自家製バーチャルオフィスツールで、リモートワークがずいぶん楽しくなってきたという話
皆さんは、リモートワークにおけるストレスや寂しさを減らし、チームとしてより楽しく働くために、日々どんな工夫やアイデアを試しておられますか?
はじめまして、ジェイテックジャパンの広瀬嘉久と申します。note初投稿となります。どうぞよろしくお願いします。
さて、今日は
社内で、自家製のバーチャルオフィスツールを作って、メンバー皆で使いつつ日々カイゼンしていったら、リモートワークがずいぶんと楽しくなってきた。
という話を書きたいと思います。
どんなツール?
まず、どんなツールを作ったのかを説明します。
簡単に言えば、今、どのメンバーが働いているか、何をしているか、どんな状況かなど、チームとメンバーの「今」を「見える化」し、リモートワークにおいて、一緒に働き・つながり・支え合うためのツールです。
今時っぽく言えば、シンプルな「バーチャルオフィスツール」とも言えるかもしれません。とは言っても、堅苦しくなく、軽快なUXにより、いつでも表示しておきたいようなユニークで楽しいツールに仕上がってきたな、と考えています。
これだとイメージが湧きづらいと思いますので、スクショを貼ってみます。
実際の社内の様子。一部のメンバーは似顔絵で
レスポンシブ対応のWebアプリケーションとして作っているので、スマホやタブレットでも使えます。こんな感じです。
私は仕事中、PCの横にiPadを置いて表示させています
ツールの名前は、「Koos」(クース)
社内ツールではありますが、愛着がわくようにと、名前を付け、ロゴも作りました。
名前は「Koos」(クース)、エストニア語で「一緒に」という意味です。
社内の旧勤怠管理システムから取った「ImWorking」、その他「TimeTerminal」「Cloud Lounge」など、色々と候補があったのですが、最終的には「Koos」(クース)で決まりました。ニューヨーク在住のMarcが名付け親です。
実際にロゴをデザインした、UI/UXデザイナーの田中のコメント。「カワイイ感じ。顔アイコン入りなのでギークっぽい?オリジナリティ、ユニークさはあると思います。」
Google提唱のマテリアルデザインを使用
試しに、3Dプリンターでマグネットを作ってみたメンバーも。。
試しに、ロゴアニメーションを作ってみたメンバーも。。。
Koosの機能
次のような機能があります。メンバーのリクエストに応じる形で、今でも少しずつ機能を追加中です。
ワークスペースで、メンバー同士の交友
● 今、どのメンバーが働いているか・いないか、顔写真で「見える」
顔写真のフィルター機能あり。全メンバー表示、特定のグループのみ表示に対応。入室順による並べ替え、「アクティブな人だけ表示」も。
● ワークスペースに、ボタン1クリックで入退室
● メンバーが入退室すると、軽快なチャイムで知らせてくれる
● ワークスペース上で、自由にコメントをつぶやく
「顧客会議中😎」「ペアプロしてます🎧」「体操する🦑」等、何でもOK。Slackのカスタム絵文字にも対応!
