【進学校の横比較】共学Y60〜50編
同偏差値帯の進学校を集めて横比較してみようという企画です。今回は四谷大塚偏差値50〜60の共学校編とします。
ここも学校の数が多いので、偏差値推移と合格実績という入口・出口データに絞って取り上げます。
以下の19校が対象です(偏差値基準は全入試回の平均偏差値が50以上)。
東京農業大学第一(東農大一)/三田国際学園/広尾学園小石川/東京都市大学等々力(都市大等々力)/開智日本橋学園/東京学芸大学附属国際中教(学芸大国際)/神奈川大学附属/青稜/國學院大學久我山(国学院久我山)/成城学園/山手学院/帝京大学/桐蔭学園中教/安田学園/公文国際学園/成蹊/ドルトン東京学園/淑徳/かえつ有明
大学附属校も含まれていますが、ここで挙げているところは外部進学者も一定数いるので含めることにしています。
1. 偏差値の比較
各塾の偏差値推移を比較します。年度ごとだと重なりが出て見づらいので、それぞれ前後3年の平均を出してそれをグラフ化します。
サピックスだと偏差値表に出てこない学校も多いので、今回はサピックス・四谷大塚・日能研の3つの偏差値表を載せていきます。
塾別合格実績
まずは偏差値表の有効性を見るために集計した塾別合格実績を確認します。
サピックス・日能研・四谷大塚の3模試それぞれで偏差値表が出ているので、基本的には合格実績の多い塾の偏差値表を参考にします。
(なお早稲アカ分は四谷大塚+他塾に重複して含まれると見ているのでここでは無視しますが、一部四谷大塚の参考値として使用します。早稲アカ分についての考え方はこちらの記事にて。)
ざっと、サピックスを見た方が良さそうなところと日能研が良さそうなところに分かれそうです。四谷大塚については公開されていないところも多いですが、早稲アカ実績を見るとある程度の目安になると思います。
2月1日午前入試
サピックスで40台の学校は参考にしていいのか正直微妙ですが、広尾小石川については合格者も多いので、この中ではちょっと上にいるという見方で良い気がします。
明らかに序列を崩す急上昇を遂げた学校がいくつかあるのがわかりますね。一方で凋落と言えるような大きな下落はこの中にはなさそうです。
まあ四谷大塚と似てはいますが、これだとグラフの右側と左側でちょうどねじれた格好というか、要は10年前と今とで序列が逆転しているという風にも見えます。
ざっくり言葉でまとめると次の感じでしょうか。
共学化し学校名を変える大改革をしたところがこの10年で急上昇した
大きな下降はこの中にはない
(元々難関クラスの共学校がほぼなかったためか)
女子校を共学化し、国際教育や理数教育などを掲げて人気化したところがこの偏差値帯に多数あるので、まあイメージ通りかもしれません。そしてここから最上位に抜けていったのが渋幕・渋渋・広尾学園で、それに続く学校が出てくるのかが次の焦点になりますかね。
2月1日午後入試
一部の伝統校を除くと、この偏差値帯のほとんどの学校が1日午後入試に参入しています。しかも午後入試で存在感を出してから他の日程も上がっていくというプロセスが王道にもなっているように見えるので、1日午後入試にフォーカスしてグラフ化します。
1日午前では出てこなかった学校もこちらには顔を出してきます。古いデータがないので直近の動きしかわかりませんが、上昇中の学校はいくつかありますね。
ほとんどが上昇と見ていいでしょう。ただ、10年前のスカスカ具合からすると、かなり様相が変わってきているようには見えます。
四谷大塚と似てはいますが、個別では微妙な違いがありそうなので深く見ていくと面白そうではあります。
全体を俯瞰して言えるのは、10年前とはかなり様相が変わっているという点ですね。10年前も午後入試はありましたが、上位校の選択肢は限られていたようです。ここに新興校と言われる学校が多数参入し人気化したことで、激戦というか、より午後入試が一般化したと見るべきでしょう。
