夏でも子供に頭を洗わせない人
私のまわりに、夏でも子供に頭を洗わせないという不思議な人がいる。いや、私にとっては不思議なだけで、いたって普通のことなのかもしれない。
どんなに汗をかいていても、その日は洗わせないと決めた日は、何が何でも湯で流すことすら許さないのだ。
その子どもは、子どもどうしのお泊まり会において、私の目の前で他の子どもと汗だくになるまで暴れまくったあと、母親に絶対に頭を洗うなときつく忠告をうけ、髪を編んだまま風呂に入り、体だけを洗って出てくるのだ。
そうすることに何かメリットがあるのだろうか。そして汗をかいたままの頭で、髪をとかすこともなく、よそのお宅の布団で眠るのだ。
実は私はシャンプーを使わず湯だけで洗髪をするという“湯シャン”経験者であり、シャンプーによる頭皮への刺激が強すぎることには理解があるつもりなのだ。
私の考えはこうだ。髪の毛にはたくさんのゴミやウイルスが絡みついており、衛生的に考えて、櫛でとかして付着物をとることは必須である。さらに汗を流すためにはやはり湯が必要である。
真冬であまり汗をかかずどこにも出かけなかった日は風呂に入らなくてもよいかと思う。肉体的精神的にくたびれて入られないときもあるだろう。誰にだって仕方のないときはあるものだ。しかしその人は目的を持って絶対に洗わないことにしている様子なのだ。理由を聞いたこともあるが、“毎日洗わなくたっていい”と言うだけである。確かにそうかもしれない。
他にもその人について私には不思議なことがある。枕カバーを一度も洗ったことがないらしい。ちなみにシーツもだそうだ。干したこともないらしい。
ここまでくると不衛生極まりないようにも思えるのだが、そうでもないのだろうか。自分の中の基準が揺らぐ。
しかしさらに不思議なことに、この人は自分を無類のキレイ好きだという。毎朝5時に起き、家中を掃除するそうだ。猫を愛してやまないこの人は、子どもがアレルギー体質でアトピーや喘息を持っているのだが猫を飼うことを諦められず、そのかわり毎朝家中を掃除し、子どもが出かけてからは布団にも掃除機をかけているらしい。確かにとてもキレイ好きに思える。一日中掃除をすることと猫を愛でることで忙しく、働きに出る暇もないらしい。
夏に汗をかいた頭を洗わない、キレイ好きの人の話。私にとって、どうしても矛盾を抱かずにはいられない話である。