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女狐(追記)

感情を失えば、どれほど人生は楽だろう。
お前は求めていたのか?

蝋人形になった俺とのSEXを

女にロボトミー手術を勧められたが、抵抗しきった。眼帯の上にアイスピックを差し込み、前頭葉の皺を切除するなんて、俺にはできない。

その手術は主に統合失調症の改善のためのものだった。

しかし1970年代にはあまりの悪評のため、事実上廃止、薬物治療がオーソドックスとなる。ロボトミー手術後に無気力無感情におちいる事もあり。

ケネディ大統領のじつの妹、ローズマリーもその被害者となった。ロージーというニックネームで親しまれ、愛されていた彼女だが、思春期に落ち入りガチな心的外傷による疾患。そして精神科にかかるようになる。

ロージーの父親は、精神病に対して無知だった。ただスムーズな改善を願い、ロボトミー手術を決行。以前は多感な女性だったが、術後、その女は変わり果てた。時折り絞り出すような声。その会話は永久の迷路。

支離滅裂。心変わりどころか、心を失った。そしてベッドから動けなくなるほど、衰弱した。

ローズマリーは、後の生涯を、精神病院で送った。

ノーベル生理学・医学賞を受賞した

ロボトミー手術の発起人

【エガス・モニス】を襲撃した犯人の擁護を俺はできない。自分の患者に銃撃されて脊髄を損傷し、モニスは事件後、後遺症で車椅子生活になったからだ。

しかし、もし俺がロボトミー手術を受けて、術後、ロボトミーの呪いに苦しむ立場なら、モニスの殺害を企だてたかもしれない。

いやきっと殺っていただろう。

もしも、ロボトミー手術を受けたものだけが暮らすことができる理想の街があるなら。

そこはきっと、地上の天国
-alphaville-

今でもなお、ロボトミー手術の発起人として名声を勝ち得たモニスのノーベル賞受賞の取り消しを求めるデモが起きている。

この世界のどこかで


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