脛に来て蠅は鰥夫と知つている 大嶋康弘 『銀化 9月号』 季語 蠅 (夏) なぜ脛(すね)なのか。 膝だと一か所に特定される。 脛なら範囲が広いから蠅はそこを少し移動したのかもしれない。 鰥夫はやもお、もしくはやもめ。独身の男性。または妻を失った男。 この句の場合はどちらだろう。 私は後者を想像した。 少しの寂しさと少しのおかしみを感じさせる。 蠅と人とが対等だ。 風鈴や訃音はいつの他人の死 橋本喜夫 『銀化9月号』 季語 風鈴 (夏) 風鈴の音を誰か知らない人
季語 蛍 蛍は甲虫に分類されます。 日本には多くの蛍が生息しますが 一般的には平家蛍と源氏蛍を指すことが多いと思います。 日本では蛍の光る様子から恋を連想したり、 人の魂を思い描いて多くの詩や歌が詠まれてきました。 蛍はたくさんの俳人が詠んできた大きな季語の一つだと言えます。 「おおかみに螢が一つ付いていた 金子兜太」 大きな狼。 その毛はごわごわとしています。 この狼は森の中で眠っているのでしょうか。 その腹の部分に小さな蛍が静かに点滅を繰り返しています。 大きなものと
葡萄の俳句 矢野貴子 秋の季語の葡萄は、生で食べる他、 干し葡萄にしたり葡萄酒にしたりします。 そんな葡萄は 人の暮らしとは深いかかわりあいを持つ果物の一つと言えるでしょう。 葡萄は中近東が原産と言われ、 古代ヨーロッパや中国などに広まり その後世界中で栽培されてきました。 「葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男」 作者は葡萄をたべています。 ゆっくりと味わいながら。 一房にたくさんの実がなっている葡萄。 一粒一粒が集まって 一房の葡萄という豊かな形を作っています。