
【HOW TO ストロングマントレーニング】 ~ストロングマンのように鍛えるガイドブック~前編
・挨拶
初めまして!
日本ストロングマン協会(Japan Strongest Unity)代表の
BIG KGこと中嶋健詞です
早速ですが簡単に自己紹介します

中嶋健詞(なかじまけんじ)
神奈川県出身1991年10月12日生まれ(33歳)
ストレングスコーチ・パーソナルトレーナー歴15年目
ストロングマン歴9年目
身長181cm・体重150kg
ログクリーンアンドプレス175kg
スクワット352kg(ニーラップあり)
デッドリフト350kg(スーツ・ストラップあり)
・はじめに
本記事は
これからストロングマンを始めたい方や、
普段専門的な環境がないジムでトレーニングしているストロングマン
などに向けて書いたものです
ストロングマントレーニングは適切に行えば、間違いなく身体を強くしてくれる最強のトレーニング方法の一つだと考えています
本記事はアカデミックに掘り下げた教科書的な内容ではありませんが、私自身がストロングマントレーニングを実施する上での考え・実践の共有とそこからできる提案を通して、ストロングになりたい皆様の役に立てればと思います
拙い文章かもしれませんが、よろしくお願いいたします!

①ストロングマン競技とは
巨大な石やタイヤ、ダンベル、時にはトラックなど人間が動かすはずのない重量物を持ち上げたり、動かしたり
とにかく派手な見た目が売りのストロングマン競技ですが、ルールなど試合の細かい部分に関してはあまり知られていないと思います
・種目数
試合によるが4〜5種目程度がメジャー/海外の大きな大会だと2日に分けて行うことも
・内容
種目ジャンル(プレス系、デッド系、キャリー系…など)に偏りが出過ぎないようにバランスがとられてはいるが内容自体は試合ごとにバラバラ、同じ種目でも器具の規格が違ったり、重量 or 回数でルールが違ったり、それぞれの大会が唯一無二
(もちろんエントリー開始の際などに事前に告知はありますのでご安心を)
・種目ごとの勝敗の付け方
主に、最大重量(for Max or Last person standing)/回数(for Reps)/時間(for Time)の3パターン、最も重く or 多く or 速く 課題をクリアした人が勝つ
至ってシンプル
・順位の決め方
種目ごとの順位に対応したポイントが付き、それを合計したものが最終順位となる
例)選手5名なら、1位が5ポイント、2位4ポイント…と減っていく、試技不成立(0rep/0mなど)なると0ポイントとなることも

②代表的な種目
上記の通りバリエーションは様々なのですが、競技の中でも頻繁に登場し、ストロングマンとしてベースとなると私自身も考えている種目(=積極的に練習/対策すべき!)を簡単に紹介します
⑴ログクリーンプレス

看板種目の一つ
オーバーヘッドプレス種目はストロングマン競技の中でも、大事な位置付けの種目ですが、特にログは重要と考えています
派手な見た目に目が行きがちですが、トレーニング種目としても大変優秀で、押す動作そのものを強化するだけでなく、クリーンアンドプレスの動きの中に、ストロングマンとして必要なテクニックと、ログの形状だからこそ得られる筋肉への刺激が、多く含まれています
SBD Apparel JapanさんのYouTubeで解説をしました↓
SBDのリストラップ・エルボー・ニースリーブなどをフル装備できるログクリーンプレスは個人的に一番テンション上がる種目です
(↑そんなことより、今と比べて動画の私が細すぎて驚いた方は以前HPブログに書いた【増量遍歴】をみて見てください(前・中・後編の3部構成))
・動作解説
●クリーン
大きな物体を体の前でラップ(包み)し、身体に密着させた状態でスクワットとバックエクステンション連動させたような動作で、身体の前を転がすように胸の高さまで持ちあげるテクニックを「ストロングマントリプルエクステンション」と呼んでおり、ログクリーンもこれに当たります
前述の通り、このテクニックは様々なストロングマン特有の物体をリフトするのに大事な要素であり、ログクリーン一つの中にデッドリフト/フロントスクワット/クリーンなどの動きが含まれる事になるので、クリーンからプレスまで完遂することにより文字通り全身が強くなるトレーニングになると考えられます
●プレス
ログの形状的にプレスは上背部を反らした状態で行わなければならず、腹圧を保ち続けるためにも胸椎の柔軟性と体幹の強さの共存が必須です

