「伝言板形式による作業日程」
*キャプション
天好天好
謝々
此れでも一畝
全く有難い極みだ
満州国立吉林師道大学の思い出の1こま。
1畝の除草、とあったから実際に畑に行ってみて驚いた。その1畝の終りが見えないのである。地球の果てまで行くのか、作業の前に、まず、ひと息ぼう然と鍬によりすがってつっ立っていた記憶がある。
いっしょに畑に行っても、三角のアンペラ製の日除け帽子をかぶり、実に楽しそうに作業をしているのは漢族、(真族)蒙古民族などの大陸系民族で、大文句だらだらで、すぐ疲れを見せるのは日本人だけであった。
胸につけている横書きの名札を見て、漢字の数の多いのは蒙古人、氏名の漢字が3つの時には漢族(漢民族ともいっていた。または真族だとか)作業中に大陸系民族の人種判別方法は覚えた。しかし、彼等異民族の顔を見ただけではどの種族の民族かは識別できなかった。
作業の取りかかりは同じでも、手より口しか動かさない日本人学生の1団は、大陸系民族よりはぐっと遅れてぼそぼそ後の方からついていっていた。
しかし、彼等の私達に示した態度は、さすが大陸の生んだ雄大な民族と今尚その感激は心に残っている。
かの1団は決して後を振り向いたり、催促したりするではなく、又作業をわざといそいで、その差を広げるという意地悪をするのでもない。
唯各人が、自分のペースで行くのである。
はっきり、日本人と彼等と差がついたのは、彼等の雄大さと共に、彼等が最後まで、さわやかに土に親しんでいる姿であった。
こせこせと鍬を動かしては、ため息とも、うめきともつかない声を発して、疲れ切り、しかも作業能率の悪い島国育ちの日本人の国民性との差であった。
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