天牛名義考 序 (かみきりむしのなまえについて はじめに)
冒頭の画像は, 車内を覗き込むバッタの幼虫(たぶん)。バッタは不完全変態の昆虫で, 卵から孵った時点ですでに成虫に似た姿をしている。蛹を作らずに成虫になる。カミキリムシを含む甲虫は完全変態する。幼虫は蛹を経て成虫になるが, 成虫は幼虫とは似ても似つかない。
序の2.甲虫
カミキリムシは昆虫だ. 昆虫には, 人間の ”骨” (内骨格)にあたる組織はない. 外皮*が体形を形成する(外骨格)動物である.
進化(退化?)した一部のグループ**を除けば, 昆虫は羽根(この世界では ”翅” の字を使用) を2対持つ. チョウやトンボの2対4枚の翅を思い浮かべていただきたい. 翅は胸部から出ていて, ふつう, 頭部寄りの1対を前翅, 腹部寄りの1対を後翅と呼んでいる.
昆虫の中で外皮が全身にわたってとりわけ硬く発達したのが, いわゆる “硬い体の虫”, つまり甲虫(こうちゅう)である.
カブトムシ, クワガタムシ同様, カミキリムシは甲虫の仲間だ. かのカマキリも ”G” ***も, 甲虫ではないぞよ.
甲虫では, 前翅が ”殻” のように硬化している. 鞘翅(さやばね, しょうし)という. 飛翔に使用するのは, 主に, 薄くて長い後翅だ. それはふだん折り畳まれ, 前翅の ”殻” の下に収納されている. それで, 甲虫では前翅を上翅, 後翅を下翅と呼ぶことがある.
飛翔する時, まず, かれは上翅(鞘翅)をスポーツカーのバタフライドアのように開き, 次に下翅を左右に広げ, 羽ばたいて飛び立つ. その ”間(ま)” が実にいい. ぱかっ, しゅぱっ, ブーン.
(次稿につづく)
注*
クチクラ(キューティクル)によって形成されるという.
注**
ハエやアブの仲間では後翅が失われ, その痕跡が微小なまち針のような形で残っている. 平均棍というらしい.
オサムシ科の甲虫マイマイカブリは, 上翅(鞘翅)が癒合して開かれることがない. スリムでおそらく昆虫界きっての美しい体型の持ち主だ.
タテハチョウの仲間は, 前肢(前脚)が退化して小さくなり, ものに静止する役割を担っていない. それで, このチョウは四脚に見える. かれらは気に入った場所を見つけると, そこに何度も飛来しては静止する. 占有癖があるのだ. その動きはきびきびとして実に小気味よい.
注***
"G". 前稿を参照ください.