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第二十一話 ダンスアイドル活動の記録


 Cha cha Girlsの二人はCDを制作してもらった芸能事務所から仕事をいただき、北海道の各地の夏祭りやイベントに呼んでもらった。北海道は遠く初山別まで泊りがけで出かけた。
私はこれまでの人生の縁を頼りに、知人の社交ダンススタジオのパーティで「社交ダンスアイドル」のお披露目をさせて頂いたり、保険の営業時代から訪問していたイベント会社から声をかけてもらい、お祭りやパーティに出演させていただいた。公共のスペースなどでイベントを企画しているご家族にも声をかけて頂き大変お世話になった。

また、作詞作曲しライブ活動をしていた職場の知人から、ススキノの有名なライブハウスを紹介してもらい、その知人と一緒にライブをさせてもらったのは、Cha cha Girlsのライブ活動の第一歩になったと感じ、未来が明るく思えた。

私は常にアンテナを張って、活動場所を探していた。
二人が住む区内の町内会の夏祭りのステージに参加させて頂くことはこちらからお願いしたし、北広島の三井アウトレットパークのステージでパフォーマンスができる企画に応募して交渉し、クリスマスのライブをしたのは2018年12月のことだった。

祭りやパーティは、既に人が集まっているところでCha cha Girlsを見てもらうのだが、Cha cha Girlsを目当てに見に来る人は、まだまだ皆無に近い。
SNSで告知し、現地ではチラシを配り、宣伝も営業も当たり前のことで、恥ずかしくもなんともなかった。だが、若い二人には、苦労をして一つ一つ地道に積み上げていく概念がなかったのだと思う。今、この時が楽しいことが重要で、楽しいかつまらないかが基準なのだ。

サッポロファクトリーのウィークリーイベントのステージの企画で担当者から声をかけて頂いたのも嬉しい出来事だった。2019年3月と7月、2回出演させていただいた。アイドルを追っかけしている男性の何人かは足を運んでくれたし、いっぱしに握手会やサイン会をしてCDを販売した。
アイドル活動をYouTubeで紹介している愛好者の方々も本格的な動画撮影をしてくれたから、今でもでYouTubeで見ることができる。

SNSでつとに繋がっていた方から、公共の路線バスをもっと利用しようという北海道の企画で2019年5月「バスタビ北海道」出演のお話をいただいた。NHKの朝の連続ドラマ「なつぞら」の舞台、十勝地方をCha cha Girlsの二人が、美味しいものを食べながら見どころを巡る一泊二日の路線バスの旅がYouTubeに公開されたのは有難いことだった。こちらも、現在「北海道バス協会」と「北海道ファンマガジン」のサイトにてYouTubeでみることができる。

「いいべさ北海道」というYouTube番組やコミュニティFMのラジオにも出演させてもらった。
二人は二人で、自分たちが出演したいライブの企画を見つけてきては参加していた。TIkTokには特に力をいれていたようだ。演劇的な要素があるからか、自分たちのアイデアで投稿するのが楽しかったのだろう。

二人は同じ中学校に通い演劇をやっていたが、中学生の時からT先生のダンススタジオに通うようになった。多分T先生は指導料なんかもらっていないだろう。
高校は別で学校も育った家の環境が違うから、それが個性で面白いとも思ったけれども。一人は2017年から短大生になり、デビューの出だしからイベントの出演に穴を明けることも多く、一人だけがステージに立って健気に歌って踊る場面もあった。なかなか思うとおりには活動ができなかった。

その子が高校卒業と同時にアイドル活動に専念していたから最初の3ヵ月は10万円ずつお給料もどき活動費を支払えたが、それも尽きてできなくなった。

T先生は二人の両親にどのような説明をしてアイドル活動をさせていたのか。私は活動資金の全額を負担していたから、個人事業主としての企画事務所の代表となっていた。Tは社交ダンス業界で目立ってはいけない事情があるのか、名前を公表したがらなかった。しかし、実質的にはTが代表で、二人のダンス指導や面倒を見ていたからCha cha Girlsの二人はT先生を信頼し絶対と信じていたようだ。

私は絵のデッサン会を開いたときにはこの子にモデルをお願いして、わずかながらモデル代を支払ったり、SHOW ROOMでライバーをして自分たちのファンを作り収入を得ることを提案したが全然乗り気ではなく、数回で終わってしまった。
私がああしろこうしろということに、だんだんに嫌気がさしてきたのだろう。

失敗は数えきれない。クラウドファンディングもした。手法がまずくて集まらなかった。テレビに出演されていたある社長の「社交ダンス」の一言の発言から、手紙を書いて東京にある本社にアポを取り企画書をもって伺ったが、準備不足でまったくお話にならない結末となった。

デビューしたてということで、芸能事務所からの出演料はほとんどなく、二人に支払うお小遣いさえなかった。地方のお祭りに参加するのにかかる交通費、宿泊費で相殺された。
Tと私の事務所に収入はなかった。不動産ローンで得た金額もすぐに底をついた。生活費さえ事欠き、メルカリで売れるものを売っても、またもやカードローンや生命保険の契約者貸し付けを利用せざるを得なくなった。借金だけが膨らんでいった。

T先生はT先生なりにアイドルのために営業活動をしていたのかもしれないが、彼自身の家庭の生活の維持もあるから収入がなければ、皆共倒れだ。
二人のカバー曲のダンス指導やケア、フォローの時間がとれないくらい、生活費を稼ぐことに必死だったと思われる。

Cha cha Girlsの二人とTと私と同じ場所で会うことはなかった。
まったくコミュニケーションがとれなかった。

社交ダンスの教室で「アイドル」がダンスを教えることで収入を得る方法をデビュー前から考えていたようだが、集まる生徒はごくごく少数だった。知名度もないし、経験豊かな年配の社交ダンス愛好者がアイドルに社交ダンスを教えてもらうなんて考えも及ばないのだろう。
女性は若手のダンサーに対して対抗意識や嫉妬心があるようで、協力を得ることが出来なかった。

T先生は、権威づけのためにも正式な社交ダンスの教師資格を取ることを促した。二人は懸命に勉強し社交ダンスの教師資格を取得したのは2019年のことだ。
資格取得のためにT先生が無償の指導をしていたと思われる。私たちにはアイドルに対して報酬を支払う余裕がなかった。

社交ダンス教師資格を取ったからといって、教えて欲しいと生徒がやってくるわけではない。すべてはこちらから、集客する必要がある。それには時間がかかり、継続する強い意思が必要だ。

また、Tは二人を社交ダンスの大会に出場させることを決めた。
二人が一番やりたかったのは社交ダンスだろう。
大会で良い成績をおさめれば箔が付くが、長い道のりのスタートであった。
社交ダンスは女子と女子、男子と男子でもペアとして踊ることはできるが、そもそも男女二人のコミュニケーションのダンスなので、T先生は二人にそれぞれ男性のパートナーを見つけてきて、大会に参加させた。









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