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Part3 建材に求められる水密性能 その1.圧力箱法
機関誌「建材試験情報」2012年7月号~2016年4月まで連載していた基礎講座「雨/風と建築/建材」(全7回)をNOTEにてアーカイブしています。(一部修正)
Part3は機関誌2012年12月号からです。
1.はじめに
私たちの住む日本は温帯湿潤気候に属しており,6~7月にかけての梅雨,秋雨前線による9~10月にかけての降雨など長い間雨の降り続ける期間が存在します。このほかにも夏場の積乱雲や低気圧によって発生する降雨があり,例えば東京では2011年に1mm以上の降雨を観測した日が年間124日で,1年間の約1/3で雨が降ったことになります。
このように日本では降雨日が多いため,快適な生活環境を営む上で雨水を室内へ入れない性能が建物にとって重要になります。この建物の内側への雨水の侵入を防ぐ性能を建物の水密性能と呼びますが,一般的に建物の水密性を考える際には,台風などの強風に伴う降雨状況を考慮します。
Part3では、降雨に関する基礎知識と建材の水密性能を評価する試験方法について紹介したいと思います。
2.雨の基礎知識
2.1 降水量とは
天気予報で扱われる降水量はどのように測定されているかご存知でしょうか。降水量とは,ある場所に雨が降りその雨が蒸発,吸水および流れ出さずその場所に留まり続けた場合の溜まった水の深さを示しており,1日あたり,1時間あたり,10分あたりの量として表現されています。
例えば,ゲリラ豪雨のように短時間で集中的に降る降雨は10分間あるいは,1時間あたりの降水量として発表されることが多く,梅雨や秋雨などのように長時間の降雨については1時間あるいは1日あたりの降水量として発表されることが一般的です。
2.2 降水量の測定法とは
雨の量を数字で分かり易く説明できる降水量ですが,気象庁では「転倒ます型雨量計」という装置を使っています。この装置は受水口から雨水が入り,受水器を通って濾水器に流れていき,転倒ますへ雨水が溜められていく構造になっています。転倒ますは左右それぞれに所定の量の雨水が溜められ,転倒ますの片側に雨水が所定の量溜まると,転倒ますが傾き排水口に雨水を排水します。それと同時にもう一方の転倒ますに雨水が溜められます。左右交互にこの状態が繰り返されていき,転倒ますが傾いた回数によって,雨水の量を測定する仕組みとなっています。これは,日本庭園でみられる鹿威しと似た構造です。気象庁では表1のように降水量を5段階に区分して雨による現象を分かりやすく説明しています。
最近よく耳にするゲリラ豪雨は、1時間あたり80mm~90mm前後の降水量であると言われています。
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3.水密性試験方法(圧力箱法)
建築部材の水密性能を評価する方法には,さまざまな方法がありますが,今回は日本産業規格のJIS A 1517(建具の水密性試験方法)やJIS A 1414-3(建築用パネルの性能試験方法-第3部:温湿度・水分に対する試験)等で採用されている圧力箱法について紹介します。
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3.1 圧力箱法とは
圧力箱法は,図1に示す送風機,散水装置,圧力制御装置等で構成される鋼製の箱状装置に試験体を設置し,風圧力を一定の周期で変動させながら水を噴霧し,試験体からの漏水を確認する試験方法です。
JIS A 1414-3(建築用パネルの性能試験方法-第3部:温湿度・水分に対する試験)で定められている試験条件を図2に示します。
加圧ステップは計9ステップあり,散水量は1㎡あたり4L/min,圧力の載荷方法は脈動圧によって試験を行います。この散水量1㎡あたり4L/minとは,JIS制定時1900年の気象データにおいて,10分間あたりの最大降水量40mm(1時間当たりに換算すると240mm)という記録があったため,この降水量を1分間および1㎡あたりに換算したところ4L/minになるので,この散水量が採用されたと言われています。
ちなみに,現在の気象記録では10分間あたりの最大降水量は2011年7月に観測された50mmが最高記録※となっていますが,散水量を変更するといった話は出ていません。
(※その後、2020年6月6日に熊谷で降水量50mm観測)
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3.2 脈動圧とは
脈動圧は,図3に示すような波形で圧力を変動させる載荷方法で,前回紹介したように実際の風が「吹いて止んで」の強弱を繰り返すことを再現したものです。
脈動周期2秒は,実際日本で吹く風を統計的に調べたところ,おおよそ2秒周期の風が多く観測されたことにより採用されたと言われていますが,これについての明確な文献が残されている訳ではありません。中心圧力を前回紹介した耐風圧の設計強度の計算式で風速に換算した値を表2に示します。なお、この値は,建築基準法の諸係数を考慮しないで風速に変換した値です。
最大中心圧力1600Paは,換算風速で約52m/sとなっており,気象庁が熱帯低気圧と台風とを区別する風速17m/sの約3倍にもなっています。このことからも,この試験条件がかなり厳しいものであることが分かります。
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最後に圧力箱法の特徴としては,大きな風圧力を発生させられるため,強風時における部材の評価が可能で,大きな試験体についての水密性評価が可能です。
一方欠点としては,全体に一様な風圧力が掛かってしまうため,風の乱れなどを含めた評価ができない点です。また,隙間が大きく気密性が低いものには風圧力が掛けられないという欠点もあります。
4.おわりに
Part4では,建築部材の水密性能を評価する送風散水を紹介します。
【参考文献】
1)気象庁ホームページ
2)JIS A 1414-3(建築用パネルの性能試験方法-第3部:温湿度・水分に対する試験)
〈執筆者〉
中央試験所 環境グループ 森濱 直之
<試験の問い合わせ先>
総合試験ユニット
中央試験所 環境グループ
TEL:048-935-1994
FAX:048-931-9137