また、ログのハンドルはニュートラルグリップの為、手首を返して安定を取れるオーバーハンドグリップに比べて、肘の位置(フロントラックポジション)を高く保つためにも、前鋸筋などの肩甲骨周囲筋群と体幹筋群の動員を求められるため、通常のバーベルミリタリープレスや、最もメジャーな押す種目であるベンチプレスなどと比べると超ハードです
体幹も含めたより上位互換的な(少し私個人の思想が出てます笑)上半身の強さが求められます
文字通り究極の【上半身】トレーニングです
また、競技の中ではストリクト、プッシュプレス、ジャークなど様々な挙げ方が可能なことがほとんどで、その中でログにおいて最も用いられる方法がプッシュプレスです
理由としてはログ特有の大きさ・不安定性をコントロールしながら脚の力を伝えられる最もバランスの取れた押し方がプッシュプレスであり、ジャーク系の動きは軌道がぶれやすい+潜り込まなければならないため、少々リスキーです
脚で床を蹴る反動(レッグドライブ)を使い、より高重量を挙上することも重量・回数を求められるストロングマンのプレス種目には必須です
寝るな、立って押せよ
・ログプレス 代用/補強トレーニング
・ログの姿勢を想定
胸椎伸展強調/上を向いた状態 で行う
バーベル/スイスバー ミリタリープレス or プッシュプレス
ニュートラルグリップ ダンベル ミリタリープレス
※腰を前に突き出す(=腰椎の過伸展)にならないよう注意!
・体幹/レッグドライブ強化
フロント スクワット
スクワット ジャンプ
・ログプレス時の関節角度を想定したプレス主動筋強化
ナローグリップ 30-45° インクライン ベンチプレス
⑵デッドリフト(ストロングマン小話)
昔、とあるプロストロングマンは「デッドリフトができなきゃストロングマンになれない」なんて言ったそうです
この記事をお読みの方でデッドリフトを知らない人はいらっしゃらないと思うのでここでわざわざ解説することもないので上記の名言?に関する考察をしてみます
この名言はノルウェーのスヴェン・カールセン(2001ワールドストロンゲストマン)の言葉ですが、カールセンや、有名選手であるポーランドのマリウス・プッツナウスキーなどが活躍したその後の世代(2010年以降くらい)からストロングマン競技は技術レベルがかなり進歩していると感じます
現代ストロングマンと比べると、それ以前のストロングマン競技は文字通りの「馬鹿力」コンテストでした
力はめちゃくちゃ強くてもテクニックは正直高くない選手がほとんどでした(ある意味そちらの方が強いとも言えますが)
特にクリーンを伴うオーバヘッドプレス系種目などは技術と力、連動性、柔軟性の融合が必須なテクニカル種目の側面も持ちますが、現代ストロングマンとそれ以前の世代でレベル的に最も差があると感じる種目です
(絶対重量という意味では選手のサイズアップももちろん大きな要因ではありますが)
おそらく当時のストロングマンはモビリティエクササイズなんてやっていないであろうし(想像)、欧米人の体格的にも、デッドリフトのメカニクスはクリーンアンドプレスに比べたら圧倒的にシンプルだと想像でき、生まれ持った腰の強さがあれば所謂ぶっこぬきデッドリフトで、
充分に高いレベル=競争力のある重量帯まで挙上できたのであろうと推察します
なので現代に比べて、よりシンプルな力比べが行えるデッドリフトへの戦略上の需要が高かったところから来る名言だったのではないかと言う考察です
もちろん現在においてもデッドリフト(特にfor Max)の重要性は変わりませんが、最近はMax特化型の巨漢系よりキャリーやムービングイベントで差をつけれてかつMaxも上位帯をキープできる万能型のストロングマンが主流です
カナダのミシェル・フーパー、アメリカのマーティン・リシスやウクライナのアレクセイ・ノビコフなどですね
今世界で一番強いと言って差し支えないストロングマンがカナダのミシェル・フーパー選手でして、
とにかくキャリー系が速く、かつデッドリフト1000lbs(約454kg)、オーバーヘッドプレスで440lbs(約200kg)以上の大台を挙上できる化け物です
オールマイティにこなしつつ、プレスかデッドのどちらかあるいは両方のMaxにも自信がある選手がコンスタントに強いストロングマンだと思います(当たり前ですが)
海外の選手を例に話しましたが、こういった競技性に関する部分はストロングマン競技を行う限り共通であって、
JSU主催の日本大会
Japan Strongestman 2021/2022と二連覇した元無差別級日本チャンピオン 大島選手はなんと体重90kgを下回ります
周りの120〜130kgある同階級の選手をものともしない強さは技術に裏打ちされたものであり、その試合運びや、戦術的考察も含めて、多くの日本人ストロングマンは大島選手を参考にすべきです
⑶ヨークキャリー/ファーマーズキャリー

