郷土の発展につくした先人
土木学会事務局です。
大人が読んでも面白い、ためになる児童書を紹介する不定期掲載「土木技術者も読みたい児童書 #土木の本 」シリーズ、今回紹介するのは2021年4月に刊行されました「しらべよう!47都道府県 郷土の発展につくした先人」(刊 偕成社・監修 北 俊夫)全5巻から、第1巻「開発」です。
各巻47都道府県から、地域の人びとのためにつくした先人を紹介するという本書。「開発」「教育」「医療」「文化」「産業」の5巻でシリーズが構成されています。各巻では、それぞれのテーマに関する10人の先人を大きく取りあげ、そのほかに37人を取りあげて、全47都道府県の先人が紹介されています。
第1巻の内容
第1巻の「開発」は、それぞれの土地の問題解決に立ち上がった先人たち。
荒れ地に水を引いて豊かな農地に変えた先人、雪深い土地に鉄道を敷いた先人、ノミやツルハシで固い岩石を掘りぬいて用水をつくった先人、川の土砂災害を防ぐため砂防堰堤をつくった先人など、努力と根気と行動力で人びとのために尽くしたパイオニアたちが登場! -偕成社HP 内容の紹介より
表紙は、琵琶湖疏水を築いた田辺朔郎 第17代土木学会会長です。
田辺先生のほか、第1巻で大きく取りあげられた10人の先人はこの方々。
「風の松原」の栗田定之丞(秋田県)
「那須疏水」の印南丈作・矢板武(栃木県)
「上越線」の岡村貢(新潟県)
「立山砂防」の赤木正雄(富山県)
「七ヶ用水」の枝権兵衛(石川県)
「諏訪の繰越堰」の坂本養川(長野県)
「琵琶湖疏水」の田辺朔郎(京都府)
「豊稔池」の加治茂治郎(香川県)
「種子島」の松寿院(鹿児島県)
「羽地大川」の蔡温(沖縄県)
いずれの方々も、現代に続く地域の土木インフラを築いた「土木偉人」です。これらの方々の思い・願いや工夫・努力と、その業績による地域の変化が豊富なイラスト・写真をつかって分かりやすく紹介されています。土木学会関東支部も土木学会選奨土木遺産にも指定されている「上越線清水トンネル関連施設群」の写真を提供しています。
またこのほかに紹介されている37名のパイオニアも、中川吉造 第18代土木学会会長のほか、地域の礎を築いた「土木偉人」の方々。知らない名前の方が多かったので、改めて勉強になりました。
現代のわたしたちの生活で、当たり前のように存在し、いま普通に暮らしていけるための礎が、先人たちによって築かれたこと、その礎の上に、さらに多くの人たちが、守り・支えるための基盤を築き、維持していることに気づくことができる本になっています。
「過去」が「いま」を支えているように、「未来」から見たときに「過去」である「いま」、未来を支えるものを、残し、新たになにを築くのか、考えてもらえるきっかけにもなるのではないでしょうか。
第1巻「開発」がちょっと面白いのは、先人の物語だけでなく、先人はどのようなところにインフラを築いたのか、地形図とあわせた調べ学習ができるようになっているところ。地図の等高線から地形を読み取り、どのような地形にインフラを築いたのかを調べる見方を紹介しています。路線計画や堰堤設置位置の検討のようで、土木の仕事そのものが学習になりそうだと感じました。
土木学会では-土木偉人かるた-
土木学会では、土木の分野における先人の功績と土木事業への想いを題材に48人の土木偉人を紹介した「土木偉人かるた」を3年前に制作しています。土木偉人かるた公式ツイッター(@dobokuijin)では48人の土木偉人を順次ツイートで紹介しています。これまでのツイートを一気読みしたい方はこちらから。
今般、48人じゃ足りない!ということで、第二弾制作を目標に、あらたな取り組みがスタートしました。全国的に有名ではないけど、地元の人なら知っているという土木偉人をご紹介ください。
来週6/15には、わがまちの土木偉人、知られざる私だけが知っている土木偉人、よくわからないけど気になる土木関係者などなど、土木偉人愛好家が熱く語り合う「土木偉人イブニングトーク」の第1回を開催します。詳しくは以下の記事から!
土木技術者も読みたい児童書
ひきつづき「土木」に関連するこども向けの本を大人向けに紹介していきたいと思いますので、絵本クラスタ・児童書クラスタのかた、絵本・児童書の出版社の中の人のみなさま、土木・建機・防災など弊会の方々が興味をもちそうなオススメの絵本・図鑑・児童書があったら「#土木の本」のタグをつけて、noteやtwitterでご紹介ください!土木学会note Twitter(@JSCE_note)をフォローいただいてDMで直接連絡していただいても結構です。よろしくお願いいたします。
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国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/