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『最長片道切符の旅』を旅する day29 旬の食べものはなんですか?
「『最長片道切符の旅』を旅する」は
宮脇俊三『最長片道切符の旅』(新潮文庫)を忠実にたどる旅の記録です。
前回の和歌山ー大阪ー草津から半年ぶり、『最長片道切符の旅』を再開する。
今回は午後から新幹線で京都、米原から草津に出て山科、近江今津まで。
乗っている時間は正味79分の短距離である。乗った気がしないなあ。
ま、久しぶりの新幹線だし、おいしいものも食べられたからいいか。
(TOP写真はwiki MaedaAkihiko)
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草津 1653(東海道線)1708 山科 1716(湖西線)1820 近江今津
午前中仕事をして、昼食に丸の内北口の丸善で妻と早矢仕ライスを食べて、新幹線で米原まで。米原へは「のぞみ」で京都まで行って「こだま」で一駅引き返した方が早い。出たとこで行こうかと思ったけど、新幹線の中で時刻表をめくって、もうしっかり今日、明日の乗り換えを作ってしまった。
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今回は『父・宮脇俊三への旅』宮脇灯子を持って来た。先生のお子さんで、day14の「汽車に乗るんじゃなかったの?」に出ていただいた娘さんである。父としての先生がよく分かる。この人も昭和の人だったんだな。
先生の奥さんのひと言、「乗り鉄の妻あるある」で笑った。「また行くの?」「まだ行かないの?」はは。分かるわ。夫がいなけりゃ居ないで、妻は楽なんですよね。
さてこの四泊五日の旅では、山科からぐるっと富山、金沢、敦賀を大回りして京都まで帰ってくる。山科ー京都はわずか一駅、距離5.5km、料金190円である。その区間をこれから5日間掛けて回ってくるのだ。894kmの遠回りである。ご苦労さん、という他はない。
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今日は琵琶湖の周りをうろうろする。大津駅は花盛りであった。山科から湖西線に入る。湖西線は高速規格(要するに新幹線規格)で全線高架、直線で早い。高速試験で日本の在来線の最高速度記録である179.5km/hを記録したそうだから(これはいまだに破られていない)早いわけだ。
前方に虹がかかり、太鼓橋のようなアーチになっている。
(特急)「白鳥」はその下をくぐりたいというかのように虹の橋の下に向かって進む。しかし虹はけっして下をくぐらせず、先へ先へと逃げていく。
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琵琶湖に夕陽がかかる。昔からの地名駅「和邇」(わに)、「蓬莱」(ほうらい)「安曇川」(あどがわ)などがある。途中、特急サンダーバードを待ち合わせ。この区間、特急が多くて、普通列車より多いんじゃないかというぐらい頻繁に走っている。
本当は湖西線と北陸本線の乗換駅、近江塩津駅周辺で泊まろうかとも思ったのだが駅前旅館が1軒しかなく、駅の近所に宿が多い近江今津で泊まることにした。宿は駅の近くで素泊まりにしてもらい(どうせ朝は始発で朝食を食べられないので)、宿で教えてもらった「西友」(にしとも)へ食事に出掛けた。
お店で「旬の食べものはなんですか?」「名物はなんですか?」という「黄金の質問」をしてみたら、「もうそろそろ旬が終わりの氷魚(ひうお)のいいのが入っています。釜揚げがおいしいですよ」というので、「氷魚」と名物の「ひつまむし」をお願いした。
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氷魚は鮎の稚魚で、獲れたては透明でうつくしいんだそうだ。ポン酢でさっぱりといただいた。これはもう絶対おいしいやつだ。
ひつまむし、これは間違いなくおいしかった。旅先でこういう予期せぬ味に出会うのが「旅の喜び」というやつなんだろな。
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