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オトト と ワタシ の話し -2

蝦蛄シャコで白米は 進みません! 編〜


実父の趣味の一つに 「海釣り」 がありました。
港から遠く沖に出て 船の上から糸を垂らし 時には 数百メートルも深くまで餌を付けて沈めるほど 本格的なものでした。

出発は毎回朝早く 夜中の2時や3時…。小学生だった私は ゴソゴソと支度をする音で目が覚めて「いいなぁ大人は。こんな夜中から 遊びに行くのか。コッチは明日も学校だよ」と不満を抱きつつ 再び夢の中へ。

次の日 私が学校から帰ってくる頃には 父親がお魚達と共に帰って来るのが 恒例になっていました。


しかし ある時 いつもより早く帰宅していたらしい父親が母親と 台所で何やら作業をしていました。

魚を捌くのは 結構汚れることがあるため いつもは 外流しを使っているのに この日は珍しく台所で作業をしています。なぜだろう…。不思議に思い手元を見ると 魚ではない 何者かの 体の一部分を 大量にハサミで パチンパチン ジョリジョリ と切り落としていました。

… 魚じゃない?

…嫌な予感しか しません。


父親「おぉ〜お帰り。ちょっと手伝ってくれよ。」


「ちょっと」で無いことは 私には一目瞭然でした。
だって 家にある 一番大きな両手鍋の中に こんもり とみたこともない 「海老とカマキリを 足して2で割ったみたいな生きもの」が茹で上がっていたからです。

 (勘弁してくれ…)

嫌だと言えない 哀しい性分の私。

恐る恐る近づいて 母親の背後からそっと見ると やっぱり 「海老とカマキリを 足して2で割ったみたいな生きもの」がザルの上に 山の様に茹で上がっているのです。
その横には 大皿の上に 平らになって身だけにされた
「元・海老とカマキリを 足して2で割ったみたいな生きもの」達がズラ〜っと並んでいます。

どんだけいるの…コレ。
って言うか 何コレ…。
魚釣りに行ったんだよねぇ …。


いろいろな疑問と納得できてない私の心のウチを 知ってか知らずか 父は(言い訳) 説明をするのでした。


「今日は波が高くてさ 陸地はお天気が良かったんだけど 海の上は 釣りには向いてなかったんだよ。釣ろうと思ったお魚は み〜んな深い所で休んでて 釣れなかったの。だからね 船長さんが お魚の代わりにコレをどうぞって クーラーボックスいっぱいにくれたの。
お寿司屋さんで食べたら高級品なんだぞぉ〜。
蝦蛄シャコって言うんだよ。」


いや それは置いておいて どうすんの この 量。
売る気か?

横目で手伝っている母親をチラリ伺えば ウンザリしている様にも 見えなくも なくも ない…。
そりゃ そうだ。 
だって 直径40くらいの両手鍋で何回も何回も茹でる程の 蝦蛄だもん。

やったな オヤジ。


ココは 黙って手伝うか…。
しかし 蝦蛄と言う名前が分かったと言ったって なぜ
こんなに クーラーボックスいっぱいの量を貰ってきたか…。
訳を説明されたとしても 気味の悪い姿形は
変わらんのだよ!私はか弱き 女子である!
高級品だとて 形はグロテスクなんだよ!
そして 茹でると 紫とは どう言うことか⁈


3人で奮闘すること数時間__

無事に全ての蝦蛄は茹でられ 紫色に変色した所で
夕飯の時間になるのでした。
そうです。今晩のおかずは 蝦蛄。
白いご飯に 蝦蛄。
ワサビを溶いたお醤油に 蝦蛄。
美味しいですね。 
(最初は)


あの グロテスクな お姿は ちょっとだけ記憶の彼方へ 飛んでいってもらいましょう。

でもそれも束の間。

5〜6匹も食べれば充分です。

私はもうこの日 一生分の蝦蛄の茹でた物を 頂きました。

ハサミで捌きました。

ご馳走様でした。

もう 充分頂きましたので どんなに新鮮ですとか 形が良いですとか言われても もうご馳走様です と言わせて頂く所存です。

大変 美味しゅうございました。
ご馳走様でした 蝦蛄さん。

今後は 水族館でお会いしましょう。



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