
全ての起点はWIREDから 過去にしがみつかずに変化する
NewsPicksでインフォグラフィック・エディターをされている櫻田潤さんのVoicy『「デザイン逃避行」ラジオ』。櫻田サロン公式noteではテキスト版としてお届けします。今回は第三回「WIREDが僕にくれたもの。」です。
新たなる希望
こんばんは。「デザイン逃避行」ラジオ、三回目の配信となります。
パーソナリティーの櫻田です。
今回はWIREDの新編集長が決まったので、その話をしようかなと思います。
(配信日/2018年6月4日)
新しく編集長になった松島倫明さんはもともとNHK出版の方で、『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略(クリス・アンダーソン著)』や『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略(レイチェル・ボッツマン著)』、『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか (ピーター・ティール著)』、『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則 (ケヴィン・ケリー著)』などの翻訳書を手がけてきた方です。
僕は、その中だと特に『シェア』と『〈インターネット〉の次にくるもの』にすごくインスパイアされたんですよね。
『シェア』は2010年の本なんですけど、そこに出てくる企業を一時期、ひたすら図解していた記憶があります。今でも付箋だらけで本もボロボロ。オレンジの表紙がかっこいいんですよね。
冒頭のイントロダクションでAirbnbの話から始まる本なんですけど、そこにはEtsy、Netflix、Spotifyなど色々なシェアリングサービスがたくさん出ています。
今、挙げたようなものは現在も元気なサービスですが、もう本が発売されてから8年経っているので、他にも消えてしまっているサービスも出てきます。ただ、最初にAirbnbの話が出てくるあたり、やっぱり信頼できる本だったんだなというのがわかります。
そんな本を手掛けてこられた松島さんがWIRED新編集長になってくれたと聞いたものだから、思わず「希望が。」ということをTwitterでもつぶやいてしまったんです。
僕はずっとWIREDに憧れがあって、前編集長の若林(恵)さんを本当にすごい方だと思い過ぎていたので、辞められた時にもうWIREDはおしまいかなと思いました。
当然、若林さんとの路線とはカルチャーとかも含めて違うものになるとは思うんです。でも、松島さんが新たに編集長になると聞いて、また別の意味で新たな希望みたいなものが自分の中に芽生えました。なので、すごく楽しみにしています。
さよなら未来とデザインの本質
僕がなぜWIREDや若林さんに惹かれていたというか、取り憑かれていたかというのはすごくシンプルな話で、僕が初めてデザインの仕事でまともにお金をもらったのが若林さん時代のWIREDだったからです。ひよこが卵を割って初めて見たものを親だと思うという話のような感じです。
当時の僕は実績ゼロで、ただ自分のサイトで自主的に作ったインフォグラフィックを公開していただけなんです。だけど(若林さんが)友だち経由で会ってくれて、その場ですぐに仕事をくれました。それから出版社も紹介してくれて、最初の本が出せて、その本を読んだNewsPicksの佐々木(紀彦)さんに会社に呼んでもらって、今も一緒に働いています。
だから僕の今の活動の全ての起点はWIREDにあります。当時はまともにインフォグラフィックを使う媒体がなかったんですよね。だから早かったな、と。そのチャンスがなかったら今でもただ趣味で作ってる人だったんじゃないかなと思ってます。
若林さんはWIREDを辞めた後に『さよなら未来』という本を出しています。
2018年4月発売の本で、2010年から2017年までの原稿やコラムをまとめた本です。
僕はそれを発売日に買ったんですけど、まだちゃんと読めていないんです。忙しいからとかではなく、ちゃんと中身と向き合いたい、精神面も含めて自分のコンディションや体調がいい時じゃないとダメだなと思っているんです。読む時を待っている、と言う方が近いですね。
