【飲食店】ワンオペで運営する店舗計画のポイント
ワンオペで運営する飲食店のデザインにおけるポイントをいくつか紹介します。ワンオペで運営するときに特に留意する点として、効率性があげられます。少ない面積の店舗をどのように効率的に使えるかが肝となります。
またワンオペの場合は効率性からくるサービス力によりお客様の満足度を高めることが重要です。デザイナーに依頼する際、以下に留意して相談しましょう。
ワンオペで運営する居酒屋のポイント7点
スペースの最適化
ワンオペで運営するためには、スペースを効果的に最適化することが重要です。席の配置を工夫し、お客様とスタッフの移動がスムーズに行えるようにします。また、キッチンやバーカウンターなどの設備も、効率的な作業フローを考慮して配置しましょう。
機能的なレイアウト
レイアウトは機能的であることが求められます。メインスタッフが料理やドリンクの準備を効率的に行えるように、キッチンやバーカウンターを中心に配置しましょう。また、お客様が注文や支払いをしやすいように、レジや注文カウンターを目立つ場所に配置します。
また臨時スタッフ(アルバイト)がオペレーションに参加したときに動線交錯しないことがストレスの少ない店づくりのポイントにもなります。
簡潔で分かりやすいメニュー表示
ワンオペで運営する居酒屋では、スタッフの負担を軽減するために、メニューの表示を簡潔で分かりやすくすることが重要です。看板やメニューボードの配置方法、リストのグラフィック表現による種類や価格のわかりやすさなど工夫のポイントがたくさんあります。また、オーダーシートや注文用紙もシンプルかつ明瞭に設計できているといいでしょう。
効果的な照明
照明は居酒屋の雰囲気を大きく左右する要素です。ワンオペの居酒屋では狭いテナント空間となることが予想できます。最大限魅力的な空間として表現するスキルとして照明効果があります。間接照明や柔らかな照明を活用して、居心地の良い雰囲気を演出しましょう。また、ダイニングエリアとバーカウンターの照明を異なる設定にすることで、それぞれのエリアを際立たせることも有効です。ワンオペはメインスタッフの技量によってさばける空間が限られてきます。適切な空間を設け、素敵な世界観の中営業しましょう。
フレキシブルな家具とレイアウト
ワンオペで運営する場合、必要に応じて席の配置やレイアウトを変更できる柔軟性が求められます。軽量で移動が容易な家具や、可動式の仕切りなどを導入し、異なるニーズに対応できるようにします。客の取りこぼしを予防するために家具が可動式なのはよいですが、テーブルセッティングの手間もワンオペでは大変になります。前述の機能的なレイアウトとは別の観点による効率的な運営が可能なフレキシブルなレイアウトも重要となります。
着席と立ち飲みのバランス
居酒屋では、着席と立ち飲みの需要が異なる場合があります。席の配置やカウンタースペースの割り当てを調整し、お客様が快適に過ごせる環境を提供しましょう。特に立ち飲みの顧客はサッと入店し、サッと退店し、ギリギリ終電までの時間一杯飲むなどが予想されます。そうした立地条件に合ったバランスを計画することも重要です。
清潔さと衛生面の配慮
居酒屋は飲食店であるため、清潔さと衛生面への配慮が非常に重要です。定期的な清掃と消毒を徹底し、衛生管理の基準を満たすようにしましょう。実際にワンオペの居酒屋の場合清掃や消毒も一人で対応するため、労力となりがちな項目です。清掃のしやすい家具や仕上など、初期段階で検討しておこうと有利に働くことがたくさんあります。手間を小さく、たくさんの仕事をこなせる店舗となるように心がけましょう。
注意するべき物件の特徴
柱が中央にある
物件としては珍しいケースですが、好立地の売りにくい不動産物件としてリーズナブルで手を出したくなる間取りとして見かけます。柱が物件中央にあることで間取りが大変とりにくいテナントです。以下の図のような物件となります。
どうしても柱があるため可視範囲が限られてしまいます。ワンオペで運用する場合は可視範囲内にしか客を案内せず、アルバイトなどによる人員補填ができているときに非可視範囲を監視させましょう。
