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2020インフラ健康診断書(水道部門)
土木学会事務局です。
土木学会では2016年度より、「インフラ健康診断」の取り組みを行っています。これは、土木学会が第三者機関として、橋やトンネル、上下水道などの社会インフラの健康診断を行い、その結果を公表し、解説することにより、社会インフラの現状を広く国民の皆さまにご理解いただき、社会インフラの維持管理・更新の重要性や課題を認識してもらうことを目的としています。
今回は2020年度の健康診断結果から、「水道部門」の健康診断結果と健康状態の維持向上のための処方箋をご紹介いたします。
診断結果は、健康度(現在の状態)がC(要注意)で、維持管理体制(維持あるいは回復するための日常の行動)が、横向き(現状の管理体制が続けば、現状の健康状態が継続すると考えられる状況)とされました。
以下、「水道部門」の健康診断結果と処方箋を解説いたします。
水道管路の特徴
日本の国土には約68万km(2016年度現在)の管路が布設されており、このうち法定耐用年数を超過する管路の割合は約15%にのぼる一方、管路更新率は0.75%と低い上に近年低下傾向にあります。このため、すべての管路を更新するには単純計算で130年以上かかることとなり、法定耐用年数(40年)を超過する管路の割合がさらに増加することが見込まれています。本診断では、このうち約63万kmを占め、利用者に水を配るための配水管路を診断の対象としています。
2013年度に策定された新水道ビジョンでは、地域とともに信頼を未来につなぐ日本の水道を基本理念とし、安全・持続・強靭をキーワードに施設の再構築、適正な維持管理、資産管理の活用(アセットマネジメント)、人材育成などによる取り組みを促しています。
また、2018年の水道法改正では、水道事業の基盤強化を図るものとして、広域連携、資産管理、官民連携などについて定められています。
現在の健康状態
管路の布設から年数が経過すると、健康状態は悪化していくことが想定されます。特に、法定耐用年数を超過した管路は、老朽化による漏水のおそれがあります。管路からの漏水量が増えると、配水量のうち利用者に届けることができない水量の割合(無効率)が増加するおそれがあります。給水人口が多い大規模事業体は、法定耐用年数を超過する管路の割合が高い一方で、管路の漏水の代替指標である無効率は小さい結果でした。無効率は、経過年数のほか、配水過程の管理状態を反映しているためと考えられました。法定耐用年数と無効率の2つの指標に基づいて、わが国全体としてはCの評価になりました。給水人口規模別で見た健康度は、大都市が比較的良好な状態にあり、規模が小さくなるにつれて健康度が悪化する結果となりました。ただし、規模が小さくなるほど各指標のばらつきが大きいことには注意が必要です。
維持管理体制
水道管路の維持管理体制として、漏水修繕率と事業体の技術系職員数(技術職・技能職・委託のうち技術系職員)の増減から評価を行いました。漏水修繕率は、漏水量(修繕された漏水量)と無効水量(全漏水量の代替指標)との比を指標として、評価を行いました。技術系職員数(委託含む)については、5年前と現在の比較を行ったところ、減少傾向にありました。
これらを総合した結果、維持管理体制は横ばいであると評価しています。昨年度は下向きでしたが、小規模事業体における漏水修繕率に、やや改善傾向が見られたため、このような結果となりました。
健康度の維持・向上のための処方箋
国は、水道事業者が管路の維持管理および更新を、適切に行うために必要な、技術的および財政的な援助を行う。
地方公共団体は、管路の維持管理および更新を、適切に行うために必要な基盤強化のため、水道事業者の広域的な連携を推進する。
水道事業者は、管路の維持管理および更新を適切に遂行し、また、それに必要な人的および財政的資源の確保に努める。
研究機関は、管路の維持管理および更新を、より効率的に行うことのできる技術開発などを検討する。
学協会および教育機関は、上記を実現するための人材育成と技術力向上の取り組みを継続的に行う。
国および地方公共団体は、その他、事業継続に影響を与える大規模災害などへの対策を推進する。
健康診断書の解説動画
土木学会では2020年6月16日にインフラ健康診断書の結果を受けて講習会を開催しました。水道部門・下水道部門の診断結果の解説動画(約14分)を以下でご覧頂けますので、あわせてご覧下さい。
インフラメンテナンス総合委員会
現在土木学会では、インフラメンテナンスを力強くなおかつ恒常的に位置づけるため、既存の関連委員会を発展的に統合し、会長を委員長とする「インフラメンテナンス総合委員会」を2020年度から常設し、活動を推進しています。活動予定など、最新情報は以下のサイトでご確認ください。
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