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「不易と流行」:斎藤喜博とオンライン日本教育技術学会

『君の可能性』

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1970年に斎藤喜博が記した。
中学生や高校生に「なぜ学校に行くのか」を分かりやすく説き、
文庫版になるまでに42刷となった一冊である。

2020年12月13日(日)
初めてのオンライン開催となった日本教育技術学会

そこでの向山洋一先生のお話、工藤勇一校長先生のお話と重ねて読んでみた。


<1>
向山先生は、学会の最終挨拶の中で、
「どんな子にも可能性があること」についてふれられた。

斎藤喜博の(本書の)教育思想もまさにそこにある。
死刑囚・島秋人のエピソードをあげ、学校で落ちこぼれと言われていた彼が、
死刑を目前として、その才を発揮したことを例にあがている。

人間はだれでも無限の可能性を持って生まれてきているのである。それが残念なことに島秋人の場合は、死刑囚というぎりぎりのところに追い込まれたとき、はじめてそれを表に出す機会がめぐってきたのである。死刑囚となり、吉田先生の手紙にふれ、短歌をつくるということによって、自分の内部にあるものが引き出され、それをきっかけにして他のよい要素がいもづる式に引き出され、拡大していったのである。

向山先生も、かつて学級通信の中で、
死刑囚を取り上げて、「人間の可能性」について言及されている。
(たしかスナイパーだったはずだが、見つからない。谷先生が『特別支援教育誌』の連載で書かれていた。)
(ちなみに、スナイパーには、数々の「斎藤喜博語録」が掲載されている。)

こうした思想があっての「一人一台」であり、「オンライン推進」である。
こうした目的を理解した上で、手段としての「GIGAスクール構想」を現場で実践していきたい。


<2>
工藤勇一先生は、ご講演の中で、
「目的と手段」というロジックを繰り返し展開されていた。
日本の教育は、ヨーロッパ諸国に比べて、「手段が目的化しやすい」
『日本を滅ぼす教育論議』でもお馴染みのロジックである。

これに加えて、「対立を乗り越えるための対話」というお話が印象に残った。
日本は、ヨーロッパ諸国に比べて、戦争や内戦の経験が少ない。
だから、「対話」への捉えに必要感が切実感が弱い。
(という話に私は受け取った。)

この論の展開は大変分かりやすいのだが、
ちょっとした引っ掛かりを感じた。

斎藤喜博は、「対立」について、当時の学生たちの不平不満に寄り添う形で書いている。

こうなっている(父へ15項目 母へ11項目の不満)のは、対立がいつも対立のままでいるからなのであろう。対立した結果、あたらしいものがつくり出されるのならよいが、そういうところがなく、対立のままでいたり、ときには、子どもの意見が一方的に押しつぶされたり、けんかになってしまったりするだけだからなのであろう。

「対立」の先に何があるのか?
「対話」の先に何があるのか?
斎藤喜博は「創造(あたらしいものをつくり出す)」をあげる。
教育の中では、「対立」や「対話」もまた「手段」である。
「対話的な学び」の先にある「深い学び(熱中軸)」の追究をしていきたい。


<3>
創英高校でのQubenaを使った実践は話題性が高い。
https://toyokeizai.net/articles/-/382769

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数学ひとつとっても、
ある生徒は60時間で一年分を
ある生徒は20時間で一年分を終えてしまう。
そうやって一人ひとりの学びのスピードに合わせられるICT活用
しかも、学校で落ちこぼれと言われた子が、ICT活用で学習に集中している。
ものすごい事実だと思った。

これを公立の小学校・中学校レベルで実践していくにはどうすればいいか?
その方法知は示されていなかったが、模索していきたい。
ひとまず、様々な「障壁」を取り除く必要があるだろう。
(例えば、来年度から導入される端末に、アプリ制限がどれくらいかかっているのだろう?)

「障壁」といえば、教師もまた「障壁」になる可能性がある。
斎藤喜博がある生徒から聞き取った言葉である。


「先生というもの、いえ人間誰しも先入観に強く左右されやすい。一度先生に悪い印象を与えると、ずっと悪い子だと思われてしまうような気がする。また先生もそれを態度に示す。だから先生がみんなロボットで、一日一日ちがうマシンに習えたら良いと思う。そうすればこっちがいっしょうけんめいにやれば、それでいいことだから、
 それができなくても、先生はロボットのように感情をころしてほしい。いくら先生だって、生徒のほんとの姿はみぬけないはずだと思う。」

重い言葉である。
ICTの方が、むしろ教師の感情や個性を失わせ、シンプルに学習を進められる。
だとしたら、AI時代における「教師の仕事」はどこにあるのか?


<4>
取り留めのない内容になってしまったが、
斎藤喜博の言葉や文章から、
学会の学びを捉え直してみた。

「新しい酒は新しい皮袋に」とは言うが、
向山行雄先生もおっしゃったように、
不易の中にある本質を落とさず、
それでいて二項対立にならない形で、
学びを実践していきたい。


<5>
2021年は、オンライン愛知大会です。

1 日時 2021年12月12日 日曜日 9:30-12:00(予定)

2 開催方法 オンライン

3 出席可能人数 入金先着1000人

4 テーマ(予定)
  『一人一台端末を使った授業での子どもの変容と高めるべき教師のスキル』

5 資料代  学会員 1000円(非学会員 2000円)

6 入金・申し込み方法 
Peatix 
https://peatix.com/event/1741185/view

7 内容
  (1) 全体会1
  (2) 分科会
  (3) 全体会2
  (4) 総括 向山洋一氏

8 発表者(予定)
  谷和樹氏 伴一孝氏 長谷川博之氏 小嶋悠紀氏 他公募


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