細長すぎる店舗
面積は十分だとしても細長すぎる店舗の場合は注意が必要です。後述する間口2.8mの最小間口で長さが10m以上あり、10坪程度のちょうどいい面積だとしても、狭い客動線を長く歩かせながら座席案内すると、客同士が当たったり、壁フックにかけたコートなどが落下するなど事故を誘発する場合があります。またカウンター席を拭きに行くのも一苦労です。どうしてもそうした物件をご利用されたい場合は専門家(デザイナー、設計者、店舗工事を得意とする工務店)と相談して決めましょう。
どれくらいコンパクトに計画できるか
最小間口は2.8m
厨房設備には仕様がある程度決まっています。最小奥行の設備を導入することで細い厨房を計画することが可能です。しかしそれでも奥行45cmの厨房設備が最小となります。同時に容量も少なめです。作業廊下を60cm、背面収納を少しお金をかけて造作して奥行30cmの棚を設けるとすれば1.35mの幅の厨房ができます。
カウンター席として厨房機器と重なり20cmを確保することで、実質有効奥行60㎝の食事スペースを設けながら、40cmの必要スペースでカウンターがデザインできます。さらに座席スペースを55cmとすることで廊下幅50㎝を確保できます。
これらの合計値が間口幅2.8mとなります。次の図はそのレイアウト案となります。
※廊下幅50㎝は限界ギリギリで半身で通る幅です。そのため図では厨房から2方向に出られるようにしています。
※座席スペース55㎝はかなり小さい椅子で計画をしています。背もたれは無い椅子として考えましょう。
もう少しキッチンの使いやすさを求めた食事処間口3.5m
しかし厨房設備奥行45㎝を片方だけに設けるとしたら、カフェやバーといった軽食系の飲食店舗でないと厳しいでしょう。そこでもう少し作業性の高い案として45cmと60cm奥行の厨房設備を配置したキッチン幅で必要間口を計算してみました。廊下幅を60cmとして計画すると、厨房幅は1.65mとなります。
料理に力を置いた飲食店とするため、カウンター席は通常のテーブルと同じ高さで計画をしてみましょう。奥行60㎝のテーブルカウンター、座席スペースを55㎝として計画すると廊下幅70㎝となります。
厨房面積は全体の1/2になることが多い
前述の間口2.8mのレイアウトは軽飲食を意識したプランとなっていますが、間口3.5mのレイアウトは焼き鳥屋をイメージして極端に厨房を小さく計画しています。飲食店の厨房割合は1/3が目安ですが、こうした小型店舗だと最小厨房レイアウトの限界から1/2程度まで比率が高まることが多いのを覚えておきましょう。座席レイアウトはカウンターを中心となります。
座席数の算定目安
座席数を簡易的に計算してみましょう。次のリンクに一般的な座席数の算定方法がまとまっています。その計算式を使って算出してみましょう。
例えば22㎡の物件をワンオペで検討した場合、内10㎡が厨房となり、残り10.5㎡が座席スペースとなります(トイレを1.5㎡とする)。すると、10㎡ x 1.1席/㎡で算出することができ、合計11席~12席となります。
ワンオペ居酒屋の先
ワンオペ居酒屋は趣味性を除いて、成功した次の展開として①多店舗経営、②事業売却の2つの展開が予想されます。①を選択する余地は「自分でない人が店に立ち、自分と同じような事業収益を挙げられるか」ということが判断の肝となります。経営の母体として小さくなりがちなワンオペ店舗は初期投資が少なく、比較的事業戦略も容易といえます。なぜなら事業戦略は「店に立つ人の『らしさ』」に左右されるからです。開業時点でそのコンセプトの純度がそのまま店舗品質に反映されます。その「事業再現性」は人に起因するため、ブランドコンセプトだけでは解決しがたい難しさがあります。
まとめ
これらのポイントを考慮しながら、ワンオペで運営する居酒屋のデザインを構築しましょう!効率的な運営とお客様の満足度を両立させるために、柔軟性と機能性を重視したデザインを心掛けましょう。
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