【偏差値】偏差値の横比較2024〜日能研•サピックス・四谷大塚〜
中学受験の偏差値表を横並びで比較してみようという企画です。
受験校を考える際に偏差値表とにらめっこしながら考えることは多いと思いますが、塾から配られる偏差値表はその塾(正しくは模試)で判定したもので、実際模試ごとに偏差値は異なります。基本路線は塾の偏差値表を使うとは思いますが、本番入試は他塾(模試)受験生も含めた母集団での競争となるため、ある程度中学受験というものがわかってくると他塾の動向も気になってくると思います。
実際に比較表を見ていただければわかりますが、全体感としては同じような並びだったとしても、個別の学校を見ると、こんなに違うのかと驚くような違いがあったりします。
ここで意識すべきは、その学校の評価がどうのこうのとかではなく、その偏差値表を見ている人がどう捉えているのかという点です。自分の持ち偏差値から見て安全校として設定した学校が、実は他塾で換算したらチャレンジになり抑えどころではない、なんて冗談みたいなことが実際に起こり得るのが今の中学受験です。どういう層がどういう位置付けで受けにくる学校(入試回)なのかを意識して見ていただければと思います。
昨年(2023年)版の同じ記事には入試直前期まで多くのアクセスがあり、それなりに有効に使っていただけたかなと思い嬉しい限りです。2024年版も多くの方のサポートになればと思います。
【2024.5.2更新】四谷大塚の偏差値表が公開されたので速報版からの修正を反映しました。速報版から結構変わっているところがありやり切れないので、大きなところ以外修正点は特に明示しません。
比較方法
偏差値表をただ横に並べても、特にサピックス偏差値は数字が違いすぎてあまり有用なものにならないので、大体同じレベル帯の学校が横に並ぶように調整します。具体的には次の通りです。
日能研R4を基準として、
男子:四谷大塚は−1、SAPIXは−8
女子:四谷大塚は+1、SAPIXは−8
で偏差値を並べます。
もっと緻密に計算されているサイトもある中でベタな感じで恥ずかしい限りですが、わかりやすさを優先しているということでお許しください。サピックスの下位は若干開き過ぎている感がありますが、全体感としてそんなに違和感ないかなと思います。ちなみに日能研と四谷大塚偏差値はほぼ同じとして見られることが多いですが、四谷は男女でほぼ2程度の差がある(女子の方が2ポイント高い)ので、たまたまですが日能研偏差値をその間に入れるとちょうどしっくりくる感じになりました。
表の中で、他の2塾より2ポイント以上高いものは赤字、低いものは青字にしています。さらに塾同士で3ポイント以上の差があるものは留意すべきとして太字にしてコメントしていきます。
また、各偏差値表の有効性を考えるため、コメント内で塾別の合格実績棒グラフを追加しました。模試に対応する3塾(サピックス・日能研・四谷大塚)のデータを使用しています。(なお大手4塾のもうひとつ早稲田アカデミーについては四谷大塚の数字に含まれると考えています。話が逸れるのでここでは深入りしませんが、他塾からのNN受講者分を除くと、いい感じに四谷大塚に入っていると考えるのが妥当だと思っています)
塾別合格実績は全日程分・男女を足し合わせた数字なので日程別にはわからないし、早稲アカに限らず重複カウントは発生している可能性が高い(筑駒など、S・N・Yだけでも100%を超えているところがある)と思っているのでアテにはなりませんが、大まかな傾向を見るという意味で使いたいと思います。
偏差値の横比較 男子
まずは男子の2月1日と2日の午前入試を順に見ていきます。(昨年版と縦軸の並び順が違うのでご注意)
2月1日・男子
太字で示した(特に差が大きい)学校・入試回をピックアップしてコメントしてみます。(N:日能研、S:サピックス、Y:四谷大塚 として偏差値の高低を示します。サピックスの偏差値下位は差が大きいところが多いですが、サピックス合格者数も少なくあまりアテにならないと思うので、S偏差値44以下についてはNとYでも違いが出ているところのみをピックアップします)