種目の話に戻ります!
ヨークキャリーはハーフラックのような形状の「ヨーク」を背中に担ぎ、
ファーマーズキャリーは専用のハンドルを素手で両手に持ち、
運搬するタイムや距離を競う種目です
この種目たちを一言で言うなら究極の体幹トレーニングです
普通ジムで「運ぶ動作」を鍛えることはないかと思いますが、この動作を高重量下で行うことにより、文字通り芯から身体を強くしてくれると考えています
・動作解説(ヨーク)
ヨークの真下に完全に入ってしまうと重心移動が難しくなる為、多少ローバー気味に担いで軽い前傾を維持しながら、細かいステップでスムーズな前方への重心移動を心掛けることがポイントです
ヨークは振り子のように揺れやすいため、それをうまくコントロールすることが必須です
他のキャリー系にも共通することですが、
スクワットで言うラックアップのようなその場にとどまり続けやすい重心と、移動しやすい重心は異なると考えています
肩の柔軟性に問題があれば担ぎ位置をハイバー寄りに調整するといいでしょう
・動作解説(ファーマーズキャリー)
専用のハンドルをハーフデッドリフトくらいの高さからデッドリフトしたのち運びます
ヨークより重心位置も低く、その分ハンドルも揺れずらいので、そこまでコントロールには困らないと思います
とにかく重要なのは手のひらの痛みに耐えて最後まで手を離さないこと!
当然ストラップのように握力を補助する道具は使用できないので、強靭な握力を求められます
全力でハンドルを握りながら、歩く
という動作は文字通り手先から足先までの筋肉を使うこととなります
ヨークと比べて、握力の限界という安全装置の存在により、扱う絶対重量が下がることによる怪我リスクの低さや、専用器具の値段・大きさ的にも、ストロングマン入門者に最も取り入れやすいキャリー種目の一つと考えており、もしはじめに購入する器具を選ぶなら個人的にはファーマーズキャリーをお勧めしてます
・キャリー時の呼吸
短い距離の高重量であれば息を止めたままも可能ですが、一般的にキャリー種目は20〜30mで行われる事が多く必ず息継ぎが必要になります
完全に腹圧が抜けてしまうことがないよう、短く強い呼吸を繰り返すのがポイント
かなり難しいテクニックですが、荷重+歩行+呼吸が揃うのがキャリー種目であり、腹圧の強さ・コントロール能力を向上させ、身体を本当の意味で強くすることにつながる最重要事項の一つだと考えています
以前JSUのHPブログでキャリー種目の取り入れ方を解説したのでご覧になってみてください
・キャリー代用トレーニング
・ヨーク主動筋強化
チェーン ヨーク
→以前ブログとYouTubeで取り上げました!
・ファーマーズ主動筋強化
ケトルベル・ダンベル・トラップバーなどで代用
・シミュレーション練習
マーチング(その場足踏み)
・片脚安定性強化
ローボックス ヘビーステップアップ
⑷アトラスストーン(or ストロングマンサンドバッグ)

