4STEP(数研出版)をおすすめしない理由

4STEP(数研出版)は学校でよく配布される教材のひとつであり、定期テスト前や本格的な問題集を始める前に・・・と、使っている生徒も多いであろう。しかし、普通の生徒が独学で使う問題集としては、4STEPはおすすめに値しないと私は考えている。その理由を詳しく説明していこう。

「数学の基礎」とは何か?

よく「数学は基礎が大切だ」などと言われるが、そもそも数学の基礎とは何だろうか?言葉の定義が曖昧であれば、議論も始められない。

ここでは「受験数学の基礎」が身に付いていることを、以下の2つが身に付いていることであると定義する。

①重要事項のインプット
②重要手法の習得

ひとつひとつ説明していこう。「①重要事項のインプット」とは、数学用語・記号の定義、公式・定理など(証明も含む)を理解・暗記していることである。もちろん、高校範囲を大きく逸脱しないと証明できない公式・定理などは、結論を知っているだけで十分といえる。

入試問題で点数を取ることを考えると、重要事項を”知っているだけ”では得点につながるとは限らない。そこで大事になるのが「②重要手法の習得」である。インプットした重要事項を実際の問題にどのように適用するかが大事であり、定型問題(パターン問題)とその解法、計算テクニックも重要手法のひとつとして、私は位置付けている。

大切なことは、重要事項のインプットは、繰り返すことで理解が深まり、記憶にも定着しやすいということである。また、別の単元を学習した後で以前学習した単元を見返すと新しい発見があることもよくある。

重要手法の習得に関しても、いつでもどこでもどんな場面でも”息を吸うような感覚で”使えるくらいまで反復練習し、マスターしておかなければいけない。難関大の入試問題を解く際には、もっと脳のメモリを別のところに使わなければいけないからである。

バスケットボールに例えてみよう。ドリブルがままならないような選手が、チームの戦術を考えている余裕などないだろう。難関大の入試問題のような問題に立ち向かうとき、アプローチの仕方や方針の選択に頭を使うべきであり、計算や定型問題(パターン問題)の解法に手間取っている暇などないのである。

4STEP(数研出版)レビュー

4STEPを効果的に使うとすれば、「重要手法の習得」を目的とし、同じような問題を何度も解くことで、手法を定着させるための問題集として使うのが良いだろうか。というのも、付属の解答に書かれている解説では、模範解答が羅列されているだけで、それを見て”重要事項をインプットできていない初学者”が学習のポイントとなる部分を見極められるとは到底思えない。

①重要事項のインプット
②重要手法の習得

先程、上記を「受験数学の基礎」として挙げたが、この①②は決して、別々にやらなければいけないものでもない。重要事項をインプットしたら、その重要事項に関連する手法を習得するために、問題に取り組むのが自然で効率的な学習法と考えられる。

つまり、初学者が4STEPを使って勉強するとすれば、横について重要事項を説明してくれる講師でもいない限り、ただ模範解答を頭に叩き込むだけの苦痛な問題集になってしまう可能性が高い。

以上より、特に数学が苦手な人で、「基礎から始めようかな~」なんて思っている人は、4STEPはまず最初にやるべき参考書ではない。

そういう人が最初にやるべき参考書は、もっと重要事項についての詳しい解説が載っている、かつ挫折しないように無理のないステップで重要事項と問題配列が工夫されている参考書である。たとえば、以下のような参考書だろうか。

このあたりの参考書で、どれが一番良いかというのは別に考える必要はない。書店に行って眺めてみて、「これなら読み進めれそうだ」と思うものにしたら良い。なぜなら、どうせ上記のような本で学んだことを軸に受験数学を進めることはないからである。軸にするべき重要事項は、もっと実践的なことが書かれている参考書である。(それについてはまた別の機会に書こう)

ちなみに、上記のような初学者向け参考書を終わらせたあとで、4STEPをやるのもやめたほうが良い。それなら、青チャートやFocusGoldなど、いわゆる網羅系参考書をやった方が解説も詳しく、問題もテーマごとに分けられていて学習しやすいだろう。(それらも手放しではおすすめできないが)

結局、どの場面でも独学者が4STEPを使って良いことはないというのが私の考えである。


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