開成・海城①【S>>N=Y】
開成はこの日程の最難関で、どの偏差値表でも抜けて高いです。その高偏差値でも2割が不合格になるということを意味してはいるので、まあ一筋縄ではいかない入試だとは言えるでしょう。もうひとつ言えるのは、2番手(麻布・渋渋①)との差が大きく空いているということで、2番手の偏差値より上の子たちの大半は開成を受けていることになるんだろうと推察することができます。(受験生がそこそこいて不合格者もいれば80%ラインは上がるはずなので)
海城①はSだけが高偏差値になっていて、その理由はハッキリとはわかりませんが、おそらくS偏差値で59〜57の学校は同列で比較され選択されているのだと思います。個人的には逆にNとYが低く、これは学校別コースの対応が弱い(早稲アカにはなく、日能研は対応レベルがひとつ低い)ことが要因かなと思っています。要は、早稲アカや日能研で偏差値65前後だと学校別コースのあるところを選ぶケースが多くなるだろうという見方です。と考えると、N・Y偏差値を見ている人はもう少し上だと思って戦略を練っていく方がいいと思います。
芝①・桐朋①・青学横浜(A)・開智日本橋①・等々力①・高輪(A)【S<<N=Y】
逆にSだけが低いのがこの4つです。ちなみに芝①は本郷①と比較するとわかりやすいです。塾別の合格実績を本郷と比べると芝の方が若干サピックスが少ないので、もしかするとその影響があるのかもしれません。
その他4校はNとYでも微妙に違いますが、それ以上にサピックスだけ2〜3ポイント低い感じです。
塾別合格実績を見ると、芝と本郷はサピックス合格者割合の高低が関係している気がしますが、全体的にそういう傾向が見て取れるわけでもないので何とも微妙なところです。ただやはり戦略を立てる際は気をつけたいです。サピックスで例えば中大横浜①→青学横浜(A)へ1ランク落としたつもりでも、合格者の多い日能研で見れば同偏差値なので難易度は下がっていないことになりそうです。
明大八王子(A1)・かえつ有明①【S<<N>Y】
Sが低いパターンの派生形1で、さらにNがYより2ポイント程度高いパターンです。
横並びで見たときに最大で明大八王子は6ポイント、かえつ有明は5ポイントの差があり、偏差値にするとN55対S41、N50対S37という感じで、数字だけを見たら2ランク〜3ランク違うようなイメージを持ちそうです。
ただ塾別合格実績では2校ともサピックス割合が低く四谷が高そうなので、Y偏差値を参考にすればいいのかなと思います。少なくともS偏差値だとちょっと危ないんじゃないかと感じます。
山手学院(A)・獨協①【S<<N<Y】
Sが低いパターンの派生形2で、NよりYが2ポイント高いパターンです。
こちらもSと他の2つではかなりの差が出ています。山手学院はサピックス合格者も少なくないのでそこそこ信頼してもいいのかもしれませんが、まあそれでも2校ともN偏差値を見ておくのが無難のような気がします。
世田谷学園①・日本学園①【S=N<<Y】
ここはYだけが高いところです。日本学園①は3ポイント程度ですが、世田谷学園①についてはサピックスで4、日能研で5ポイントの差があるのでかなり大きいです。
塾別合格実績で目立った特徴はないので要因はよくわかりません。ただ、サピックスの世田谷学園合格者は1日午後の算数入試が多いという可能性も考えられ、仮にそうだとすれば、この日程の偏差値はとりあえずYを見ておいた方が間違いはないかもしれません。日本学園は明大付属という点が強く意識されたときに大きく跳ね上がる可能性は抱えていると思うので、ちょっと高め警戒をしておいた方が無難だと思います。
2月2日・男子
聖光①・渋幕②・巣鴨②【S>>N<=Y】
この日程のトップ3校となる聖光①・渋幕②・渋渋②は、Nだと横並びですが、SとYだと聖光>渋幕>渋渋という序列が一応ついていそうです。まあ最上位の偏差値で、代わりがあるわけでもないんでそれ以上コメントすることも特にありませんけど。
