古時計とSLの写真が家からなくなった話
土曜日に古時計を直して持ち主に喜んでもらう番組企画を見た。
持ち主の女性の発する言葉ひとつひとつが私が以前思っていたこととまるっきり同じで、思い入れの強い時計が手元にあることがとても羨ましかった。
私の祖父母の家にもあったボンボン時計。
いずれは初孫の私がもらうはずだった。
ところが私の知らない間に、両親が空き家になった祖父母宅の片づけを業者にカギを預けて依頼したら、家じゅうの古道具をついでに持っていかれてしまったのだ。
金品などはないし、盗られて困るものはない。
でも、業者が片付けた後数か月たって私が祖父母宅に入り、すぐ異変に気付いた。
ボンボン時計がない
大きな額装されたD51の写真がない
すぐ親に電話をして、時計と写真まで処分の依頼をしたのかと半ギレ状態で確認したら、それは頼んでないと。事前に片づけて50袋ぐらいたまったゴミ袋を一室に集めておいたから、それだけ持って行ってと頼んだだけだと。
でも、
「どうせみんなごみなんだから、仮に持っていかれてしまったとしてもいいじゃない」
と母親に言われて、幼少期から埋まらない溝を40過ぎて改めて感じた。
家庭不和のジャンルで機能不全家族だったのではないかなと今頃だけども振り返って思う。
家庭不和の原因を作ったのは実は祖父母だったのだけれども、小さい頃の私は、本気になって私とかけっこをしてくれた祖父が大好きだったし、眠れないといえば眠りにつくまで体をさすってくれた祖母が大好きだった。
実の父と母に、そんなことをしてもらったことはない。
子供と本気で遊ぶなんて馬鹿らしいという態度をとり続けた父。
あなたの悩みなんて私の悩みに比べたら大したことないと、あしらい続けた母。
ボンボン時計や写真をはじめ、あの家にある数々のものの存在が私の中でどういうものだったのか。
父と母にわかるわけがない。
今更わかってほしかったと言ったところでという感じ。
そういう思いが、実は古物商になって古いものを仕入れることになる心理的な要因だと自己分析している。
業者が盗んだ証拠もないし、月日が経過しすぎだし、大騒ぎしているのが私だけなので、涙を飲むのも私だけ。
古時計が古物市場で流れてくると、もしかしたら祖父母の家のものではないかとあちこちチェックしてしまうが、それらしきものに出会ったことはまだない。
仮にもし出会ってしまったら、それは盗品になるので大問題になるし出会ってはいけないのだけれども・・・・。
みなさんの長年空き家になっているご実家や、おじいちゃんおばあちゃんの家、大丈夫ですか?
貴重品はないから仮に泥棒に入られたって・・・なんてよく言う人がいますが、貴金属や高価なものだけが狙われているというわけではないのです。
予期しないタイミングで思い出の品が突然消えてしまうこともあります。
古い物は、今同じものが手軽に買えないというだけで価値がありますが、それだけではなくて、物からうかがえる製造過程や時代背景も含めての価値もあります。
紙一枚でも丸めてしまえばただのごみですが、探している人からしたらお宝なのです。
思い入れがあるものが自宅離れた実家などにある場合は、大きくても小さくてもなるべく早く手元に持ってきたほうがいい。
音を聞く、眺める、触れる。
それだけで心が揺さぶられる物は、今のあなたの生活には必要のない物でも、あなたの心が欲しがっていると思います。