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受験1カ月前のある生徒

 数学というのは日々の積み重ねが大切です。安易に公式を覚えて使うだけでは本質が全く理解できません。少し傾向が変わってしまうと全く解けなくなってしまう人がいるのも、そうしたことが関係しているかもしれません。   数学を専門に教える人、現役で勉強している人はみなそういうでしょう。私もその一人です。しかし、入試の直前に控えた受験生が、どうしてもこれだけは理解できなくても何とかしたいと思い、立ち向かうケースがあることも事実として見てきました。

 今からおよそ20年以上前くらいのことですかね。ある一人の少年の話をしたいと思います。

 当時、私がレギュラーで担当している生徒ではなかったのですが、受験に関して問題のある生徒がいました。受験1カ月前を控えた生徒のリストを一覧にまとめる作業をしていた時に、とんでもない事実を目の当たりにし、愕然としたのです。
 受験1カ月前の学力テスト、数学の点数が、なんと4点。
(当時のその県の高校受験は50点満点)


これ、どうします?


 志望校を下げるとかどうとかいう問題ではないですよね?どんなに下げて高校に入っても、これではその後の高校生活での授業は一切分からず、苦労の連続となり、勉強が嫌になってしまうのは目に見えています。
いや、そんな先のことを考えている場合ではない。まず高校に入らないと。しかしどうすれば・・・

 当時、その少年が希望していた高校に入るには、当日の入試で160点くらいが必要でした。
(1科目50点満点×5科目=計250点満点)
 数学を除いた4科目では大体110点くらいは取れる見通しが立っており、数学が難点取れるかが合格のカギを握っていると思ってよい状態でした。
・・・って、まてよ?これ、数学で満点取れないとダメなんじゃない?
うーん。
現実的に考えて今4点の人間が満点に跳ね上がることなんて無理でしょ。

 塾では、大体の所が本人の内申点と偏差値をしっかり管理します。入試のリプレイを受験直前に何度も繰り返し行い、どれくらい取れるかを見て、勝算があると判断し志望校を最終確定するのが普通です。その生徒もそうでした。そのリプレイでの受験1カ月前の数学が4点なのです。

 で、まずは志望校を少し下げました。これは当然のことです。そして再度当日の必要点数を算出したところ、5科目合計で140点以上取ればまず大丈夫だろうと結論が出ました。ということは数学で30点取れば合格できるわけです。しかし、それでも30点。
志望校も下げて挑むこの挑戦。もはや時間もなく、数学の本質を理解させるよりも、どう点数を取らせるのかに気が向いてしまうわけです。

 ここから入試本番に向けた徹底練習を開始しました。その生徒がどうなったか、また具体的にどのような対策を取ったのか。

それはまた次回に。

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