【1分の知識】第5回 自己資金比率の事実
資金調達の大きな柱である自己資金比率のポイントを知っておきましょう!
自己資金比率の把握しておきたい3つのポイントは「①つなぎ融資への実質的影響」、「②総返済額への影響」、「③返済額の目安」です。理想的な生活環境を手配するためにも施主として必要な資金調達と返済戦略は重要な発注者責務です。安心できる将来のために、しっかりと考えておきましょう!
自己資金比率20%-30%が望ましいとよく目にする
資金調達の中でも気になるのは「自己資金比率」だと思います。フラット35などの建設費の100%まで融資可能な住宅ローンがあったりします。自己資金を投資額を抑えておくことで後々の生活を圧迫しない暮らし方も当然選択肢としてありえます。
一方で情報誌を読むと自己資本比率20-30%あることが望ましいとよく目にします。一体その自己資本比率でどれほどの効果があるのでしょう?
つなぎ融資額を抑えることに有効性はあるのか?
住宅ローンは建設工事が完了した段階で最終的に組むローンで、工事が完了するまでは金利が高めの「つなぎ融資」を受けることがほとんどです。それではその影響をざっくり計算して塩梅をみてみましょう。
設計や工事見積もりの調整により予定以上時間がかかってしまうことがよくあります。仮につなぎ融資が6カ月とし、総コスト4000万の計画に対してつなぎ融資割合から計算した利息は
①全額ローンでは約14.5万
②自己資金20%では約9.9万
となります。差額は4.6万です。仮に倍の期間だとしても10万程度の利息差が現れます。4000万の20%である800万円を用意しておくことのメリットが「つなぎ融資」の観点では10万程度の効果となり、あまり魅力的には見えないと思われます。
では本ローン全体で考えると?
次に住宅ローンは長期返済(仮に25年)で考えてみましょう。変動金利をイメージして年利を仮に0.5%でローン期間通じて低金利で試算すると利息は
①全額ローンでは約256万(月額約14.2万)
②自己資金20%では約205万(月額約11.4万)
となります。固定金利(10年)をイメージして年利を1.8%で最後まで同じ金利で乗り換えられたとして試算すると利息は
①全額ローンでは約970万(月額約16.5万)
②自己資金20%では約776万(月額約13.3万)
となります。差額が50万-200万ほどということがわかります。2024年現在において今後金利が上がっていくということは予想されていますが、変動金利がいきなりあがったときは要注意ですが、日ごろから意識して金利を把握しておくことで危険な利息額がいきなり確定することはなさそうです。
4000万の計画において自己資金比率20%用意することのメリットは楽観的にみると50万から200万の負担軽減だということがわかります。まだ給料の低い若い世代が無理やり多額の自己資金を用意することは相続などの関係がない限りなかなか難しいかと思います。
返済額の目安は年収の25%以下に抑えることが望ましいといわれていますが…
いくら借りられるかも重要ですが、返済計画として余裕があり安全なのかも重要な価値判断となります。一般的に年収の25%以下に抑えることが望ましいと言われています。しかし年収が500万の方と年収が1000万の方では、手取りに対して年収の25%がローン返済額であった場合の余裕度は異なります。
仮に独身で年収が500万とすると約390万が手取りとなります。25%をローン返済(月額およそ10.4万)とすると残額265万となります。日々の生活費として月あたり22万程度で暮らすことになります。一方で同条件で年収が1000万とすると約730万が手取りとなり、同比率ローン返済(月額およそ20.8万)としたとき残額が480万となります。日々の生活費として月あたり40万程度で暮らすことになります。このように同じ25%のローン返済額でも余裕度が異なることがわかります。自分の生活条件にあったローン返済額であるかを考えながら決めていくといいでしょう。
変動金利で4000万フルローンで年収500万の単身者が年収の25%をローン返済にあてるとした場合の直近の月額生活費は18.2万
ここまでの検証により変動金利で年利0.5%でフルローンで4000万組んだとした場合月額生活費は18.2万となります。これにすべての生活費が含まれるため、余裕のある生活とまではいかないでしょうが、年収が上がっていく中金利に注意していれば生活がすぐに破綻することにはならないようにも見えます。
このように高額な住宅ローンですが、組み方ひとつで将来設計が大きく変わります。「高い=悪い」ではなく、「高額=質の高い暮らし」となるように賢くお金を使って不動産資産としての住居を活用することがとても重要だと思います。一生を左右する重要な投資故に「満足する全体計画」を金銭面とデザイン面の両方で調整していくことで、人生の豊さが感じられるようになるでしょう
おさえておきたいポイント!
情報誌の数字を丁寧に分析し、的確に判断しましょう
自己資金を多く用意できることはとても素晴らしいことです。しかし直面する生活や、人生の様々なシーンが待ち受ける中、一生懸命貯めておいたお金がどれほどの数字的効果をもつのかを冷静に考えてお金を賢く使って幸せになることが肝心だと思います。
自己資金を投入するのか、お金を借りるために貯蓄を蓄えて自己資金をうまく「使わない」選択肢もあるでしょう。
知識のまとめ
自己資金20%の効果は、限られている。自己資金0という考え方はストイックすぎるが、諸経費と設計監理費の一部として自己資金10%程度用意できれば資金ショートするリスクはほぼなくなる。
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