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ポルト大学3/4(アルヴァロ・シザ)

二つの空間の結節点

学食棟から授業棟の中庭へ通じる階段

授業棟中庭への階段は異なる空間性をもつ場所の結節点である。こういうところに恣意的な「設計者の手癖」が出る。階段側面の石仕上は水平基調の広場空間を突然乱す。こういった上下空間のそれぞれの介入を感じる場所に設計者として手を加えておくのは意思表示ともいえる。現場段階でもデザインに葛藤していたのではないかと思う。

都市像としてのキャンパスデザイン

大通りから見た授業棟

大通り側から授業棟を眺めてみると4つのボリュームがスカイラインを形成している。この大学を一つの都市として考えると、隣接するポルトの街に対してファサードが必要だ。都市には顔があり、都市の特徴を示すファサードが無いなんてことは考えられない。この大学では華やかな講堂を顔とするような配置計画ではなく、授業棟が外部への顔として立ち並ぶ。「授業には同じ内容のものはない」とでも言いたいのか、ボリュームの表情はそれぞれ異なる。しかし一方で仕上げやデザイン手法において統一性がある。個性と統一性の両立を感じる面構えといえる。
このエリアには高い建物が少ないのもあり、この授業棟は4層以上あるため存在感を感じる。この場所に限って言えば、塔のように感じる。しかしファサードとして「街並み」であることを決して忘れないこのボリューム群は、実は林の奥にある既存建築の外壁に沿って並んでる。

階段を上がって見える授業棟の中庭

授業棟の中庭空間は、①移動教室用舗装エリア、②青空教室にぴったりな緑の芝生のエリア、③集会等が可能な砂利のエリアに分かれている。建物デザイン(特に庇や窓の形)のバリエーションに富み、中庭に立つ位置によって街並みとしての表情の変化を感じることができる。建築群による都市像のモデル形成として挑戦した一人の建築家の姿勢を感じる。

緑の芝生広場から見下ろす授業棟

芝生の広場から授業棟を見下ろすと、授業棟間にある低層棟の屋上広場を介して谷合の地形を感じることができる。この授業棟の広場が起伏のあるポルト特有の地形を取り入れた空間ともいえます。建築を学ぶ環境として、単体の建築物だけでなく、都市・地形についても身近に感じることができる設計は地元の建築家ならばでの愛情を込めた設計だろう。

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