2. 大学合格実績の比較
続いて大学合格実績の比較です。
この偏差値帯の学校は浪人割合が低い傾向にあり、現役のみのデータと分けて出してもあまり変わらないので、ここでは浪人+現役の全合格者のみを集計することにしました。
国公立大学実績(2022〜2024年)
ここは難関大実績と偏差値がほとんどリンクしておらず、ある意味で学校のカラーが出ていると言えるでしょう。この中で難関大(東京一工医とします)実績が多いのは、桐蔭学園中教・公文国際・学芸大国際・神奈川大附属あたりが挙がります。
ただ、入学時の偏差値が低かった学校もあり、6年前から大きく上昇した次のあたりは、今後上昇してくる可能性もあるかと思います。(2018年→2024年の2/1午前Y80偏差値)
三田国際(50→56)
都市大等々力(49→54)
開智日本橋(43→55)
青稜(46→52)
淑徳(43→48)
かえつ有明(40→47)
私立大学実績(2022〜2024年)
私立大学は卒業生数を100%としたときの割合を積み上げてグラフ化しています。私立大学は重複合格が多いので、100%だから全員が合格というわけではない(大体数分の1程度)という点を踏まえた上でご覧ください。
こちらも学校ごとの違いは結構ありそうなので、それぞれの視点で比較していただければと思います。また、東京理科大と上智大を比較することで、理系・文系比率のひとつの目安にもなるかなと思います。
海外大学実績(2020〜2024年)
もうひとつ、海外大学への合格者数も比べてみます。名門大学(THE世界大学ランキング100位以内などの基準、具体的にはこちら)と、全海外大学の合格者数をグラフ化しています。
こちらは国際系と呼ばれるところとそれ以外で大きく方向性が異なります。学芸大国際・三田国際・開智日本橋が圧倒的で、これは学校からのそれなりの後押しがないと作れない数字だと思います。これにかえつ有明も含めた4校はここ数年で大きく伸ばしているので、この先さらに増やすのか、どこかで頭打ちが来るのか注目したいところではあります。
3. 各学校の沿革と小ネタ
ここで挙がった学校は、学校改革によって校名も変え新たなスタートを切ったところも少なくありません。詳しい教育内容などはそれぞれの学校で調べていただければと思いますが、動きが激しくちょっと面白いので、動きがあった学校について、どういう経緯なのかと小ネタなどを書いてみます。情報源は主にWikipediaなんで、まあ噂話程度にユルく聞き流してください。
開智日本橋学園中学・高等学校
前身は女子校の日本橋女学館中・高等学校で、開智学園との基本合意書に基づき2015年に校名を開智日本橋学園に変更、中学校から学年進行で共学化を進めた。同法人で2000年設立の日本橋学館大学があったが、こちらも開智国際大学に改称し開智学園の大学として存続している。開智学園は1983年設立(設立時は三友学園)の新しい学校法人ながら、新設や伝統校の吸収などをしながら今も拡大していて、相当な経営手腕を感じる。
開智日本橋は、立地の良さもあってか本家の開智中を凌ぐ偏差値になってきていて、難易度でいえば開智グループのトップランナー(?)のような位置付けになってきたように見える。
神奈川大学附属中・高等学校
神奈川大学の附属校として1985年に開校した。附属校ではあるが進学校として運営されており、内部進学率は数%程度で、基本は外部受験を前提とする学校。
ちなみに神奈川大学は神大と省略されるが、おそらく他県で神大と言えば神戸大学を指すと思われる。
かえつ有明中学校・高等学校
前身は市ヶ谷にあった女子校の嘉悦女子中学校・高等学校で、2006年に江東区有明に移転しかえつ有明と改称、同時に共学化も行った。
市ヶ谷にあった嘉悦女子中高は法政大学の隣地で、現在は法政大学の敷地になっている。その関係なのか何なのかはわからないが、法政大学へ推薦15名と比較的多めの枠を持っている。
公文国際学園中等部・高等部
