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姉もちょっと恐ろしい。

姉は私より3歳年上で、3月生まれなので4学年離れている。
ある日突然言われた。
「あんたのことなんか、嫌いや」と。
ハッキリ、キッパリ言われた。
まあ、そうやろうね。知ってたけど。
姉は母の言う事をきかない妹が許せなかったのだ。
「あんたは、なんでお母ちゃんの言う事きかへんのよ!」とよく言っていた。
姉は母のように私に対して手をあげることはなかったものの、完璧に母の小型版だったので、姉に対してもまた飲み込んだ言葉はいっぱいあった。

姉に子どもができてからも、自分の子どもに対してまるで母そのものだった。
姉の子供のトイレトレーニングの最中に見た光景が、今でも忘れられない。
「おしっこ」を言えなかったと怒り、カワイイ小さなお尻を姉はスリッパで何度も何度も叩いていたのだ。子どもはもちろんギャン泣き。あとのフォローもなく、可哀想だった。そしてこう言ったのだ。「手で叩いたら手が痛いやん」。

私の子ども(長男)がまだ幼い頃の話。
その日は姉も私も子供を連れて実家に行っていた。
私たちが座って話をしていると、まずうちの息子が後ろからタタタタッとやってきて、「おかあさ〜ん」と言いながら私の背中に覆い被さってきた。私はとっさに息子の両腕をつかんで、おんぶするようにして前後に揺れてみた。
息子はケラケラ笑って喜んだ。それを見て姉の子も同じように姉に後ろから抱きついた。次の瞬間。「もうっ!」と言って、自分の息子を払いのけたのだ。
私は絶句した。

姉は息子一人。私は三人の息子たちがいる。
子供たちは年齢が近いと言う事もあって、みんな仲良しだった。
幼稚園や学校が休みに入ると、お互いの家に泊まりに行かせていた。
姉の子が泊まりに来た時の事。
うちでは寝る前に絵本の読み聞かせをしていた。子供たちは自分のお気に入りの本を持ってくる。姉の子にも持って来るように言った。姉の子が泊まりに来てるので、みんな中々寝ない。絵本もどんどん読み聞かせていく。
うちの子達は喜んでキャッキャとしているのに、姉の子をみるとあまり嬉しそうには見えなかった。これは辛い思いをさせてしまっているのかなと思った。本当は絵本を読んでもらうより、早く寝たかったのかもしれないと。もしそうだったら可哀想な事をしたなと思い、次の日に聞いてみた。
「おばちゃんとこ、いつもああやって寝る前に絵本読むねんけど、もしかしてイヤやった?」。姉の子はしばらく黙っていたが、急に大粒の涙をポロポロこぼして「おかあさんな…読んでくれへんもん…」そう言いながらポロポロ静かに泣いた。私は何て声をかければいいのかわからず、「そうなんや…」と言いながら背中をトントンと優しくたたくことしかできなかった。

姉の子は3月生まれだが、体は大きかった。
母が「男の子は丸坊主でええ」といつも言っていたからなのか、姉の子は中学になるまでずっと坊主頭だった。私も母からいつも同じように言われていたが、イヤだったので絶対子供たちを坊主頭にはしなかった。そんなところも姉が私を嫌うところだったのだけれど。
体格がよくて坊主頭。一見ヤンチャそうに見えたが、まったくの正反対だった。
優しかった。おとなしかった。だからこそ、姉にはもっと子どもの気持ちを慮ってほしかった。

姉は、恐ろしいほど母の小型版だった。



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