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完全挙手制の恋愛(4)

それはあまりに突然のことでした。ですが私には大したことに感じませんでした。その時大きな声がしました。私は振り向きました。でもでもそれじゃあまりにあまりにも不公平じゃありませんか。天秤にかけるのですか?私の人生を、あなたの天秤にかけるのですか。それでもいいそれでもいいと思えるような恋だった。だけど声が聞こえたのです。神様の声でしょうか。その時私は悟ったのです。あなたとの恋は全て宇宙服だった。凡人の私には全く無関係だけど、お近づきになるだけで、ステイサシー。そして身に纏う事ができたなら、あっ!いけないわ。これは私の細やかなる選民思想。

それは、聴きたくもないのに、駅前で路上ミュージシャンに出会い、そして聴きたくもないジャンルの聴きたくもない歌手の聴きたくもない曲を聴かされている時のようでした。しかしどうでしょう。

恋が愛に変わるときそれは最大級のハートになる。

HEARTって時のなかに、ARTって文字が入ってるでしょ?これはさ!きっとそういう事。オンガクはARTだからさ。ハートってきっと、愛の表現なんだよ。

それに、言葉も時代も超えてきた。愛の象徴。
シンボル。そう!きっとARTって、HEARTなんだ。

あの歌の一節とそのメロディが私の思い出のいわば、大きな代名詞となったのです。

「今までのお笑い芸人のなかで、1番面白い笑いをやります。」


ボケ孫次郎の舞台上での渾身の一言。

プレッシャーをかけるためのような

今日イチの乾いた拍手。浅草公会堂

屋内で、ジャジャぶりの雨みたいな音。

きっと即興のくだりだったんだろう。

「今までのお笑い芸人のなかで、1番面白い笑いをやります。」

ツッコミの相方は、孫次郎のその言葉に
見事なほどに、予定調和をくずされ

いきなりアガッちゃって

「ごごごっ、、ご苦労様っ」

ご・く・ろ・う・さ・ま ?

ってかみかみで舞台上で答える始末。

すると孫次郎は孫次郎で相方のステージ上でのアガりようにすっかり動揺しちゃって

「今までのお笑い芸人のなかで、1番面白い笑いをやります。」

慌てふためいて、カメラに慣れてないせいもあいまって

ピンマイク、ぷらーん ってなるし

いきなりギャグのオチをちらつかせてしまうし。踏んだり蹴ったりのチグハグ漫才。

お笑い芸人を目指す、夢追いヒトの日常。ひとりぼっちの監獄みたいな部屋。その中で卵焼きを作ろうとして、生卵を殻付きのまま電子レンジにいれたら大爆発する。って話から漫才が始まったって訳。

しきりに会場に向かって左側のエリアを気にして喋る。なんだか、かわいいお笑い芸人。

すっ!すると、その時。会場からひと声。

「お母さん、きたでーー」

播州なまりの関西弁。静まりきった会場。
ボケ担当のお母様が会場に来られてたんだろう。

まごつく、孫次郎。

足が震えているのが、こちらにも伝わってきたが
会場にキセキのような笑いが満ちた。

結果は10位入賞。いやー実に中途半端だ。
だけど自然体な笑いとってて、実に実に、お見事!

僕はトイレに行くふりして、3階席の関係者と芸人たちが座っている楽屋席に潜りこんだ。

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