スーパーのエビの原産国が物語る日本の矛盾
スーパーに買出しに行くと、時々、バナメイエビとブラックタイガーの原産国をチェックしています。
幾多の海産物の中でも、この二種類のエビは海ではなく「水田」で育てられます。
そのため、その養殖は農業的性格が、そして、その出荷は軽工業的性格が強く、アパレル産業と似た労働集約型の産業であり、「田んぼエビ」は、わが国の輸入商社の開発輸入の格好のターゲットとして、日本全国に流通しているからです。
二種類のエビの原産国は、以前はベトナム、タイ、インドが主でしたが、近年はスリランカ、バングラデシュ、ミャンマー産も増え、エクアドル産もあって、まるでGUやH&Mの安い服のようです。
スーパーの倉庫に搬入されるパレットとその納品書には、HLSO、HOSO、IQFとエビの仕様を示す独特の用語が記載され、その意味はHLSO(Head Less, Shell On:頭なし殻付き)、HOSO(Head On Shell On:頭・殻付き)、IQF(Individual Quick Frozen:個別急速冷凍)で、つまり「産地で済ませた加工形態」のことです。
日本人は特に「時短」が好きで、忙しいからそうなのか、能率的だからそうなのかは分かりませんが、海産物の中でも一次処理や加工が特に面倒な甲殻類は、生鮮であろうが冷凍チャーハンであろうが、まるで木材の「プレカット」のように、産地の製造ラインで現地の人たちに頭や殻を外してもらってから、日本向けに出荷されています。
私は数年前、タイ南部でブラックタイガーの「田んぼ」に病気が発生して巨額の損失を抱えたタイ企業の経営者に合ったことがあり、「タイより人件費が安いミャンマー、バングラデシュ産のブラックタイガーに価格競争力で負けないため、安価で品質が怪しい抗生物質とホルモン剤を、おそらく規定量をはるかに超える分量でブラックタイガーの田んぼに投与したことが全滅の原因だ」と聞いたことがあります。
現地の養殖業者のモラル、水産業の品質管理能力にも問題はあるでしょうが、そうした無理や不正行為を行わせてしまうほど、強烈な値下げ圧力と、時に理不尽な現地加工要請を加えている日本の開発輸入業者には、原因と責任はないのでしょうか。
安さへの執念で、今や地球の裏側からも輸入されるエビ。
農水産加工品の開発輸入拡大が示すのは、地方のさらなる衰退です。
全国の耕作放棄地を活用してこの矛盾を解消し、畜産業のための飼料栽培や陸上養殖が可能な甲殻類の養殖を行えないのでしょうか。