かの有名な公文式の創立者である公文公が1993年に創立した学校。当然のごとく公文式学習が取り入れられている。
首都圏では珍しい寮制の学校で、教育の三本柱として"寮"が位置付けられている。(全員が寮生ではないが、通学生にも数ヶ月の寮体験プログラムがあるらしい)
國學院大學久我山中学校・高等学校
久我山中学校・高等学校が1952年に國學院大学と合併して国学院久我山となった。略称では国学院大学と書くが、正式には旧字体の國學院大學らしい。これは、國學院大學が国家神道の教育機関を起源とし、神職養成機関としての役割を継承していることと無関係ではないと思いますが定かではありません。
基本的に進学校で、内部進学率は1割未満。また男子部と女子部があり、共学ではなく別学の形態を取っている。
淑徳中学校・高等学校
学校法人大乗淑徳学園が設置した学校で、かつては淑徳女学校をルーツとする女子校、そして1991年にいち早く共学化に踏み出している。同法人が設置している学校には淑徳巣鴨中高、淑徳与野中高があり、そのほか淑徳大学、淑徳小学校、淑徳幼稚園、淑徳与野幼稚園まで含め、幼稚園から大学までを抱える一大グループになっている。
なお、同じ淑徳女学校をルーツとした淑徳小石川学園中学校・高等学校もあるが、こちらは1951年に学校法人淑徳学園として分離しているらしい。
成蹊中学校・高等学校
学校法人成蹊学園が設置する中高で、成蹊小学校〜成蹊大学まで一貫教育体制が作られている。成蹊大学の附属校と見ることもできるが、内部進学は2〜3割前後とそれほど高くなく、この割合だと外部受験が主流と考えられる。(内部推薦の資格を持ちながら外部受験できる制度もあるとのこと)
成城学園中学校高等学校
学校法人成城学園が設置する中高で、成城幼稚園・成城学園初等学校〜成城大学まで一貫教育体制が作られている。小田急線の駅名になっている通り、成城学園と言えばこれらの学校を指すが、歴史を遡ると新宿区にある成城中学校がルーツになっている。途中で分離し、今は別の男子校になっているので、間違えないように気をつけたい。
青稜中学校・高等学校
女子校であった青蘭中学校・高等学校が1995年に青稜と改称し共学化した。学校法人は青蘭学園。校名改称の前に商業化を廃止し、進学校化へと舵を切っている。
2018年には学習塾TOMASと提携し、放課後自習施設Sラボを運用開始した。
ちなみに全国には[せいりょう]と名のつく高校は多数あり、同じ読みでは星稜高校(石川)や星陵高校(静岡)、XX青陵とかXX清陵とかXX星陵など、一大勢力を誇る名前となっている。
帝京大学中学校・高等学校
傘下に8学校法人と36校を持つ帝京大学グループの1校。野球やサッカーで有名な帝京高校は、間違えやすいが別の学校。こちらは学校法人帝京大学の直系にあたる中高で、その関係性からすれば附属校だが、教育環境は進学校で、帝京大学への進学はほとんどないらしい。
桐蔭学園中等教育学校
現在桐蔭学園が設置する高校は2つで、高校から入学する桐蔭学園高等学校と、中高一貫教育を行う桐蔭学園中等教育学校とに分けられている。かつては桐蔭学園中学校・高等学校があり、2001年からは中等教育学校も併設されるかたちになったが、2019年から中学は中等教育学校に一本化され現在のかたちになった。また設立時は男子校で、1981年に女子部が開設されたが、基本的に男女別学の形態をとっていた。2018〜2019年の改革で、高校・中教とも共学化されている。
桐蔭学園といえば親世代には東大合格者100人を超える進学校でしたが、紆余曲折あって(詳しいことは知りません)現在のポジションの模様。大学合格実績は高校と中等教育学校で別に集計され、人数では高校が多いですが、率では中等教育学校が上回っているようなので、この先が注目されるところ。
東京学芸大学附属国際中等教育学校
