授業参観
それは忘れもしない、小学生の頃の話。
私の通っていた小学校は最初から男女ともに同じ幼稚園だったグループが完全に出来上がっていたので、入学と同時に引っ越してきた私はなかなか馴染めずにいた。
当時の私はめちゃめちゃに人見知りだったので(今はかなり直ってきた)、毎日中心人物だった男子に「お前本当に口あるのかよ!喋ってみろよ!」と言われていたのだった。女子が「あんにんが泣いてるでしょ!やめなさいよ!」と怒ることまでがテンプレだった。
そんな学校生活を送っているうちに、とうとう授業参観がやってきた。
入学したての小学生にとっては親に頑張りを伝えられる初めての日。みんな心なしか張り切っていた。
「みんなは数を数えることができるかな?」
先生がりんごの描かれた画用紙を掲げながら言う。クラスメイトはそんなの簡単だよ!できるできる!あたりまえじゃん!と口々に言っていた。
「じゃあいきますよ、これはー?」「ひとーつ!」
「これはー?」「ふたーつ!」
「みーっつ!」「よーっつ!」
なかなか順調。みんなこんなの楽勝だ、と思っていただろう。しかし、その時はすぐにやってきた。
「これはー?」先生が問いかける。すると…
「「「ごーっつ!!!!!!!!!」」」
目を丸くする先生。何が起きたのかわからず周りをキョロキョロするクラスメイト達。親御さん方は大爆笑。
「…みんな、もう一回いくよ、これはー?」
「ごーっつ!!」
またもや爆笑の嵐。毎日いじめてきたあいつでさえ大口開けたアホ面でごっつごっつ言っている。ばーか。ざまあみろ。
そんなこんなで初めての授業参観は幕を閉じた。後で母が教えてくれたのだが、帰りはごっつの話題で持ちきりだったらしい。そりゃそうだ。
中学に進学したら初っ端から中心人物だったあいつと同じクラスになったが、奴は小学校入学当初のことなんて微塵も覚えていなかったようで、良好な関係を築くことができた。よかった。
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