● メンバーにリアクションを送れる
システム炎上中や夜間休暇対応中のメンバーに、頑張れリアクション👏を送ろう。
● メンバーボードで最近の自分をアピール
自分や家族の情報、最近の投稿写真やアクティビティを表示。
コメントやメンバーへのリアクションに、Slakカスタム絵文字もOK
勤怠管理など、ビジネスっぽい機能も
● タイムカード: 入退室の時刻が、勤怠データとして保存される。
● 週報: 今週やること、先週やったことを書き込める。
● 掲示板: ワークスペースの最上部に、メンバー全員や特定のグループ向けのメッセージを表示。表示の終了時刻も設定可能。
● 休暇の申請/承認: 休暇を申請すると、Slackの専用チャンネルに承認者へのメンション付きメッセージが自動投稿される。
● 管理者用: ユーザー・グループ管理、業務カレンダー管理、メンバーの勤怠データのExcelインポートなど。
入退室により勤怠データが自動生成され、週ビューや月ビューで自分が何時間働いたかが分かる
Web API化とBot連携で、より楽しく便利に
● Koosと連携するSlack用Botを作った
Slackに「#_koos_greeting(入退室用)」「#_koos_comment(コメント用)」「#_koos_weekly(週報用)」というKoos用のチャンネルを用意し、ここに投稿するだけで、Koosワークスペース上での入退室やコメントを行える。たとえば「おはよう」とSlackで投稿すると、ワークスペースに入室できる。他方、Koos側の各種アクションも、上記Slackのチャンネルにログとして投稿される。このように、SlackとKoosの間で双方向でのやり取りが可能。
● Teams用Botも作成し、現在テスト中
● 将来的には、LINE用Botもぜひ作りたい
SlackとKoos間、双方向の連携の様子
作ったきっかけ
現在、私たちはニューヨークと東京の2箇所にあるオフィスを拠点として、米国はニューヨーク、ロサンゼルス。日本は東京、北海道、沖縄、長野。さらにタイ、ベトナム、メキシコなど、世界各地の合計29名のエンジニアたちがリモートでつながりあって協働しています(2020/05/28時点)。
働き方や雇用形態もさまざまで、週5日働くメンバーもいれば、週3日や4日の自由な時間帯に働くメンバーもいます。
リモートワークには、2002年より積極的に取り組んできましたので、19年近く、どのようにチームとして効率的にかつ楽しく協働できるか、色々と試行錯誤を繰り返してきました。
それなりに上手くいき、ノウハウも色々と蓄積されてきたものの、ここ最近でも、以下のような問題や悩みを抱えていました。
今、どのメンバーが働いているかがよく分からない、コミュニケーションが取りづらい…
これまでも解決のため社内ツールを色々と作成しており、「ImWorking」という自前の勤怠管理ツールと連動するSlack用Botを作って、Slackの特定チャンネルで「誰がいますか」とか「who is working」とつぶやくと、今仕事をしているメンバーをテキストで教えてくれるものはあったが、十分活用されるまでには至らず。
メンバーが国内外の各地に分散しており、プロジェクトが違うとあまり知り合う機会がない、そのため社内全体としての一体感も生まれにくい…
年に一度、東京で家族も含めた社内親睦会を開いているが、なかなか参加できないメンバーが多い。そのため、実際に顔を合わせる機会が少なく、何年も働いているのに、いまだによく知らないメンバーがいる。
リモートワークに役立つツールやサービスを積極的に活用しているが、チームワークをさらに促進する良いアイデアやツールがないだろうか…
Slack(以前は、YammerやChatWork)、Teams(主にお客さんとのやり取りで)、Google Suites、Microsoft 365、Dropbox、Zoom、GitHub、Redmine、Trello、Asana、Qiita:Team、esaなど、色々とツールやサービス活用しているものの、もっと一緒のオフィスにいるかのような雰囲気や一体感を作り出せたらよいなと考えている。この点で、話題の各種バーチャルオフィスツールって、どうなんだろうか。
そうこうしているうちに、「自分たちが抱えるリモートワークの問題は、自分たちで解決しよう!」と自作ツールを作ることを検討するようになりました。そして、まず経営陣とマネージャーたちで話し合い、以下のような基本的なコンセプトを決めました。
チームや各メンバーの「今」が「見える」ツール
働いているかどうか、だけでなく、何に取り組んでいるか、困っていないか、どんな気分か、など。
Slackをより楽しくし、もっと手軽にコミュニケーションを取れるツール
