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食用コオロギビジネスってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第十九回)感情論がエシカル消費の障害になる?

今回は前回のスピンオフネタです

前回のお話は、環境や社会に配慮したビジネスモデルがサステナブルになるためには、最終需要者である消費者が「エシカル消費」を意識して行動することが必要ですが、残念ながら日本では認知度が低く、コスト高を受け入れてもらえるためには、まだ啓蒙や関連する企業の努力が必要なのでは?というものでした。今回はこれまでの順番で行くとワインの話になるのですが、もう少し調べてから書きたいネタなので、前回のスピンオフネタで短めのお話をさせてください。
エシカル消費ってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~|わこさん

人口増加に対して動物性たんぱく質の供給をどう増やすのか

世界の人口増加はまだしばらく続き、生活水準がそれなりに上がっていくことを考えたとき、どうやってタンパク質の供給を増やすか、というのは非常に大きな問題です。しかも地球温暖化を避けるための脱炭素に貢献しながら供給増に取り組まなきゃいけません。食肉の生産を増やすのは、餌代、水代がかかりますし、育てる間に牛君はゲップゲップして地球温暖化効果の高いメタンガスを大量供給してくれます。それだけの環境負荷をかけて動物性たんぱく質の供給をしていくのはいかがなものか、という話にもなります。

一時期注目された食用コオロギ養殖、最近見なくなりません?

そうした問題に対処するのに効果的と考えられているものの一つが、昆虫です。その中でも食用コオロギの養殖が一時期注目されました。コオロギの粉末を練り込んだせんべいを無印良品で売ってるのを見たことがある方もいらっしゃると思います。自分が最近見ていないので、終売かな、と思って調べたら、まだ販売はしているんですね。コオロギせんべい | 無印良品

食用コオロギは、高たんぱくで環境負荷が小さい。
可食部1㎏を生産するための環境負荷について、いろんなデータをまとめてみると

ワード上で表を作って貼ろうとしたらnoteには表で貼り付けられないみたいです。まだ使い方のわからないことがいろいろ

なんですって。(すみません、出典は確認してませんが、大体こんな感じの数字が飛び交ってます)

まず嫌悪感が障害なんでしょうね

こんなスーパーフード、なんで広がらないのか?
もちろん、受け入れてもらえない理由があるからです。
なんといっても昆虫に対する嫌悪感。見た目は確かにグロテスク。ゴキブリなどを連想して見た目の嫌悪感はありますよね。それから食感。コオロギの脚とか口の中に刺さりそうですよね。あと、天然の昆虫が生息する環境は必ずしも清潔なところではないので、衛生面で懸念する人はいそうです。

使えないわけじゃないと思うのですが…

ただ、このあたりについては、清潔な環境で養殖したものを粉末にして煮干し粉のように使うのであれば、料理や飼料の素材として十分に使えそうだと思いませんか?食感についても、てんぷら屋で海老の足揚げてもらって食べたり、居酒屋で川エビの唐揚げとか食べたりしてるので、許容範囲にはならないのかな?こう書くと、「嫌悪感を持つ人の感情に配慮が足りない」といって炎上事案につながりかねないわけですが。

アレルギーについての研究は不十分なところがありそうです

まじめな話をすると、まだ研究が十分ではない部分もあります。それがアレルギーです。エビ・カニのような甲殻類に対するアレルギーを持つ人がいます。同様のトロポミオシンというアレルゲンとなるたんぱく質がコオロギに含まれているため、注意が必要との指摘もあります。もしかするとほかの成分もあるのかもしれません。ここの研究が十分でないうちに商品化して大量に販売してよいのか?という点は確かにあります。甲殻類のように特定原材料指定とかはした方がいいのかもしれません。

今年出会った考えさせられる話

でも今年、ちょっとここまではどうなんだろう…と考えさせられる話がありました。
徳島大学発のベンチャー企業で食用コオロギの養殖に取り組んでいた「グリラス」という会社が11月に破産しました。同社は、徳島県内の高校からエシカル教育の一環として依頼されたため、2022年にコオロギ粉末を給食のコロッケの材料として提供、これを希望者のみが食べたとのことです。その後これが「強制だ」と捻じ曲げられた上に、食品の安全性に対する不正確な引用を根拠に炎上して、ビジネス環境が悪化してしまったとのことです。