最後に紹介するのはストロングマンのアイコンとも言える種目
アトラスストーンです
持ち手の無い丸石を抱えてプル(デッドリフト)した後に、ストロングマントリプルエクステンションを用いて、指定された高さへ載せる/越す 重さ・回数・速さを競います
・動作解説
●プル
まず床に置いてあるストーンを膝上まで持ち上げてきます
大事なのは自分の鳩尾をストーンの中心(上から見た時)に合わせること
その中心線に合わせて腕を添え、掌/前腕をしっかり密着させます
ベントロウとスティフレッグデッドリフトを同時に行うイメージで膝の高さまで引いたあとログクリーンのように腿上にストーンを置くようなポジションを取ります
・フィニッシュ
ストロングマンエクステンションを効果的に行うために、腕の位置を大体2時と22時くらいの位置に持ち替えます
そうする事により、ストーンが落下しようとする回転から逆方向に力をかけやすくなります
ストーンを身体に引きつけながら立ち上がり、ストーンが腿から離れ少し(ハーフスクワットぐらい)たところで股関節を前に押し出しながら、背筋群を使って身体を反らせ、ストーンを胸の前で転がすようになるべく高く持ち上げます
ネガティブ動作を耐えるのは危険なので安全にドロップすることを推奨します




ストーンを行う際におすすめの床材は弊団体スポンサーでもある
株式会社SLDSさんの製品の一つであるバーベルマットです!
・アトラスストーン代用/補強トレーニング
・アトラスストーン主動筋強化
サンドバッグエクステンション
→基本的に動きは同じかつ、中身が砂なのでストーンに比べて安全性も高く、袋のみで売っているため値段も比較的安価で、購入もしやすいと思います(砂はホームセンターなどで買って詰めてください)
マッカーリー・エクステンション
↑実施する際はジムのルールをしっかり確認してください
参考動画↓)
・ストロングマントリプルエクステンション(特に立ち上がり局面)強化
ザーチャー スクワット
・プル強化・下半身
スナッチグリップ デッドリフト
・プル強化・上半身
ペンドレーロウ
・後編に向けて
まずは、ここまで読んでいただきありがとうございました!
本記事を通してストロングマン競技・トレーニングの面白さ、奥深さの一端が少しでも伝わったなら幸いです
後編では、自身のストロングマントレーニングを組み立てる上で理解しておきたい、
種目のジャンル分けや考え方を紹介
合わせてBIG KGの現在のトレーニングメニューや使用しているトレーニングギアを紹介
後編も本記事同様、アカデミックな掘り下げというよりは、私がストロングマントレーニングを実践・指導する際に、頭の中で特によく使う考えの引き出しを知ってもらい、自身のトレーニングの工夫に活かして欲しいという気持ちを込めて執筆しました
ですので、翌日からでも真似できる実践的な内容になっていると思います!
また、後編は有料とさせて頂きます!
収益は今後のストロングマン競技の普及活動・大会運営にかかる費用に充てさせていただきたいと考えていますので何卒ご理解をお願いいたします
購入者の方には、記事内リンクやメールにて私に直接トレーニングや種目に関する質問が行えたり、練習会への参加費が割引になるなどの特典がついていますので、ぜひご購入いただき、
強くありたい皆様とのストロングなコミュニケーションを深めていきたいと考えています!
日本全国ストロングマンファンの皆様と一緒に強くなっていけると嬉しいです
後編もお楽しみに
何卒よろしくお願いいたします!
力持ちは日本を元気にする
日本ストロングマン協会 代表 中嶋健詞
