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#この仕事を目指すまでの私【生後6ヵ月で判明した小児がんがきっかけに】~訓練部 柴原永佳 編②~

都内の実家からは2時間の通学時間でしたが、友人たちと新しいサークルを立ち上げたり、バイトをしたり、大学生活は忙しくも充実したものでした。福祉に特化した学科ということもあり、志の高い友人にも沢山刺激を受けました。そんな生活の中、入っていたボランティアサークルのチラシがふと目に留まりました。

「介助犬のお散歩ボランティア募集」

それを見た私は迷わず応募の連絡をしていました。
ボランティアの応募者は私を含めて3人。指示された日時に介助犬使用者の方の自宅に行き、説明を受けることになりました。なんと、大学の隣の駅に介助犬と暮らしている人がいたのです。
その方は川本さんというリウマチ患者の女性で、介助犬ココアと一緒に暮らしていました。ゴールデンレトリバーの女の子のココアはモコモコで、優しくてまっすぐな瞳が印象的でした。

それほど頻繁にお手伝いに行けるわけではありませんでしたが、川本さんのお宅にお邪魔した日はココアとお散歩をして、川本さんとお話をして時間を過ごしました。川本さんのご自宅で一緒に過ごす中で、ココアが川本さんのお手伝いをする様子や川本さんの生活の工夫を目の当たりにしていました。
ササっとお仕事をこなす犬のイメージを持っていた私は、思っていた以上にゆったりと動くココアに拍子抜けしたところもありましたが、ココアを「相棒」と呼ぶ川本さんと、その川本さんをじっと見つめるココアの姿は本当に素敵で、今でも目に焼き付いています。

時が経ち、実習などでボランティアになかなか行けないなか、川本さんは2頭目の介助犬レイとの暮らしをスタートしていました。ココアとは違い、お嬢様タイプのレイと初めて散歩をした時には、犬の性格の違いの面白さを実感しました。

そんな中、川本さんから「ヨッテク(ヨコハマヒューマン&テクノランド)に遊びに来ない?」という誘いをいただきました。ヨッテクは横浜市リハビリテーション事業団が主催する福祉機器展で、補助犬のブース出展やデモンストレーションがあるイベントです。
私もお話をするから、と誘われて行ったヨッテクで、初めて介助犬のデモンストレーションを生で見ることになります。そこには尻尾を振って楽しそうに仕事をする犬の姿がありました。
私は川本さんに盲導犬訓練士を目指しているというお話をしていましたが、川本さんとの出会いを経て悩んでいました。介助犬育成に関わってみたいという新しい気持ちと、小学生から目指していた夢を変えて良いのかな、という自分への葛藤。
しかし、ヨッテクに参加したことで自分の迷いが消えることになります。

私は介助犬に関わる仕事がしたい。

そこからは卒後の進路選択に迷うことはありませんでした。
ただ、大学3年のゼミ選択でまた悩みが。私は相談支援を専門にする教授のゼミを希望していたのですが、希望のゼミの選考に全て漏れてしまったのです。大学側から入るように促されたゼミは法律や制度を専門とする教授のゼミでした。固いことが少し苦手な私はその教授の講義は正直得意ではありませんでした…。(よくよくお話をしていくと、恩師が厚労省時代に補助犬法について縁があった方ということが分かっていくのですが。)
教授との初の顔合わせの際、「介助犬の仕事がしたい」と伝えると、思いがけない返答が返ってきました。

「介助犬?」

私は衝撃を受けました。え?福祉を専門にする大学の先生なのに介助犬を知らないの…?

他の先生方に聞いても、社会福祉士がどのように介助犬に関わっていけるのか、明確に答えてくださる先生はいませんでした。
それもそのはず。介助犬に福祉専門職が関わっているということは卒業後10年以上経った今もまだまだ知られていないのです。

狭いコミュニティの中でも現実を知った私は、恩師に限らず、友人たちにも自分の目標を話していきます。自分が話すことで将来福祉関係の現場で働く仲間に介助犬を知ってほしかったのです。
恩師も私の勢いに押され?沢山勉強の機会と人とのご縁をくださいました。
もし本当に私が介助犬協会に就職できたら、学生に講義をする機会を作って欲しいというワガママにも希望通り応えていただき、今も大学での年に1回の講義は続いています。

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そうして、2010年、日本介助犬協会の第5期研修生として、夢に見ていた介助犬の分野に足を踏みいれることができました。
幼い頃の闘病経験、人々との出会い。それらがなければ今この仕事に就いていることはなかったと思います。
私は全ての出来事、出会いに意味があると思っています。この想いを胸に、全ての出会いに感謝をし、これからも介助犬育成普及に携わる一員として頑張っていきたいと思います。

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社会福祉法人 日本介助犬協会
介助犬1組の育成には240万円~300万円ほど費用がかかります。 みなさまのご支援をよろしくお願いします!