JCヌーボー2025年2月報告「日本の淡水真珠の話」(ゲスト:英虞屋様)



2025年2月のJCヌーボー例会では、英虞屋の坂口氏を講師に迎え、日本の淡水真珠について学びました。真珠に関する情報は海外のものが多く、日本の淡水真珠の歴史や現状を国内のジュエラー自身が理解する必要があるとの問題意識から、本講義が企画されました。

坂口氏と淡水真珠との出会い

坂口氏は希少な真珠や資料を収集し、標本作成を通じてその魅力を伝える活動をされています。滋賀県の淡水真珠養殖復活に関する新聞記事をきっかけに、日本の淡水真珠への関心を深め、市役所への問い合わせや養殖実験への参加を通じて知識を蓄積。さらに、ドイツ人研究者ハースの専門書に触れたことで、真珠を鉱物学・生物学的な視点からも捉えるようになり、独自の辞書的な書籍を執筆するまでに至りました。

淡水真珠とは?

淡水真珠は、河川や湖に生息する貝(主にイシガイ科とカワシンジュガイ科)から採取されます。日本では琵琶湖のイケチョウガイが特に有名です。歴史的には、中国・宋の時代に淡水真珠の養殖が記録されており、日本での成功は藤田正明氏による滋賀県草津市での養殖事業が契機となりました。

無核真珠の発展

淡水真珠の生産性を高めたのが「無核真珠」の技術です。外套膜の細胞片を移植し、真珠袋(パールサック)を形成させることで、核を使わずに真珠を作る方法が確立されました。歴史的に、古代の人々は真珠の生成を「朝露を取り込む」「月の光が影響する」など神秘的に捉えていましたが、顕微鏡の発展と研究の進歩により、そのメカニズムが科学的に解明されました。

日本の淡水真珠産業の発展と衰退

日本の池蝶貝の淡水真珠は、かつてインドの商人によってペルシャやイランへ輸出され、最盛期には滋賀県だけで50億円規模の産業となりました。しかし、過剰な養殖や技術流出によって中国との競争に敗れ、衰退。現在も琵琶湖や霞ヶ浦で細々と養殖が続いていますが、規模は縮小しています。現在の日本の淡水真珠は、中国産の池蝶貝と交雑したものが主流となっています。

産業衰退の要因と今後の展望

日本の淡水真珠産業の衰退は、強力なリーダーシップの欠如、産業保護の不備、養殖者の撤退の容易さなどが原因と考えられます。しかし、坂口氏は「業界の力になりたい」との思いを持ち、今後も真珠に関わる活動を続けるとのことです。

会員の感想から

先生のお話を、興味深く拝聴しました。私は宝飾業界の中でも特に真珠と関わりが深い「真珠屋」ですが、長らく国内産淡水真珠を手にしておりません。恥ずかしいことに、国内産淡水真珠が市場にあまり流通していないことを当たり前と思い、疑問すら持っていませんでしたが、今回お話を聴いたことで、これは真珠に関わる者としてもっと深く考えるべき内容だと痛感しました。
また先生のお話の端々に、真珠への深い愛、真珠という宝石(物質?)に対する知識欲を強く感じました。是非いつか、真珠屋として先生とじっくりと意見を交わしたいです。

竹本さんからの感想


今回の講義では、真珠の歴史、科学的特性、養殖の仕組み、そして日本の淡水真珠産業の発展と衰退について深く学ぶことができました。日本のジュエリー業界にとっても重要なテーマであり、今後も関心を持ち続けるべき課題といえるでしょう。


次回のJCヌーボー予告


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