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自動車事故、意識障害、そしてその家族

私の家族は自動車事故に遭い、遷延性意識障害になりました。
受傷してから、もう数年が経ちます。
いまも意識障害のままです。
このnoteを書こうと思ったのは、私の経験が誰かの役に立てたらと思ったからです。
一番辛いのは当事者です。自分の意思で、自分の身体を動かせない。
本当に辛いと思います。力になれなくてごめん、といつも思っているよ。
その次に辛いのは、「その家族」ではないでしょうか。
障害、金銭問題などいろんなことに向き合う必要があります。
そんな立場の方の力になれれば幸いです。

遷延性意識障害とは

分かりやすく言いますと、植物状態です。
私はこの言葉を使うのには抵抗がありますが、端的に伝えたいときは
そう伝えます。

  1. 自力移動不能

  2. 自力摂食不能

  3. 糞便失禁状態

  4. 意味のある発語不能

  5. 簡単な従命以上の意思疎通不能

  6. 追視あるいは認識不能

これら6項目を満たす状態のことです。全介護状態です。
私の家族は、目は開いて追視は出来るけれど、認識が出来ているかは
定かではありません。意思表示もできません。
6年間この状態です。

NASVA(自動車事故対策機構)の存在

私が一番に伝えたいのは、NASVA(ナスバ)の存在です。
もし、被害者が自動車事故による意識障害であれば、
ここへの入院/転院のご検討をおすすめしたいです。
脳損傷による後遺障害が残る方で「入院の要件」に
該当する方は入院ができます。
入院後、徹底的に検査をしてくださり現状を詳しく把握できます。
私の家族の場合は完全失語と、聴力が失われていることが判明しました。
本人が意思を表すことが出来ないので、
失語と聴力がないことが今まで分かりませんでした。
初めてそれを知った時、泣きました。
もう声を聴けないのか~、って思いました。

リハビリ

NASVAでは、土日祝を除いて毎日リハビリが行われます。
五感を刺激して、意識状態の改善を目指します。
経鼻経管を止めて胃ろうにし、嚥下機能をみながら
味覚の点からもアプローチしていく予定です。
リハビリを始めてから上肢下肢ともに可動域が拡大傾向です。
嬉しかったことは、「歯磨き」の時は食いしばり、開口が難しかったが、
歯磨きのイラストプレートを見せると、
口を開けてくれることがあると聞いたこと。
水を入れたスプーンを口に近づけると、
口を開けてくれることがあったと聞いたこと。
私はリハビリに参加出来ないけれど、
看護師さんがいろんなことを教えてくれます。
本当に小さなことでも、「できること」が増えると私は嬉しい。
本人はどう思っているのかな。

月に一度の面会

私を救ってくれているのは、病院のスタンス、雰囲気だと思います。
重い障害が残っているけれど、
病院の方々が前向きであること。笑顔であること。
そういう専門の病院だから当たり前だといわれるかもしれませんが、
私にとっては決して当たり前ではありません。
寝たきりで何も意思表示ができない家族を見ていると、
どうしても鬱屈になってしまうときがあります。
看護師さんたちがたとえ仕事だったとしても、
前向きに接してくださるだけで
心が支えられることは間違いなくあります。
そして、光が差し込む温かい明るいにぎやかな病室。
そこで家族が過ごしていると思うだけで、
さみしくないかなと思えます。
以前の病院の、暗い病室で一人ぽつんと寝る家族に
バイバイを言って帰るのが本当に辛かったのです。
今は、明るい気持ちで面会できます。
帰り道も前向きな気持ちで居られることが増えました。
今の私にできることは、笑顔で面会すること。
たとえ聞こえていなくても、たくさん話しかけること。
手を握ること。

さいごに

私は、家族に対して行動に移せたことは多くはないです。
NASVAの存在を知ったのも事故からかなり年月が経過してからでした。
情報を集めるのが下手で、そんな過去の自分に悔いが残ります。
けれど、今はそれを悔やむのではなく、これからできることを探すこと。
周りの方々に支えてもらいながら、踏ん張りながら、
時には立ち止まりながら進みます。
この経験、文章が誰かの役に立てれば嬉しいです。

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