それでも、最初の謝辞の部分は何回も読み返しています。そこで、若林さんが昔デザイン事務所で編集者として働いていたという話が出てきました。
デザインというものは外見を取り繕うようなものではなくて、デザインする対象の構造や根拠を激しく問うものだと知ったというエピソードが出てきます。それが、デザインの本質をすごく捉えているなと思いました。
僕が初めて仕事をした相手というのはこういう人だったんだとあらためてビビったとともに、デザインの本質論から謝辞が始まる本なので、これはちゃんとした時に読まないとダメなやつだなと思って時期を見ていたら1ヶ月以上も経ってしまいました。
スティーブ・ジョブズがあるインタビューで「デザインはどのように機能するかの問題なんだ。見た目だけじゃない」と言っていたことがあったんですけど、そういうことに踏み込めている本だと思います。
K-POPに学ぶ
それで、今日はその本の最初の4話くらいを読んでみました。その中にK−POPの話が出ていたんですよね。
洋楽=西洋、邦楽=日本としたときに、日本のレコード店に「洋楽」や「邦楽」という項目があった時にどこにK-POPを置くかという話が出ていて、それが面白かったです。ちょうどNetflixでK-POPに関する話を見つけて気になっていたんで、それを読んだ後にそっちも見てみたんですよね。
ボックスメディアっていうアメリカのWEBメディアのグループがあります。そこが最近動画に力を入れていて、2018年5月からNetflixに『世界の"今"をダイジェスト』っていう番組の配信を始めています。
そこでエピソードが4つ配信されていて、アメリカの人種差別の問題と貧困格差という話やDNA編集に関する話とかが出てくるんですが、最初のエピソードがK-POPでした。20分くらいの長さでK-POPの人気の理由がまとまっていて、僕はほぼ(K-POPを)聞いたことがないんですけど、世界で50億ドル市場だって出てましたね。
特に面白いと思ったのが、K-POP好きな人のインタビューで、ミュージックビデオがいいという話。小さなバンドとかでもクオリティがすごく高くて、独特の色使いがあったりダンスがあったりという演出がなされている。それがYouTubeでも再生回数が多かったりするというから「あぁ、なるほどな」と。ビデオに力を入れるというのは合理的なものだなと思いました。
あと曲の構造の話もあって、ある曲は一曲の中にすごく色々なジャンルが融合されていて、20秒おきくらいで曲調が変わっていくそうです。たとえば、最初はHIP HOP調からはじまって、何秒か経つとロック調に変わり、次は○○調といった形でめまぐるしく9回くらいジャンルが変わっていく曲があって、これも面白いと思いました。
近頃だとiTunesでアルバムを試聴すると、一曲あたりって数秒しか聞けなかったりすると思います。そうすると曲の継ぎ接ぎでダイジェスト視聴していく感じになりますよね。
その感じと、一曲の中でいろんな曲調が入ってるのって似ていて、まさに時代性を捉えているなと思いました。細切れで聞くことに慣れているので、そこと一曲の構造がマッチしていて、飽きないようになっているし、うまいなと思いました。
これは音楽の話ですけど、こういう20秒おきに転換していくような構造は動画でも必要になってくるんだろうなと感じました。
おわりに
今日はWIRED新編集長の話から若林さんの話になり、その後はNetflixの番組、K−POPの話になりました。
やっぱりどんどんと変化していくから、過去にしがみついてるんではなく、自分自身も変わっていかないといけないですよね。
僕は色々なものにインスパイアされて、与えられているものがあるんですけど、逆のアプローチも必要です。僕自身やみなさんも、どんどんと価値観などを世の中に還元していくといいでしょうね。
デザイン逃避行ラジオ、次回もお楽しみに。
おやすみなさい。
※この記事はVoicy『櫻田潤の「デザイン逃避行」ラジオ』の「WIREDが僕にくれたもの。」の内容を書き起こし、加筆・修正を加えて編集したものです。
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櫻田潤の「デザイン逃避行」ラジオ
(第六回まで配信中 ※2018年8月7日現在。随時更新)
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