コメントやリアクションを気軽に行えるようにして、コミュニケーションを促進し、チームとしての一体感を高めたい。
より自由で、安心感を与えるツール
一定時間ごとにPC画面のキャプチャや自分の顔写真が取られるような「監視型」のツールではなく、みずから「つながっていたい」と思えるような、自由で安心感を与えるツールにしたい。
シンプル イズ ベスト
Slackやビデオ通話など、すでに良質の別サービスで実現できている機能は作らない。他のツールやサービスの併用では、埋められないと考えている結合ピースのみを作るようなイメージ。
初期の開発
実は、Koosには元ネタがありました。ニューヨーク在住のCEO山口が「日本や各地のメンバーと連絡を取りたいが、今、作業中かがよく分からない。。」というリモートならではの悩みを持っていました。
それなら自分で解決してしまおう!という、いかにもエンジニアらしい発想で、誰かが仕事を開始したら、顔写真とチャイムですぐに教えてくれるシステムをSwiftで作り、Apple TVで動かしていました。この話がメンバーたちにも伝わり、「これは面白いね!便利そうだね!」というような話になり、Koos開発への流れへと進んでいった訳です。
ちなみにニューヨークのオフィスでは、他にもオフィスの様子を24時間カメラで映し出して、各地のメンバーがいつでも声をかけられるようにするなど、リモートワークにおける面白い取り組みや実験をこれまで色々としていますので、別の機会にご紹介したいと思います。
Apple TVで動いていた初期プロトタイプ
その後、ロサンゼルス在住のCTO高丘が、経営や他の仕事のかたわら、2020年の春頃からKoosのプロトタイプを開発し始め、そこにUI/UXデザイナーの田中が、ポップで楽しい感じのUIやロゴを当てはめてくれました。
参考までに、システムの構成要素も簡単にまとめます。開発スピードを上げるために、社内的に慣れ親しんでいる技術を使っています。
使用した技術・インフラ
・Microsoft Azure
・ASP.NET Core Web API
・Vue.js, Vuex, Vue Router, Vuetify, Emoji Mart Vue
なお、Koosは、Slackのカスタム絵文字も使えるのが、楽しくてユニークなところと考えていますが、このために「Emoji Mart Vue」という、Vue.js用のライブラリを使用しています。
Koosの基本機能を、高丘がWeb APIとして実装してくれましたので、社内でさらに遊べる口が広がりました。
前述のApple TVで初期プロトタイプアプリを動かしていた山口は、Koos APIを使って、早速Apple TVアプリのデータ取得先をKoosに変更し、さらには、Koosの様子を手元でいつでも見たいということで、Apple Watchアプリまで作ってしまいました。Siriにより声でKoosに入退室してみたり、NFCを使ってタッチによる入退室してみたりと、Koos APIを使って、エンジニアとしてやりたい放題といった感じです笑。
Koosを使ってみてのメンバーたちの感想
このように、まずは社内の数名でドックフーディングしつつ、基本的な機能やUIを作っていきました。
その後、日本、アメリカそして世界各地がコロナウイルス感染症影響拡大の真っ只中にあった、2020年4月23日に、社内全体のリモートミーティングにて、この自家製バーチャルオフィスツール「Koos」について、メンバーにアナウンスしました。
すぐにかなりの関心が示され、Koos開発用に作られたSlackの「#koos_dev」チャンネルに、多くのメンバーが自ら参加してくれました。そして、次々と要望やアイデアが投稿されるようになりました。また、メンバーからKoosの仕組みや設計思想などを説明する説明会を開いて欲しい、という要望も上がり、実際に開催しました。
いつの間にか、開発スタイルもおのずと定着しました。「#koos_dev」で、誰かが必要な機能をリクエストしたり浮かんだアイデアをつぶやいたりして眠りにつくと、アメリカ時間の高丘が対応し、眠っていたメンバーが朝を迎えると、昨晩つぶやいたはずの機能やアイデアがなぜか実際に動いているという、「こびとさん」アジャイル開発スタイルが、気がつくと採用されていました。
数週間、実際に使ってみてのメンバーの反応や感想も、予想以上の好感触と言えました。特にデザインや操作感が気に入ってくれたようです。トップダウンの指示のもと仕方なく使っているという訳でもなく、特にコメントやリアクションのメッセージや絵文字は、メンバー各自が自分の好きな使い方をして自由に楽しむようになりました。個人的には、社内でSlackを導入した時と同じくすんなりと馴染んでいった感覚を覚えています。
