JSP勉強会シリーズ③

広報班のチャンミオです。前回に引き続き第3回勉強会の様子を紹介していきたいと思います!

1.第3回勉強会の位置づけ・コンセプト


第3回勉強会では「難民がヨルダンに住み続けるということ~「共存」をとことん考える~」をコンセプトに「難民とヨルダンの人々とのありうる共存の形とは何か?」「それを達成する上での障壁はどのようなものか?」「その障壁を乗り越えるにはどのような形があるか?」という問いについて政治領域・経済領域・個人の幸福領域の3つの側面から学んでいきました。

2.政治パート


まず政治的領域のパートではヨルダンの対内政策と対外政策に注目しました。
 ヨルダンでは許容限度を超える難民流入が問題になっています。ヨルダン政府はオープンドアポリシーに変更はないとしているものの、2016年には

「ヨルダン国民の心理状態は沸点に達している」「ヨルダンに今後も難民を受け入てほしいと国際社会が期待するなら、もっと支援しなくてはならなくなる」出典:BBC

というヨルダンのアブドラ国王のコメントが報道されました。

 対して西欧諸国は難民の流入をヨルダン国内で封じ込めるためにヨルダン政府へ支援を行ってきました。このようにヨルダン政府は「国際社会からより多くの支援を得たい」西欧諸国は「欧州への難民流入を止めたい」国際機関は「拠出国から資金調達が得られる新たな枠組みが必要」などそれぞれに思惑があることが指摘されました。
 このようにそれぞれの思惑が一致して誕生したのが「ヨルダン・コンパクト」でした。ヨルダンコンパクトとは2016年に採択された協定で、ヨルダンと国際社会が協力してシリア危機に対応するために定められました。内容はヨルダン政府が西欧諸国から支援・投資を呼び込み、その見返りとして難民に就労許可を与えるなどの支援をするというものでした。

3.経済パート


 次に経済的領域のパートでは「難民・ヨルダン人皆がディーセントワークにめぐり逢い、ともに経済活動の主体となる状態」が理想であるという仮説を基に議論がなされました。(※ディーセントワーク:「働きのある人間らしい仕事」出典 https://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/decent-work/lang--ja/index.htm)
 その理想に鑑みて現在の課題は何なのか。経済的領域のパートではシリア難民・ヨルダン国民双方に共通する「高い失業率」が課題の一つとして挙げられました。

 ヨルダン国民の場合、生産人口の7割となる30歳以下の若者の失業率は30%を超える状況です。(日本の現在の完全失業率は2.2% 出典 https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html) さらにヨルダンの失業・求職者の状況には傾向があり、高い学歴にも関わらず失業・求職中の人が多いことを学びました。このことから「スキル・経験を活かせるマッチング機会の改善」が必要なのではないかという仮説が説明されました。
 対してシリア難民の場合、「限定的」な就労許可が課題として挙げられました。就労可能なセクターは主に農業や建設業などの低賃金で重労働な仕事で、女性の取得率は4%と低い数値になっています。就労許可がなくても生きるために不法就労をしようとしても、強制送還の恐れや金銭的不安定といった不安は依然として残されています。このような課題に対しては援助機関によるキャンプ内での一時的な雇用では中長期的に見て「絆創膏」の効果しか持たないのではないか、よって「キャンプ外での正規雇用を目指す」ことが必要なのではないかと述べられました。

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4.個人の幸福パート


最後の個人の幸福領域のパートでは「幸福」の観点から望ましい「共存」とは「難民もヨルダン人も等しく個人として尊重され肉体的、精神的、社会的に良好な状態である」と定義し、参加者の関心をもとにコミュニティ統合・保健・ジェンダーの3つの分野から現状や課題を発表しました。
コミュニティ統合
 コミュニティ統合パートではコミュニティ統合は難民・ヨルダン人双方の社会への参加意識を高めることで個人のwell beingを高める一助となるという意義を説明したのち、国際機関がどのような支援を行っているのかを紹介し、見えてきた課題についても述べました。
健康
健康パートでは「皆が平等に医療サービスを受けることができること」が理想という前提のもと、格差が複雑化していることが紹介されました。例えばほぼ100%のヨルダン人の子供がワクチンを受けいているのに対し、シリア都市難民の場合結核・ポリオなどの重要な予防接種を全て売っているのは24.5%であったり、保険加入状況での格差、可視化すらされてい
ないメンタルヘルスの問題などが指摘されました。
ジェンダー
最後にジェンダーパートではまずヨルダンにおける女性、セクシャルマイノリティ、女性難民についての現状と課題が発表されました。ヨルダン社会はイスラム教の影響もあり、保守的であるため女性、セクシャルマイノリティの権利に関して未だ十分に着目されていない一方で、私たちが考えるいわゆる「エンパワメント」(=経済的に独立した女性)がそのままヨルダン社会に当てはめることが適切なのかという問いも挙がりました。実際の取り組みとしてはTeenah(https://teenah.org/)やUNHCR Jordanの活動が紹介されました。

5.全体ディスカッション


以上の発表を踏まえて全体ディスカッションが行われ、イスラム文化、イスラムの国とこだわらない、その人の価値観に沿った支援、さまざまなオプションから選べるということの重要性などについて白熱した議論が交わされました。

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このように第3回勉強会では様々な領域から難民とヨルダンの人々との「共存」の形と課題を学びました。勉強会で学んだこと、考えたことをぜひ現地プログラム中に確かめたいと思います。

次回は渡航前直前となる9/7の第4回勉強会「ヨルダンの未来」についてお送りします!お楽しみに。

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