巣鴨②はSが高く、Yとは3ポイント差が付いています。ここはサピックスの上位勢が受験していると捉えれば、N・Yはもう少し上として見ておいた方がいいと思います。
青山学院【S>>N<<Y】
Nだけが低いのがこれです。塾別合格実績を見ると日能研は多くないのでこれは無視していい気がしますが、それよりもこの学校はサンデーショックで2025入試は2日→3日に移るので、偏差値よりもそっちにフォーカスする人がほとんどでしょう。
明大中野①・世田谷②・暁星①【S<<N=Y】
Sだけが低いパターンです。サピックス合格者が少ないわけではないので判断が難しいところです。
まあS偏差値は上位下位が極端に振れやすいので、N・Yの方に若干修正して見ておけばいいのかなと思います。
神奈川大②【S=N>>Y】
国学院久我山②【S=N<<Y】
全く逆の見え方をする2校で、一緒に比較してみると非常に気になります。
ここはY偏差値が同じ52ですが、神奈川大はS49・N57、国学院久我山はS42・N50と大きく離れた偏差値が付いています。塾別合格実績に大きな差はないので、どういう要因でこういう差ができているのか非常に気になります。特に結論があるわけではないですが、こういう見え方の違いがあるというのはおさえておきたいです。
偏差値の横比較 女子
女子の2月1日と2日の午前入試を見ます。
比較方法の章で書いた通り、女子は日能研R4から四谷大塚は+1、サピックスは−8したものを同一ラインとして横比較の基準にしています。
2月1日(午前)・女子
この日程の女子は比較的綺麗に出ているというか、大きく乖離しているところは少ない印象を受けます。太字になっている、差が大きなところをピックアップしてコメントします。
頌栄①・東洋英和(A)・等々力①・山手学院(A)【S<<N<Y】
Sが低くYが一番高いパターンです。
頌栄はサピックスが若干低く見えますがそこまでの差は感じないのでまあいいでしょうが、東洋英和は結構な差があります。SとYとでは横比較で5ポイント、偏差値で見るとY61:N57:S47ということで見え方にもかなり差があります。塾別合格実績では特にどこが多いわけでもないのでどれを信用するかは微妙ですが、意識はしておくべきところかと思います。
等々力はそこまで差が大きくないのでまあ気にしないでもOK、あとは山手学院ですがここは日能研の合格者数がかなり多いので、とりあえずNを見ておくのが良いだろうと思います。
青学横浜(A)・開智日本橋①・大妻①・明大八王子(A1)・かえつ有明①【S<<N>Y】
Sが低くNが一番高いパターンです。
NとSでは3〜6ポイントもの差が付いていて、明大八王子に至ってはN55・Y54に対しS41という大差だったりで、見た目の数字でも結構な差を感じるところになっています。塾別合格実績を見ると明大八王子とかえつはサピックス割合が低いので、ここはNかY偏差値を見ておくのが良いでしょう。それ以外は差がないですが、サピックスが特別強いわけでもないので、まあ同様にN・Y偏差値が無難かと思います。
中大附属①【S=N<<Y】
ここはYだけが高いです。中大附属は四谷大塚合格者が一番多いので、とりあえずY偏差値を見ておけば良いのではと思います。
2月2日(午前)・女子
渋幕②・豊島岡①【S>>N<Y】
Sが抜けて高いのがこの2つですが、Sの最上位帯は男子を見ても他の日程を見てもこういう感じになりやすいので、まあこんなもんかなと思います。むしろSの渋渋②が高くないと見るべきかもしれません。
恵泉女②【S<<N>>Y】
Nだけが高いパターンです。S・YとNとで3ポイントの差があります。塾別合格者数を見てもそれほど偏りはなく要因はわかりませんが、とりあえずN偏差値は意識しておいた方が良い気はします。
大妻②・青稜(2A)・田園調布②・品川女子②【S<<N>Y】
上で見たNが高いパターンの派生型で、Yが少し高め、そしてSが大きく下がるパターンです。大妻はサピックス合格者もそれなりにいるので無視できませんが、田園調布と品川女子はまあNかY偏差値を見ておくのが正解かなと思います。
2月1日午後入試