その名の通り東京学芸大学附属の国立学校で、附属大泉中学校と附属高等学校大泉校舎を統合し2007年に開校した。同じ大学系列で東京学芸大学附属高校や3つの中学があるが、あちらは高校と中学が分かれているのに対し、ここは中等教育学校ということで6年一貫教育になっている。
附属大泉小学校からの内部進学(附属小金井・世田谷・竹早小学校からも若干名)、帰国生・外国籍生徒、中学受験による入学生とがそれぞれ1/3ずつとなっているらしい。
東京都市大学等々力中学校・高等学校
前身は女子校の東横学園中学校・高等学校で、2009年に武蔵工業大学・東横学園女子短期大学が統合し東京都市大学となった大きな流れの中で、こちらも東京都市大学の系列校となった。その後段階的に女子部が廃止され、共学校へと移行。
なお同系列の東京都市大学附属小学校もあるが、こちらの卒業生の内部進学は30%程度で、どうやら系列校に上がることよりも中学受験を積極的にサポートしている学校の模様。
東京農業大学第一高等学校・中等部
学校法人東京農業大学の設置する中学・高校で、このほかにも、群馬県高崎市の第二高等学校、埼玉県東松山市の第三高等学校・附属中学校もあり、東京情報大学(場所はなぜか千葉市)も同法人の学校。
さらに、東京農業大学稲花小学校が2019年に開校し、この第1期生が第一高校中等部へ入学する2025年からは、高校募集をやめ完全中高一貫校となる。
大学附属校ながら内部進学は数%しかなく、2022年より内部進学の権利を保持したまま他大学受験が可能になったらしいですが、それでも数%しか選んでいない模様。
ドルトン東京学園中等部・高等部
目黒区にあった東京学園高等学校を前身とし、河合塾の参画によって2019年に調布市に移転・開校した。米国の教育家によるメソッド「ドルトン・プラン」による教育法を取り入れ、これが校名にもなっている。
広尾学園小石川中学校・高等学校
前身は女子校の村田女子中学校・高等学校で、2018年に広尾学園と教育提携、その後広尾学園の姉妹校となることが発表され、2021年には学校名も広尾学園小石川へと改称された。コース制など教育内容も広尾学園を踏襲したものを導入している。
都立小石川中等教育学校の真裏に立地していて、Wikipediaによると、2008年の中学校開校の際につけた村田学園小石川女子中学校の名称について、都立小石川から受験生に混乱を与えると抗議の声が上がり、一旦収束したものの、2013年に村田女子中学校へと変更した経緯があるらしい。今の名前について何かこうした声や動きがあるのかは不明。
三田国際学園中学校・高等学校
前身は女子校の戸板中学校・戸板女子高等学校で、2015年に共学化し三田国際学園と改めた。学校の歴史は1916年設立の三田高等女学校まで遡り、世田谷区用賀にあるにも関わらず三田国際学園としたのはここが由来と思われる。ちなみに三田高等女学校から戸板高等女学校へは1937年に名称変更していて、これは都立三田高校(旧第六高等女学校)に譲ったためではないかと邪推したが、三田高校の改称は1950年らしいので関係なさそうである。
2025年から三田国際科学学園と再度改名されることがアナウンスされた。
安田学園中学校・高等学校
2014年に男子校から共学化された。安田財閥の創始者である安田善次郎が創設した東京保善商業学校が母体で、新宿区の保善高校も同じルーツを持つ。中学入学の一貫部と高校入学の高校部とは、3年間を通して別クラスになるとのこと。
山手学院中学校・高等学校
1966年創立の比較的新しい学校。初期は全寮制だったが、1980年から通学制を開始したとのこと。2010年からは高校入学生との混成クラスがなくなり、中高一貫クラス編成となる。これは桐蔭学園・安田学園にも共通し、高入生を抱える学校のひとつのかたちのようだ。
3. まとめ
今回は入口となる偏差値と、出口の大学合格実績のみで比較を作りました。本来的には教育環境こそ比較すべきところの気はしますが、一旦これでご了承ください。
志望校選びや学校研究の一助になることができれば幸いです。