乳がんにおける腫瘍マーカー
下記のオープンセミナーに参加してきました。
日 時 : 2018年9月12日(水)
場 所 : 国立がん研究センター
テーマ : 「がん検診を正しく知ろう」~がん検診の良いところ、悪いところ~
講 師 : 中山富雄(社会と健康研究センター検診研究部 部長)
講演内容はがん研のHPにも載ると思いますので、記載されたらリンクを貼りますね。
その中で、乳がん患者誰しもが気にしている腫瘍マーカーについて、がん検診の観点から触れられていましたので、中山先生にご質問した内容と私なりの見解を含めご紹介します。
病院によって対応はまちまちのようですが、トリネガの私は最後の放射線治療の後、3ヶ月に一度のペースで大学病院と連携している近所のブレストクリニックに通うよう指導を受けました。
ブレストクリニックでは問診、超音波の他に血液検査をしていました。治療後血液検査を行う本来の目的は、化学療法によって受けた肝機能や骨髄等、ダメージの回復チェックのようです。ただ、乳がんサバイバーが一番恐れているのは再発転移。乳がんは再発転移しやすい癌だからです。医師から腫瘍マーカーの測定の有無を尋ねられたので、「そりゃ測ったほうがいいよね。」と、あまり深く考えることなく毎回を調べていました。数回続けたところで3ヶ月ごとの検診自体実施する意味を見出せずやめてしまうのですが、これはまた別の機会に書きます。
腫瘍マーカーは健康な人でも必ずなんらしかの値が出ます。さらに毎回数値が上下するのは当たり前のことで、前回より数値が上がったから下がったからと、中性脂肪や血糖値のように一喜一憂するは何の意味もないこと。さらに、腫瘍マーカーの値から再発転移を疑うのは正常とされる数値から一桁二桁多い場合です。
また、乳がんに検出力のある腫瘍マーカーには、CEA、CA15-3、BCA225、NCC-ST-439、C-erb82等々、たくさんの種類がありますが、私が調べていたのはこの中の2種類のみでした。
腫瘍マーカーにおけるがんの検出力はおよそ30%くらい(100人のがん患者さんに腫瘍マーカーの検査をして異常値を示すのは30人ほど)だといいます。肺がん関連腫瘍マーカー(cyfra21-1)では、特異度は94.9%である(残りの5.1%の人はがんでもないのに異常値を検出されがんの疑いをかけられる)そうです。偽陽性の診断は、がんの疑いが晴れるまで「がんかも知れない」と思う日々が続くわけで、無駄な精神的負担を追うことになります。
つまり、今の時点では、腫瘍マーカーの異常値からがんを早期発見するには精度が低いものと考えます。ざっくばらんに言えば、腫瘍マーカーが正常値でも再発している可能性はあるし、ちょっと高いからと言って再発しているとは限らない。
また、次のようなエビデンスもあります。
「乳がんの腫瘍マーカーは,再発したり全身に広がった乳がんに対して,治療が効いたかどうかを判断するために,よい指標となることがあります。」
「一方,腫瘍マーカーは,乳がん手術後の再発をチェックする目的にはあまり役に立ちません。」
「手術後に腫瘍マーカーを測定し,再発を早期に診断できたとしても,その後の生存期間,QOL(生活の質)には変わりがないことがさまざまな研究で明らかになっています。」
日本乳癌学会『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』より
中山先生ご質問したところ、術後腫瘍マーカーが高い数値を示すのは主に遠隔転移を起こしている場合だそうです。つまり全身に乳がんが広がっていることを示す。樹木希林さんがおっしゃってた『全身がん』、医学的に言えば乳がんなんでしょうけど、再発転移した時点でほんとその名の通りです。
さらに3つ目に挙げた、「再発を早期に診断できたとしても、その後の生存期間、QOLが変わりわない」というエビデンス。抗がん剤をエンドレスに投与し続けても劇的な延命は望めず、再度脱毛や体の不調という副作用と闘い続けるのは著しくQOLを下げる、ということじゃないかと思うのですが、具体的な記述はないので掘り下げて調べたいと思っています。
腫瘍マーカーの測定は再発転移の早期発見には必ずしも繋がらないこと。
再発転移の早期発見が、延命にもQOLにもあまり効果がないこと。
以上の二点から、私自身は寛解していますので、腫瘍マーカーの測定は年に一度くらいで十分だと感じました。マンモや超音波に加え一応測定しておけば転移の発見には繋がるかも、くらいの感覚です。
日本人は血液検査が大好きですし、一定の項目を調べることで保険の点数がどうこう、色々医療機関側にも理由はあるようですけど、無駄な検査は健康保険制度を圧迫します。さらに数値の上下が再発転移とは無関係と理解していても、精神衛生上あまり良いものと思えません。
無駄な検査にかけるお金は、友達とのお出かけや美味しい食事に使いたいものです。
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