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クローズドモデルの生成AIってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~
(第二十五回)DeepSeek騒ぎで思い出す昔話と企業を見る視点
前回はブレンドって難しい!!という実体験報告
前回は、シャトー・メルシャンの勝沼ワイナリーで、会員限定ブレンド体験に参加して、3つの産地で作られたワインからイメージ通りのブレンドワインを作るのが難しいことを実感した、というお話をさせていただきました。特に、時間を置いた後に出てくる香りなどの要素を最初のテイスティングだけで整理することがとても難しい、ということを実感してきました。わこさんブレンドのワインってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~|わこさん
今回の話は元ストラテジストが企業・産業を考えるときの雑感
今回は、思いっきりワインと関係ない話に振り切ります。私はガチ文系で、テクノロジー系の話をきちんと理解しているわけではないので、今日の話はちょっと頭でっかち系(観念先行)になるかもしれません。ただ、最近起きている話が、以前株のストラテジストなんてのをやっていた時に感じていた話とつながっている印象があるので、企業・産業の栄枯盛衰についての雑感みたいな話としてお読みください。
中国のDeepSeekの生成AIが話題になってます
最近DeepSeekという中国の企業が高性能の生成AIを開発した!!という話が話題に上っています。この生成AIは、中国に対して輸出規制されている、値段が高くて高性能で最先端の半導体を使わず、しかも深層学習のプロセスをすっ飛ばして、ChatGPTなどと同等の機能を備えるようになった、ということです。
株式市場では「DeepSeekショック」
この話を受けて、ハード面では、生成AIに不可欠なエヌビディアの高性能半導体の今後の売り上げ(成長)ストーリーに陰りが出るのではないか、ということで同社の株価が急落しました。さらに、生成AIが作業を行う際に行う、データ探しも含めた膨大な計算を行う必要がない、ということでデータセンター関連の会社や電力会社の株価も急落しました。一方、そんなにお金かけなくても生成AIの開発ができるんだ、ということで生成AIに取り組むソフトウェアや生成AIを使ったサービスを拡大しようとするユーザー側の株価が上昇しました。
どこかでハード関連需要の曲がり角はあって当然
生成AIについては、最終的にはそれでどうやってビジネスにする(=金稼ぐ)かということが重要ですから、どこかでソフト関連の需要がハード関連の需要を上回ることになるだろう、というのは想定できたわけですが、それが中国企業から出てきちゃったことがちょっとショックだという方はいるんでしょうね。
オープンソースの会社が伸してきた
ただ、とても重要だと思うのは、生成AIの開発にあたって、ソースコード(簡単に言えばプログラムですね)を公開しているオープンソースの会社(メタとかです)のデータを使って、要は良いとこ取りして(「蒸留」などという言葉も出てましたね)途中の試行錯誤とかを含む深層学習の過程を減らしているということです。
それが利用規約に違反しているとかしてないとかいろいろ言われてますが、すべてを剽窃したわけではなく、計算過程を減らして使用電力も減らして、先行者に追いつくことができたわけです。この時に、オープンソース、つまり誰でもアクセスできる形にしたプログラムが使われた、というのがとても興味深いのです。
ChatGPTはクローズドソース
それに対してオープンAIのChatGPTやGoogleのGeminiといった生成AIは、ソースコードが公開されていないクローズドソースの形で開発が進められているもので、閉じられた開発チームが巨額の費用をかけて頭の良い人たちを集めて開発を進めているということです。
それぞれのメリット、デメリットについては、
オープンソースAIについては
メリット:透明性が高い、コミュニティ主導でバグ修正や開発が進む、カスタマイズしやすい、コストがかからない
デメリット:品質管理の保証が難しい、セキュリティーの保証がない
クローズドソースAIについては
メリット:独自技術・知的財産の保護がしやすい、不正アクセスやコピーのリスクが防止しやすい、ベンダーが品質保証やアップデート、サポートをしてくれるケースが多い
デメリット:ブラックボックスになっていてベンダーへの依存度が高い、カスタマイズしにくい、コストが高くなりやすい
などが挙げられますが、一方のメリットが他方のデメリットになっている感じですよね。これから先の展開、どうなるんでしょうか?
オープン対クローズド、はいろんな場面でみてきた気がします
で、ここからが本題の雑感です。この、オープン対クローズド、ってのは、ソース/モデル/システム/アーキテクチャ等々、いろんな言葉がつくんですが、これまでもいろんな次元で起きてきているんじゃないかな、と思います。これまで、株式市場とお付き合いしてきた中で、似たような状況には何度か出会ってきました。
昔話の始まり。日本株と言えばこの会社、ということがありました
20世紀の終わり頃、とっても素晴らしいオーディオ・ヴィジュアル製品を作って、それを中心に携帯電話などを作っていた日本の会社がありました(S社とします。今もそのお名前の会社はありますが稼ぎ方は全然違います)。猿にヘッドホン着けたCM作ったりしてました。で、この頃、海外の投資家さんとかに日本株の話をしに行ったときには、「日本経済はバブル崩壊で沈没してるんだから、日本株なんかこの銘柄だけ持ってりゃ良いんだ」なんておっしゃる海外投資家さんもいらっしゃいました。
画期的だった「メモリースティック」
ある時、このS社さん、「メモリースティック」というフラッシュメモリーを使った記憶媒体を作って、S社をはじめとするこの規格に乗った製品であればデジカメだろうが携帯電話だろうがオーディオだろうが、統一規格でデータの保存や交換ができる仕組みを始めました。当時はこれ、画期的だったんです。
一つの記憶媒体で家中のAV製品や携帯電話が統一できる?
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