地域の人財を活かした参加型トレーニング合宿の取組(秋田県大館市)
スポーツツーリズムの主力として、活発に行われている取組に大会や合宿の誘致があります。
大会は、大小さまざまありますが、出場チームの選手や監督・コーチだけではなく、随行するスタッフ、同伴の保護者や家族をはじめとした観客など、会期中に多くの人々が地域を訪れます。
また、合宿の場合は、チーム単位など、ある程度まとまった人数と期間の滞在が見込めるため、どちらも効率的に域内への来訪者が期待できます。
一方、どこでも大会や合宿ができるか?というと、そうではなく、会場となる施設は競技の基準を満たしているか、周辺に十分な宿泊施設があるか、交通の便はどうかなど、条件がかなう場所には一定の質が求められます。
特に宿泊施設は、都市部や観光地以外の地域では、十分な部屋数の確保ができず、大会・合宿招致の際にネックとなることが多々あります。
今回は、限られた資源の中で地域の特性を活かし、工夫を凝らした合宿の取組をしているスポーツコミッション大館(秋田県大館市)をご紹介します。
大館市は、渋谷のハチ公口銅像でおなじみの忠犬ハチ公のふるさと。秋田犬やきりたんぽが有名です。交通の便では、大館能代空港があり、空港から市内まで車で40分ほど。新幹線では、盛岡・秋田・新青森がほぼ同距離にあるため、北東北の拠点としてビジネス利用者も多い便利な場所です。
スポーツ施設は、秋田杉でできた木造の「ニプロハチ公ドーム」(ドーム屋根の躯体が木造で一見の価値があります!)や「タクミアリーナ」「長根山運動公園」など数々のスポーツ施設を有しています。
交通も便利、立派な施設も多数あるけれど、ビジネス利用なども多い中で、スポーツ利用者に求められる質と数を賄える宿泊施設が十分にはありません。これは、大館市に限ったことではなく、それぞれの目的や条件に見合う環境を揃えること自体が難しい問題なのです。
それを逆手に取り、大館市では、地元の宝である大館出身のアスリート協力の下、日本最高峰の選手陣によるトレーニング合宿「『小林快』競歩講習合宿2024」の開催が実現しました。
この合宿の立役者は、地元出身在住の競歩アスリート小林快さん。
現在は、現役を引退されていますが、日本代表として世界選手権にも出場し、国内外の大会で優勝や入賞を多数獲得されている競歩の実力者です。
小林さんの呼びかけで集まったアシスタント講師は・・・
山﨑勇喜さん(陸上自衛隊武器学校)
オリンピックに2004年アテネ大会から3大会連続で出場
2008年北京大会では50㎞種目で日本人初となる7位入賞勝木隼人さん(自衛隊体育学校)
2018年ジャカルタアジア大会男子50km金メダル
2021年東京オリンピック出場髙橋和生さん(ADワークスグループ)
2022年世界競歩チーム選手権男子35km10位
2024年パリ五輪 男女混合競歩リレー日本代表出場立見真央さん(田子重)
2022年全日本35km競歩高畠大会 一般女子3位
全員、日本代表クラス!現役オリンピアンも!!な、なんとも贅沢!!!
合宿に参加したのは、全国の高校生から社会人までの競歩選手男女18名。
限られた人数ですが、その分、小林さんや講師の方々による指導やケアが行き届いているように見受けられました。
参加者からの声では、陸上種目ながら、競歩専門のコーチは限られており、学校の部活動ではなかなか指導に恵まれないこともあるそうです。普段は、ほかの陸上種目に交じって練習をしている生徒さんも競歩専門の合宿だけあって、存分に練習に励んでいました。
日中トレーニングをするだけではなく、合宿の合間には、秋田弁ラジオ体操や昼食にはきりたんぽ作りなど、地元の文化体験も。
みんなで食事を作って頂くことで緊張もほぐれて、個人競技ではあるけれど、チームのような素敵な一体感が生まれていました。競技だけではない場面での共同作業ってすごくいいなあと感じました。
この合宿は、来年も実施するかもしれないそうなので、ご興味のある方は、スポーツコミッション大館の情報をチェックしてみてください。
地域の人財と資源を活用したスポーツツーリズム。皆さんの地域でも人と資源の”宝”を発掘して実現されてみてはいかがでしょうか。