クールビューティーな先輩
職場にクールビューティーな先輩がいる。同僚の女性陣もキレイと言っているので僕の贔屓目ではないと思う。その先輩は群れて行動しない孤高の人。お高く止まっているのではなく集団で行動した場合、どう会話すればいいか分からないらしい。実際、残業とかで2人きりになった途端にしゃべるし笑顔も見せるので、いつものクールさを感じさせない。
飲みに行くのも例えば4人以上だと誰かと誰かが話し始めた場合、その会話に入っていくのか会話に参加していない人と話した方がいいのか悩むので飲みに行くなら3人まで。が、先輩のルール。3人なら会話は3人で話す内容に自然となるからだそうだ。実際、先輩と飲みに行ったときは、もう1人の先輩との3人だったし仕事中と違い、すごい気さくに話してくれた。
先輩は先輩なりに気を使ってくれているようで残業で上司と先輩と僕との3人になったときに話しかけてきた内容は、
『ユリアンさん、お昼に食堂で他の部署の人たちと同じテーブルだったんですけど、ユリアンさんのこと、仕事できるしカッコいいって、言ってましたよ。私はそうかな?って、思うんですけど人気ありますよ』
褒める過程で看過できない一言をさらっと入れてくる。上げて落とす。という言葉があるが先輩は上げたとこでクリティカルヒットを入れてきた挙句、その言葉が毒のように尾を引きステータス異常を発生させるので最終的にこちらのHPが0になる。しかもそれを悪気なく言っている。その時は、
『あの、私が口を挟むことじゃないけど結構、刺さること言ってるよ』
僕を不憫に思った上司の言葉に先輩は自分が何を言ったのか気付き、
『違う!×3そうじゃなくて…モテてますよ。って、言いたかっただけで…』
先輩はそう弁解したが“私はそうかな?”という先輩自身の感想には触れなかったので“カッコいい”と“仕事ができる”のどっちなんだろう。と、モヤモヤが消えなかった。他にも昼食を終え、先輩とエレベーターを待っていると他部署の人が、
『前から思ってたんですけど、お二人とも背が高いしお似合いですよね』
と、声をかけてきた。僕が178cm、先輩が165cmくらいだったと思う。声をかけてきた人は150cmちょっと。その人から見るとそう思えるんだろう。先輩は、
『ない!×∞』
そこまで全力で否定しなくても良いのでは…?そう思わされるほど先輩は食い気味に早口で否定し、僕は恋してないのに疑似失恋を体験させられ、まあまあ仲良いと思ってたけど嫌われてるのかな?と疑心暗鬼に陥った。でも、それが先輩という人なので怒る気になれない。普段は誰の追随も許さない仕事の鬼だが、時おり想像できないことをしてくるのが先輩の魅力の一つ。
あるとき、給湯室に入ると先輩が先にいたので声をかけようとしたら、ドリップコーヒーを淹れながら、
『熱いか?熱いか?助けは来ないぞ』
先輩はドリップコーヒーの中の先輩にしか見えない何かを追い詰めながらコーヒーを淹れていた。その前はスターウォーズのダースベイダーの登場シーンの音楽を口ずさみながらコーヒーを淹れていた。そのどちらも気付かれないようにその場を後にした。今、思うと何で助ける側じゃないんだろうと思うが、それが先輩なりのストレス発散法なんだと思う。
先輩は時々、回復不可能なダメージを与えてくる。先輩なりに気を使ってくれた結果、そうなることが多いが先輩は計算で動いたりせず裏表のない自分に正直な人。僕は先輩を“人”として好きだ。
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