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「暑がゆけば…鶺鴒の鳴く岬を巡る」*言の葉Trip9/11*

「白露」の次候は、「鶺鴒鳴く」。
(せきれいなく、9月12日から16日頃)

鶺鴒(せきれい)は、尾の長い小鳥で、
「チチィ チチィ」と鳴く、

「日本書紀」にも記され、
神話によれば、鶺鴒の仲睦まじい様子を見て、イザナギ、イザナミお二人の神様がそれに習い、無事結ばれたとあり、

「恋数え鳥」、「恋知り鳥」という名でも呼ばれております。

「秘かな想いを 鶺鴒に
託して書いた あの日の便り…」

これは福井県は越前岬を舞台に、
作られた「越前有情」という曲の、
歌い始めで、五木ひろしさんがお歌いになりました。

ご出身が福井県の越前岬に面した、
三方郡ということもあり、

越前海岸の景勝地の一つ、「呼鳥門」の近くに、高さ15mの歌碑が建てられ、
歌碑の前のスイッチを押すと、
センサーが反応し、曲が流れ出します。

鶺鴒は、ちょうど今頃になると、
恋の季節を迎え鳴き始め、
番(つがい)になるお相手をさがし、
出会えば、とても仲良く過ごすそうです。

夏の暑さの落ち着く頃、
秋のはじめに、静かな恋をする、
そんな鶺鴒も、この残暑の厳しさには、
驚き戸惑うに違いあません。

夏のにぎわいが落ち着き、
夏の休暇も明け、
淡々と繰り返される暮らしの中で、

朝夕の涼やかな風や、
そろそろかと鳴き始める秋の虫の声に、
秋の翳が少しづつ満ちてゆく今頃は、

過ぎてきた過去を振り返り、
過ぎゆくこれからに思いを馳せる、
1年で1番、心の静まりかえる、
そんな時なのかもしれません。

「秋」あきと書いて、
「とき」と読ませることがございます。

1年の中で1番の季節、そのような心持ちで、そういうのでしょうか。

「春秋を経る」といえば、
歳月がたつことをいい、

「1日千秋の思い」といえば、
待ち焦がれるというような意味合いになります。

春から夏にかけ、季節外れの時期に遡上してきたシロザケのことを、
「トキシラズ」と呼びますが、こちらは 漢字で「時不知」または「時鮭」と書きまして、残念ながら、「時」を「秋」とは書きませんが、

若い鮭で、味が良く、高級魚としても知られております。

秋から冬の時期に遡上する鮭は、
「秋鮭」あきじゃけ、あきざけ…。
そのままでございますが、

北海道では「あきあじ」とも呼んでおります。

ここまで書きながら、
夏のことを思いますと、

この夏はやはり…。
「暑すぎた…。」としか言いようのない、
なんともせつないことであるよ…と、
古典を訳すような言葉がこぼれてまいります。

越前有情の歌詞、秋の段にはこうありまして、

「愛のせつなさ 教えてくれた
私の越前 秋の海・・・」

私の知る越前岬は、
秋から冬にかけて、岬を洗う荒波と、
岬を煽る風、波の花が岬に寄せて、

今、冷たい雨が降ったかと思うと、
霙(みぞれ)が大地を叩くが如く落ち、静かになると大きな湿った雪が舞う…。

天の気の移り変わりの激しい、
それゆえに、愁いや不安の渦巻く、

まさに切ないまでも、悲しさの色をまとう日本海の岬なのです。

「越前・河野しおかぜライン」とも呼ばれる、通称「越前海岸」、国道305号線は、

火曜サスペンス劇場のロケ地でも有名な、「東尋坊」(とうじんぼう)、
あの断崖絶壁、そうです!

船越英一郎さんが、ドラマのクライマックスで、犯人を追い詰める、

あの場所へと続く街道であり、
宮内庁御用達である「越前ガニ」の、
ふるさとなのでございます。

「寒来暑往」
かんきたり しょゆき
        (千字文より)

寒往けば 即ち暑来り
暑さ往けば 即ち寒来る
寒暑相ひ推して歳成る

(寒さが去ると暑さがやって来る、
暑い季節がゆくと寒くなる。
寒暑冷暖が次々と交代して、
1年となる。)

孔子いわく、

「天下に何をあれこれ思い煩うことがあろうか、方法や考えは様々だが、
結局は同じところに帰着するのだ。」

不変の法則の中で、
小さなことを思い煩うことなく、
大きく物事を見つめながら、

残すところ、僅か3ヶ月半となってしまった、
令和6年をよき1年にしなければ…。

そして、年末は越前海岸で、
越前ガニのお刺身が食べたいのである。

そして、地酒は越前若狭の、
白山水系の伏流水で作られる淡麗辛口、

真鶴酒造の、「真鶴」か「奏雨」をおともに、1年の仕上げをしたいと思う。

そして「越前有情」を口ずさみながら、
波の音を枕に、

「佳きかな…。」
そう言いたいことであるよ…。


鶺鴒の鳴く頃
越前岬には有情満ちて
波に問う心は
砕けて風の運びゆく

そんな愛の苦しさを
あつめて咲くのは

冬 越前岬を彩る
水仙の花なのかもしれません


*…………………………*

*有情(うじょう)*
愛憎のこころのあること

*愛憎(あいぞう)*
愛することと憎むこと

*…………………………‥…*


いつもありがとう存じます。

8月から9月、
たくさんの素敵なご縁をいただき、
おひとりおひとり、
ご挨拶の叶いません事を、
お許しくださいませ。

まだまだ油断のならない、
暑さが続きますが、
どうかご自愛くださいませ。


今回は、前職でよく訪ねた、
越前岬のことを書いてみました。

仕事柄、よく歌った「越前有情」は、
思い出の唄であり、

カニのシーズンになると、
目まぐるしく変わる天候を恐れながら、

お客様をお宿へとお送りしたことが、
思い出され、懐かしい心持ちで、
越前海岸を旅するように、
書き終えることができました。

本日も、お付き合いをいただき、
まことにありがとうございました。

またお会いできますことを楽しみに、
お別れの言葉にかえさせていただきます。


お相手は、わたくし、
アリのママこと、
ありままでございました。

心からの感謝をこめて…🐝))


*…………………………………*


参考資料

ふうちゃん様 イラストより
いつもありがとうございます

野村茂夫先生著
「千字文を読み解く」

山下景子先生著
「美人の日本語」



































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