オクラの話
昨日妻がラーホイを作ってくれました。
ラーホイはソンガイ語でオクラのことですが、オクラを使った料理もラーホイです。
材料が料理の名前になっているのはケイジャン料理のガンボ(これもオクラのこと)と同じですね。
オクラって実は昔からある日本語ではなくて英語だとご存知でしたか?
オクラの正式な和名はアメリカネリ。
陸蓮根(おかれんこん)と呼んでいたりもしたようです。
アメリカネリのネリはトロロアオイというオクラによく似た植物の俗称です。
そもそもオクラはアオイ科トロロアオイ属ですから似ていて不思議じゃないですね。
そのトロロアオイからは粘液が抽出でき、紙漉きや蒲鉾や蕎麦のつなぎに使われるそうです。
トロロアオイの粘液はネリ(糊)と呼ばれ、トロロアオイ自身もまたネリと呼ばれるようになりました。
このネリに似た植物がアメリカからやって来たということで、オクラはアメリカネリと名付けられました。
しかしアメリカネリという言葉はいつしか廃れてしまい、英語のままオクラと呼ばれるようになって今に到ります。
それどころかオクラの方がトロロアオイ以上に有名になったため、オクラに似た花を咲かせる植物だと言うことでトロロアオイの方が花オクラと呼ばれるようになってしまいました。
トロロアオイの負け(笑)
さて、そんなオクラの原産地は、日本語の資料ではアフリカ北東部(エチオピアあたり)だと言い切られているものが多いですが、英語やフランス語の説明をみると、エチオピア起源説だけでなく西アフリカ起源説、南アジア起源説も頑張っています(笑)
オクラの語源はイグボ(イボ)語説、トゥイ語説などがあります。
イグボ語は主にナイジェリア、トゥイ語はガーナで話されている言語です。
バントゥー語群(広く中央・東・南アフリカで話されている言語群)ではオクラはゴンボと呼ばれています。
冒頭で述べた米国ケイジャン料理のガンボの語源がこのゴンボですね。
西アフリカから奴隷として連れてこられた黒人達から伝えられた定着したそうです。
と言ってもケイジャン料理のガンボは、必ずしもオクラを使うわけではなく、サッサフラスの葉であるフィレパウダー(これもネバネバ)を使う場合もあるそうですので、オクラを食べたいときは、きちんとどちらか確認する必要がありますね。
東京にはガンボを食べられるレストランがたくさんありますよ。
ガンボを食べるとその味から奴隷貿易、アメリカ南部と西アフリカの繋がりをしっかり感じられます。
ラーホイに近いオクラのシチューは浜松町のカラバッシュで食べられます。
カラバッシュのオクラ料理は、ヤムイモを粉にして湯がいて煮詰めてこねて柔らかい餅のようにしたフーフーと、トマトベースの別のソースと一緒に食べます。
餅状のものに、オクラソースとトマトソースのふたつのソースを添えて出すのはマリ北部でも同じです。
その場合、この3点セットはラーホイではなくチェルバンダと餅状にした主食の名前で呼ばれます。
オクラソースと言えば、セネガルのスープカンジャがフランスでも有名です。
カンジャはウォロフ語でオクラのことです。
スープカンジャにはパームオイルがこれでもか!というくらい使われて表面がギトギトの真っ赤っかです。
とてもおいしいんですが、僕はあの大量のパームオイルで後から胸焼けするので、パームオイルが少な目のトンブクトゥ版オクラソースのラーホイが好きです。
こちらが冒頭の写真よりさらにパームオイル少な目バーションです。
オクラのシチューなのに緑色ではなく赤いのはトマトピューレがたくさん入っているからです。
オクラソースの隠し味には魚の干物も欠かせません。
西アフリカの人にとって、オクラソースは日本人にとっての味噌汁みたいなもので、よく食べ、家庭毎に作り方や味が違うお袋の味ではないでしょうか。
とりとめなくオクラソースのことを書いてみました。
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