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広尾学園中学入試の作戦会議

はじめに

この記事では、広尾学園中学校の入試を考えているご家庭に向け、入試・問題の分析と対策案についてご紹介します。広尾学園は、女子校から共学化して学校改革を成し遂げた事例として語られることが多く、2000年代半ばの校名変更以来、難易度も右肩上がりで上昇してきました。ただ、難易度上昇の割には塾側が追いついていないというか、志望校対策の話もあまり聞かないので、逆に対策のしがいのある学校じゃないかと思っています。ということで、入試対策の一助になればということでお届けします。

なお、このシリーズ全般に共通する内容として、どういう背景で情報提供しているのか、対象と想定しているのはどういう方かについて以下のページに記載していますので、最初にぜひご一読ください。

【更新履歴】
・2024年10月9日 公開


入試の分析

ここで扱う入試の前提ですが、広尾学園中学校の以下の入試を分析対象としています。

  • 第1回入試(2月1日午前)

  • 第2回入試*(2月1日午後)

  • 第3回入試*(2月5日午前)

  • 医進・サイエンス回入試(2月2日午後)

*第2回・第3回は本科とインターナショナルSG(ISG)の両方を見ていきます。
(国際生入試・インターAG回については事情に明るくないので、申し訳ありませんが別のところをあたっていただければと思います)

まず入試分析として、各日程ごとに、偏差値や結果情報(倍率等)から、主に難易度の動きについて見ていきます。

ちなみに塾別合格実績を割合で表すと次のようになっているので、偏差値は一応サピックス偏差値が一番実態を表している可能性が高いと考え、考慮していきたいと思います。

早稲アカ分は四谷大塚+他塾に含まれるという見方です、考え方についてはこちらの記事(塾合格実績の集計|中学受験ウォッチ)にて

第1回入試は安定?やや上昇?

サピックス・四谷大塚・日能研の3模試による偏差値推移をグラフ化します。

データ出典:各塾の入試結果偏差値表
(サピックスは翌年度の第1回志望校判定サピックスオープンによる予想偏差値)

全体感として基本的に右肩(左肩)上がりで推移してきていますが、2018年あたりで一旦上昇は止まり、その後は横ばい推移というのが俯瞰した流れでしょう。サピックス以外では2023年から再びもう1ランク上がった感がありますが、サピックスは大きく動いていないので、どちらの動きが実際と合っているのかはまだ判断つかないかなと思います。

続いて出願者・受験者・合格者の数と実質倍率を見てみます。

先ほど見た2023年以降の動きですが、2023年で大きく倍率が上がりました。2024年はやや戻しましたが、倍率の動きからすると、2023年以降で1ランク上がった見てもおかしくはないと思います。

ただそれよりも気になるのが、この偏差値帯の学校としては驚くほど倍率が高いことです。後半日程であればこういう倍率も見ますが、2月1日午前入試としては相当高いと感じます。

この原因は、グラフを見れば一目瞭然ですが合格者数の少なさにありますね。このところ徐々に受験者数も下がってきてはいましたが、合格者数も微妙に絞られてきているので、5倍前後の倍率はキープされています。

男女別での倍率も確認してみます。

男子も高倍率ですが、3倍台というのはまあ他でも見るかなという数字です。一方女子は5倍以上が常態化しています。ただ、合格点に男女で差をつけているわけではないので、難易度の差ではなく、単純に女子の志願者が多い(学力の幅が大きい)ことを現していると考えられます。

第2回入試の男女差は小さい

第2回は第1回より全体的に2〜4ポイント高くなっています(日能研のみ同じ)。本科とISGでは合格最低点に違いがありますが、その差は偏差値でほぼ1ポイントということのようです。

次は出願者・受験者・合格者の数と実質倍率を見ます。第2回入試は本科とISGの選択がありますが、ISG受験者はISG合格点に足りなくても本科合格する制度があるので、ここは一緒の母集団として見た方が良いと判断し同一グラフに入れ込むかたちにしました。実質倍率は本科+ISGの合格者総数から算出しています。

*合格者には、ISG受験してISG合格した人数と本科合格した人数を含む

受験者数は減少傾向ですが、合格者数はやや拡大傾向で、結果的に3倍を切るくらいの倍率で落ち着いています。

偏差値は確かに高いですが、合格者数が多いので、そこまで狭き門かというと必ずしもそうではないようにも見えます。この辺りは後ほど考察してみたいと思います。

こちらも男女別で倍率を見てみます。

これを見ると、第1回でついていた男女の差はほとんどなくなっているのがわかります。これは第2回が上位校の併願日程にもなっているので、第1回のような熱望組のみではないというのが関係していそうです。逆の目線で言えば、第1回は女子のチャレンジ層が多いということかなと推察します。

第3回は意外に偏差値が高くない

第3回は2月5日ということで、一般的には高偏差値になりやすい日程ですが、意外にも第1回とあまり変わらないところにいます。せいぜい第1回+1ポイントという感じで、日能研はむしろこちらの方が低くなっています。

数年前の四谷大塚だと3ポイントくらい上だった時期もありますが、他の偏差値表ではそこまで差はついていないので、意外と高くないというのはおさえておいてもいいかもしれません。

第3回も本科とISGがあるので、第2回と同様の集計で見ていきます。

(注:第1回・第2回とは倍率の軸がずれています)

2020年以降の合格者数は100名を越えているので、第1回入試より合格者は出している入試回になります。ただ受験者はさらに多いので、倍率は第1回よりさらに上で、かつては7倍以上、最近でも5〜6倍ということで、まあ厳しい入試ではありますね。ISG合格者に至っては13人とかなのでかなり大変です。

この日程でこれだけ集まるというのは、まあ第1回、第2回、医サイ回のリベンジ組が中心かとは思いますが、例えば広尾小石川など、他校受験からのチャレンジ組もそれなりにいるのではと想像します。

高止まりの医進・サイエンス回入試

医進・サイエンス回は、全ての回の中で一番高い偏差値をつけています。四谷大塚の女子偏差値は69と、最難関の括りに入る数字です。2月2日午後という特殊日程や、理系特化コースの人気などによるものも大きいでしょうが、この回だけ理系科目重視の配点になっているので、それが高偏差値に影響している可能性も少なくないと個人的には見ています。

倍率は2020年あたりから安定しています。偏差値で見ても上昇幅は少なくなっているので、難易度はこの辺りで安定してきたと見て良さそうです。

全体を通しての印象

近年急激に上がってきた難易度は、ここ数年では一服して安定してきているかなという感じです。回ごとだと第1回と第3回が同程度、第2回と医進・サイエンス回がやや高めという分かれ方のようですが、倍率はこの逆になっているので、結局穴場の回はないという結論にはなります。

ただ、第3回は高倍率ながら偏差値はそこまで高くないので、他の学校の合格をおさえた上でチャレンジしていくというのは十分に取り得る選択かなと思います。

入試問題の分析

ここから実際の入試問題を見ながらの分析に入っていきますが、その前に、平均点などの数字を分析してみます。

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