嬉しかった点として、遠隔地で一人で仕事をしているリモートメンバーにとっては、Koosは特に気に入ったものとなったようです。とても印象的に感じたSlack上でのやり取りを、(メンバーの了解を得た上で)紹介します。
このように書いてみましたが、私が読者ならきっと「本当か??」と思うと思いますので、「心理的安全性」が高いと信頼している社内メンバーに、Koosについてどう思うか、アンケートをとってみました。
社内アンケート結果の考察
自由で忌憚のないメンバーたちが、5段階評価で平均「3.9」をくれたので良とする。「食べログ」でも3.5以上4.0未満なら、全体のTOP約3%の人気店ということになるらしい。
Koosを使ってみての個人的な感想
2020年4月17日からKoosを約1か月使ってみて、個人的な感想や考えたことについてもまとめます。
ワークスペースが純粋に楽しい
今、誰が働いているかが、一目で分かるようになった。入退室のチャイム音が、Koosを確認するトリガーとなる。誰々が仕事を始めたなとか、誰々が仕事を終えたな、というように、実際のオフィスにいるかのようなリアルタイム感が出てきた。特にランチタイムや夕方5〜6時頃になると、メンバーの入退室のチャイムが鳴り響くのが楽しいし、そろそろ自分もランチに入ろう、今日の仕事を終える準備に入ろう、と休憩や終業のタイミングに気づかせてもくれる。「入室順」による表示にも対応しているため、後から入室してきても、ワークスペース上で誰が長く働いているかなど、入室前のチームの様子が分かるのも嬉しいところ。
メンバーとの気軽なやり取りが増えた
コメント&絵文字で、お互い「今」の状況、様子、気分について気軽につぶやけるようになった。(Slackだと、これが中々難しかった。)そして、気軽にリアクションできる、時々ちょっかいも出せる。忙しい時は、絵文字のリアクションだけでもOK。特定のメンバーへのリアクションのコメントと絵文字が、BotによりSlackのDMと連動しているため、例えば「調子どう?🐸」と送って、ちょっと気になる返信があった場合、SlackのDM上でもう少し詳しくやり取りを続けることも可能。
メンバーの頑張りが「見える化」され、応援できるようになった
Koosのワークスペースをダッシュボード的に、自分の始業前、始業後も表示させている。(仕事時間以外は、Slackは基本見ないようにしている。)そうすると、早朝から頑張っているメンバー、晩に緊急対応や夜間作業で頑張っているメンバーがよく見えるため、「お疲れ様です!👏」などのリアクションを気軽に送れるようになったのが嬉しい。
社内全体と各チームの様子が、よく分かるようになった
ワークスペース上の入退室の動きやコメントにより、アメリカオフィス側のメンバー、客先に常駐しているメンバー、各地のリモートメンバーの様子や働きが、今までよりも分かるようになった。そして、よく分かるようになればなるほど、各地のメンバーたちにより優しくなれる気がしている。
最後に
リモートワークにおける自分たちの問題や悩みを解決するために、自家製のバーチャルオフィスツールを作成してみたら、メンバーたちも結構気に入ってくれて、社内全体がずいぶんと楽しくなってきた。
という話でした。
今後も、社内におけるKoosが「ないと仕事にならない」Slackのような必須ツール、かつ「あると仕事にならない」(楽しすぎて。。)と感じてもらえる位の楽しいツールとなっていくように、メンバー皆でアイデアを出し合いつつ、日々ゆっくりと成長させていければと考えています。
また、Koosが、私たちの問題や悩みをある程度解決できたのであれば、つながりのあるお客さんが抱える問題の解決にも役立つかもしれないと考えています。
世の中全体でリモートワークが強力に推進されている現在、関心を持っていただけるお客さんには、ぜひ積極的に使っていただけるよう全力でサポートしたい!とも考えているところです。
最後に、読者の皆さまにも、この記事を通して「Koos」というバーチャルオフィスツールのユニークさや面白さに興味や関心を持っていただき、読者の皆さんのリモートワークの問題や悩みの解決のために、ぜひ一緒に取り組んでいきたい!と考えています。
それで、もし「Koos」(クース)に興味や関心を持っていただけるようでしたら、以下のページから気軽にご連絡ください!お待ちしております。
ジェイテックジャパン - お問い合わせ
https://www.jtechs.com/japan/#sec-inquiry
初投稿で、気づくと長文となってしまいました。。
貴重なお時間を割いて、最後までお読みくださり、ありがとうございました。
P.S. 高丘の娘さんのYumiさんへ: 似顔絵希望のメンバーのために、素敵なアートワークを作ってくれて本当にありがとう!
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