1日午後入試ですが、表を見てもらえればわかる通りビジーというか、安定していないんだなと感じる見た目になりました。個別にコメントしていくのはちょっとやり切れないので、とりあえず表だけ見てもらってそれぞれで考えていただければと思います。
個人的に気になったものだけ、最後に所感としてコメントを入れようと思います。
2月1日午後・男子
2月1日午後・女子
所感
広尾小石川②
S偏差値で本家(?)の広尾学園②と同偏差値にまで達した広尾小石川②には触れずにいられません。ただこの偏差値をどう見るかは微妙なところで、そもそもこの入試回で男子の合格者数は22名しか出ていないので、これを塾(模試)ごとに分けると数名〜せいぜい10名分のデータしかないと考えると、まともに偏差値が出せているとは思えないです。まあ高く見ておくに越したことはないですが、ここはあまり偏差値をアテにしない方がいい気がします。
巣鴨(算)・鎌倉学園(算)・世田谷(算)・都市大②
男子上位層の併願先としてここも気になります。頭ひとつ抜けた巣鴨を除けば、残り3校はSとNで完全に並んでいます。その一方、Yだけは差がつくかたちになりました。
このうち、鎌倉学園は四谷大塚の合格者が非常に少ない(全入試分で16人しかない)のでここは他を見た方がいいでしょう。また、都市大はY偏差値表だと2類と1類に分けている(表は1類のみ)ので、全体より低く見えている可能性があります。そして世田谷はそこまで大差がないということで、ここはSかN偏差値を見ておくべきというのが私の結論になりました。
広尾小石川②・開智日本橋(特)・都市大等々力(S特1)
これらについては各塾での評価が違いすぎて、どれを信じていいのか全くわかりません。特に都市大等々力ですが、Sでは45なのに、Nは開智日本橋より2ポイント上、Yだと広尾小石川と同じ値が付いています。こんなにバラバラにポジションされている入試を、ひとつの偏差値表だけを見て判断していたら大変なことになるのではと勝手に危惧しています。
湘南白百合・田園調布(後)・昭和女子(A後)・三輪田(1後)
女子校事情は正直よくわかりませんが、先ほど挙げた3校ほどではないものの模試ごとにバラバラな評価なのがこの辺りです。序列も偏差値表ごとに全然違うので、他も見ながら考えた方が良さそうです。
午後入試はここ数年で完全に定着してきている感じですが、偏差値はまだ不安定というか、それほど定まっていないように見えます。とりあえず前年の偏差値表や、直近の模試での偏差値表を見ながら受験校を検討する方が多いと思いますが、このように午後入試では特に偏差値表による見え方が全然違うというのは頭に入れておいた方がいいと思います。
午後入試の学校に多いですが、入試1回あたりの合格者数が少ないところは特に気をつけたいです。偏差値をつける元データを想像してみるとわかりますが、1単位に合格者が1人や2人しかいないところに合格率80%とかをつけるのはそもそも無理があり、えいやで強引につけざるを得ないだろうと想像できます。またそうなると、上位層が数人増えた程度の動向でも簡単に偏差値が変わってくることも十分考えられます。ということで、そういうケースの偏差値は信頼性が高くないと思って見る、もしくは何か偏差値以外の指標で判断することを考えた方が良いのではと思います。
まとめ
以上、大手3塾の偏差値横比較をお伝えしました。
最初に書いた通り、学校の評価云々ではなく、学校選び、または受験するにあたってその偏差値表を見ている人がどう捉えているのかという点を意識して見たいです。
ピックアップしてコメントした学校はだいぶ見え方が違うというのはもちろんですが、それらが動いていることによって、その周りの学校の位置付けも変わって見えるというのがポイントです。志望校の周辺にある偏差値帯で、他の人がどう見ているのか、他の偏差値表だとどう見えるのか、それを見てどう考えどう動くのか、考えてみると面白いんじゃないかと思います。
受験戦略を考えるひとつの材料にしていただければと思います。
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