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理学療法士が教える「脳卒中」とは?
1. 脳卒中とは
脳卒中とは、脳の血管が詰まる、または破れることで、脳に酸素や栄養が届かなくなり、脳細胞がダメージを受ける疾患。日本では三大死因の一つであり、寝たきりの原因としても最も多い病気の一つ。
早期発見と適切なリハビリが機能回復の鍵となる。
2. 脳卒中の種類
脳卒中は大きく3つのタイプに分類される。
① 脳梗塞(のうこうそく)
特徴
脳の血管が詰まり、血流が途絶えることで発症する。脳卒中の約**70%**を占め、最も多いタイプ。
原因
• 動脈硬化(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
• 心房細動(心臓の不整脈によって血栓ができ、脳の血管に詰まる)
• 脱水(血液がドロドロになり血管が詰まりやすくなる)
症状
• 片側の麻痺(手足が動かない・力が入らない)
• 言葉が出にくい・理解できない(失語症)
• 感覚障害(しびれ・鈍感)
• めまい・ふらつき
• 視野障害(片側が見えにくくなる)
治療
• t-PA(血栓溶解療法):発症から4.5時間以内に投与できれば、血栓を溶かし症状の改善が期待できる。
• カテーテル治療:血管内にカテーテルを挿入し、詰まった血栓を除去する。
② 脳出血(のうしゅっけつ)
特徴
脳の血管が破れて出血し、脳組織を圧迫することで発症。**脳卒中の約20%**を占める。
原因
• 高血圧(最も大きな原因)
• 過度な飲酒
• ストレス
• 動脈硬化
症状
• 突然の意識障害
• 強い頭痛
• 片側の手足の麻痺
• ろれつが回らない
• 嘔吐
治療
• 血圧管理(降圧薬)
• 外科手術(血腫除去術)
• リハビリによる機能回復訓練
③ くも膜下出血
特徴
脳動脈瘤が破裂し、くも膜下腔(脳を覆う膜の間)に出血が広がる。発症すると致死率が高く、後遺症が重いことが多い。
原因
• 脳動脈瘤(血管のこぶ)の破裂
• 喫煙
• 遺伝的要因
症状
• 突然の激しい頭痛(「バットで殴られたような痛み」と表現される)
• 意識消失
• 嘔吐
• けいれん発作
治療
• 脳動脈瘤クリッピング手術
• コイル塞栓術
• 血圧管理
3. 脳卒中の後遺症
脳卒中の後遺症は発症部位や重症度によって異なる。
① 運動障害(片麻痺)
• 体の片側(右脳損傷なら左側、左脳損傷なら右側)が動かなくなる
• 筋力低下・麻痺・痙縮(筋肉のこわばり)
• 歩行障害や転倒リスクが高まる
② 言語障害(失語症)
• 言葉がうまく出せない(ブローカ失語)
• 言葉を理解しにくい(ウェルニッケ失語)
③ 高次脳機能障害
• 記憶力低下、注意力低下、感情のコントロールが難しくなる
• 半側空間無視(右脳損傷で左側が認識できなくなる)
④ 感覚障害
• しびれや感覚の鈍化
• 深部感覚の低下によるバランス不良
⑤ 嚥下障害
• 飲み込みの力が低下し、誤嚥性肺炎のリスクが高まる
4. 理学療法士によるリハビリ
① 急性期リハビリ
• 早期離床(ベッド上での座位訓練)
• 拘縮予防(関節可動域訓練)
• 呼吸リハビリ(誤嚥性肺炎予防)
② 回復期リハビリ
• 歩行訓練(杖や装具を使用)
• 筋力トレーニング
• バランス訓練
• 手のリハビリ(リーチ動作やつかむ動作の訓練)
③ 生活期リハビリ
• 在宅復帰に向けた自主トレ指導
• 日常動作(料理・着替え・階段昇降など)の練習
• 外出訓練や職場復帰のサポート
5. 脳卒中の予防
脳卒中は生活習慣の改善によって予防できる。
• 高血圧の管理(減塩、適度な運動)
• 糖尿病・脂質異常症の改善(バランスの取れた食事)
• 禁煙・節酒
• 運動習慣をつける(1日30分のウォーキング)
• ストレスを溜めない(自律神経を整える)
6. まとめ
脳卒中は突然発症し、片麻痺・言語障害・認知障害など重い後遺症を残すことが多い。しかし、適切なリハビリを行えば、機能回復の可能性は十分ある。
理学療法士は、発症直後の離床から歩行訓練、生活動作の回復までサポートし、社会復帰を目指す。また、脳卒中は予防が最も大事な病気であり、生活習慣を整えることが発症リスクを下げる鍵となる。