古い情報を基に危険性を指摘したツイートが炎上の追い風に

とくに、某国会議員(当時)が、「内閣府食品安全委員会が2018年にコオロギ食の危険性を指摘していた」とツイートしたことが炎上の追い風になりました。実際のところ、この話は2013年に欧州食品安全機関(EFSA)で出た話を引用しただけで、しかもEFSAは2021年に安全上の懸念はないとしたうえで2022年に「ヨーロッパイエコオロギをアレルギーの可能性に関する適切な表示をすることを前提として、当該昆虫を新食品としてEU域内に市場投入することを認可」しています。騒ぎになったのはこの後です。

感情論を忖度する動き(?)でビジネス環境悪化?

根拠薄弱な炎上は触らず放置するのが一番なので、同社は放置して炎上自体は短期で沈静化したのですが、炎上したことを懸念した某コンビニが商品化を断念するなど、感情論を忖度する動き(?)が出てビジネス環境が悪化したようです(もちろん、この件だけではないようですが)。このコンビニの後ろにいる商社のESGへの取り組みの肚の座り方を疑っちゃいますよね。

文化の一部になっているともいえる昆虫食ですが…

昆虫食が感情として受け入れられない、というのは個々の考えですからそれについてどうこう言うつもりはありません。ただ、日本でも珍味として食べる地域がある(私も蜂の子とかイナゴとか美味しくいただきました)し、FAO(国連食糧農業機関)によると世界でも20億人の食生活の一部となっているとのことです。こうなると、ゲテモノ食いとか飢餓対策とかいう以上に文化の一部ですよね。
昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献
それを応用した形のビジネスの芽を(意図したわけではないとしても)潰してしまうというのは、複雑な思いがします。牛や鶏は食べるけど捕鯨はイカンというダブルスタンダードと通じる印象もあります。

エシカル消費の啓蒙を進めるときに感情論と折り合いをつけることが必要なケースもある、という大事な教訓

ちょっと脱線気味になりましたが、エシカル消費の啓蒙を進めていくときに、こういった感情論と折り合いをつけることが必要になるケースもある、というのはとても大事な教訓だと思います。牛の話でいうと、牛の呼気に含まれる温暖化ガスを削減しようと思ったら、牛を飼うべきではない、みんなベジタリアンになろうぜ!!っていう話とつながってくることもあるわけです。

それでも、養殖コオロギビジネスをサステナブルにしようとするか、注目

そんなこんなあっても、やっぱり地球のため、環境のためにサステナブルなたんぱく源として昆虫を利用して、まずは感情的な抵抗感の出にくい家畜や魚類などの飼料として使うところから始め、利益の出るサステナブルなビジネスにしていこう、という動きが復活していくのか、注目しています。

感情が先走ると、問題の切り分けもできなくなるかもしれない

ちなみに、コオロギ養殖を批判した元国会議員のツイートの中に、「そんなことよりフードロス対策の方が重要だ」という話もありましたが、食品のバリューチェーンの上流部分(供給段階)での効率的なたんぱく質供給の議論と下流部分(需給バランスの結果)での余剰分をどう削減するかという議論が混同されています。感情が先走るとこういう切り分けができなくなってしまう、というのも自戒を込めて挙げておきたいと思います。

イチゴのクリスマスケーキをシャンパーニュとペアリングしてみてください

やばい、ワインの話が全く出てこない(笑)。クリスマスに生クリームを使ったイチゴのケーキをお召し上がりになるのでしたら、是非シャンパーニュとのペアリングをお試しください。イチゴの酸味とフルーツの甘み、生クリームの乳製品のうまみとスポンジケーキの小麦粉が発酵して焼かれた香ばしさが、シャンパーニュの(特にピノ・ノワールの)果実感からくる味わい、乳酸発酵由来のミルキーさ、そして熟成からくるやや香ばしい味わいや香りと上手~くマッチングします。

Copilot にクリスマスディナーのテーブルにイチゴのケーキとスパークリングワインを乗せた絵を作って、と頼んだら…ローストチキンが(笑)

今回のカバー画像は、またまたCopilotです。コオロギが世界の食糧危機を救うという絵が欲しい、とプロンプトしたら出てきました。やっぱり見た目は…ですね。

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