。
高画質で撮っておき、画像アプリで拡大して楽しみます。
ニシキアナゴを思い出す形状です。
④ ヒナゲシ(ケシ科)
雌しべの先端にある稜を数えてみました。
現地で数えるのは大変なので、どんどん撮って、あとで数えます。
ううむ、分解したい。子房の断面の情報が欲しい。
カメラは万能観察機ではないです。
⑤ オフリス ボンビリフローラ(ラン科)
メスのマルハナバチに擬態していると言われています。
真実かどうかわかりませんが、そうなんだ?と納得してしまう形状です。
⑥ サルビア プラテンシス(シソ科)
国立近代美術館は、瑛九の《れいめい》を所蔵しています。
青を基調とした水玉模様で、ポップでかわいらしい抽象画です。
デザイナーは、遊びでマクロ撮影を嗜むのもよいかもしれません。
⑦ クジャクサボテン園芸種(サボテン科)
noteに「イカちゃんくまちゃん」という漫画作品が掲載されています。
https://note.com/ikachan/
その中に出てくる「イカちゃん」というキャラがいいんですよ。
⑧ オドリコソウ(シソ科)
どれだけ熱心に細部を撮っても、受賞で報われることはありません。
マクロ撮影は、あくまでもセンス・オブ・ワンダーの世界に留まります。
⑨ ノイバラ(バラ科)
定型撮影では、光を受けてこぼれんばかりの花房を撮るのでしょう。
型が決まっている絵は、機材勝負や天候勝負になって大変そうです。
⑩ カタクリ(ユリ科)
カタクリの雌しべの先はユリみたいな棍棒状?
いやあ、違いますね。3数性なのは確かです。
⑪ レンゲ(マメ科)
なめらかな花びらは細胞の並びを推測しにくい。
色素があると、走行を知る助けになります。