「コロナ後の”土木”のビッグピクチャー」を描くために
はじめに
我が国は、少子高齢化・人口減少、地球環境、エネルギー問題に加えて、激甚化する自然災害への対応、さらには新型コロナの感染拡大の影響により生活経済社会が危機的状況にあります。一方、グローバル化の進展に伴う国際競争の激化、IT、DXの進展等々早期に対応すべき課題も山積しています。
コロナ感染の早期収束は急務ですが、土木学会では、コロナ後に向け、今を「転換」の時と考えています。生活経済社会、そしてインフラと公共事業の在り方やシステム・制度を転換し、将来世代の活動を支える未来のためのインフラを、今考え、準備しておくことが肝要と考え、2021年度の会長特別委員会として「コロナ後の”土木”のビッグピクチャー」特別委員会を設置しました。
谷口博昭第109代土木学会会長は、このビッグピクチャーに取り組むにあたっての想いを2021年6月の会長就任あいさつで語っています。
この特別委員会では、転換を実現するために、内外の多くの方の声を聴き、産学官の活発な議論を促進し、ありたい、望ましいと考える将来の国土・地域の姿を描くとともに、内外に開かれた魅力溢れる土木学会と土木技術者の社会的地位の向上を盛り込んだ、現時点における「コロナ後の”土木”のビッグピクチャー」の策定と、社会全体が、未来のために「ビッグピクチャー」を描き続ける風土を醸成することを目的としています。
「ビッグピクチャー」とは
ビッグピクチャーとは、「多くの人々が信頼して共有しうる全体最適の将来見通しや全体俯瞰図」を指します。(土木学会誌2021年7月号新会長インタビューより)
今回の取り組みにおいては、多様な価値観の時代において、絵姿・答えありきでない、それぞれの主体が他人任せでなく、主体的にそれぞれが思い描く未来の姿や未来への想いを表明し、語り合い、切磋琢磨するプロセスを経ることによって、時代に合致したストーリーやナラティブを紡ぎ、そのストーリーやナラティブを実現するために必要な制度や取り組み、土木の立場からはそれらを基盤=インフラとして支える夢・希望の持てるプロジェクトが浮かび上がって来ること、そして最終的なアウトプットとして「ビッグピクチャー」(全体俯瞰図)を描き出そうと考えています。
そして、描いた未来像の実現に向けた取組を進めるとともに、「ビッグピクチャー」を不断の取り組みとして描き続ける風土の醸成を目指します。
どのように検討するか
ビッグピクチャーの検討は、市民の方々や、各地方で取り組みを行っている方々などから、広くこの国や地域の、ありたい、望ましい未来の姿についてさまざまなご意見を伺いながら、土木が直接担う分野に留まらずに、これまでの延長上でない、暮らし方・働き方、政治・経済制度や社会を支える基盤=インフラのあり方を転換し、未来のために何が必要かを考えていきます。
土木学会誌2021年度会長特別企画
土木学会誌では、谷口博昭会長の掲げる「土木のビッグピクチャー論」をテーマに、各界のリーダーと話し合う特別企画を掲載しています。土木学会誌は土木学会会員向けの機関誌ですが、この特別企画の誌面のPDFは土木学会誌ホームページでどなたでもご覧頂けます。
2022年3月時点で5本の記事を公開していますので、あわせてお読みください。
■2021年7月号 インタビュー
産学官の垣根を超えた議論で「ビッグピクチャー」を描こう
■2021年9月号 座談会
コロナ後の政治経済社会とインフラの未来を語る
財界から三村明夫氏、言論界から橋本五郎氏をゲストに、コロナ後の日本社会の進むべき道を探った。
政治・経済・インフラの変革で課題山積の時代を乗り越える
コロナ禍で社会が「危機」を共有。将来の施策への舞台が整った
政治や行政の課題もコロナを機に明るみに
農業と観光×若者が地方創生のキーワード
長期計画を明示し国の責任で格差なくすインフラ整備を
インフラの果たしている役割を共感を持って理解してもらう
■2021年11月号 座談会
アフターコロナへ向けた分散型国土づくりと地方創生
全国知事会会長の飯泉嘉門氏、全国市長会会長の立谷秀清氏をゲストに、コロナ後の日本社会の進むべき道を探った。
人口減少、災害列島、新型コロナ 三つの国難に立ち向かう日本
人口維持は地方創生の大前提「食える農業」を目指して
DXを駆使して医療と教育の格差を是正
地方ごとの特色を生かし新次元の分散型国土創出へ
震災復興の「命の道」が呼んだ 地元経済活性化の副次効果
確実な償還計画に裏付けされた 大胆なインフラ投資の好機
■2022年1月号 会長新年挨拶
コロナ後の日本創生と土木学会の果たすべき役割
■2022年1月号 座談会
シンクタンクと土木学会が連携し産業基盤のパラダイムシフトを牽引
日本を代表するシンクタンク、日本総合研究所会長の寺島実郎氏をゲストに、コロナ後の日本と土木、インフラのあり方を議論した。
「総合エンジニアリング力」が日本創生のキーワード
基盤産業の基本モデルを考え直しパラダイムシフトで成長を促す
豊かさを実現する産業構造から安全・安心を高める産業基盤へ
シンクタンクと土木学会が連携し社会ニーズの「産業的解決」を
一緒に考えていただければ
今回の検討で発信するのは、正解でも結論でもありません。この時点で示す将来についての一つの切り口、考え方であり、土木学会からの提案です。
よりよい国土や地域、社会や暮らしの姿を多くの方々と一緒に考え、ありたい未来の実現に向けた取り組みを、多くの方々と一緒に進めていきたいと考えています。
暮らしたい未来のまち
先日開催したnoteコンテスト「暮らしたい未来のまち」もこの検討の一環となっています。土木の分野の専門家だけでは気づけない、気づきにくい視点やアイデアを、将来の姿に描き込んで行ければと考えています。
「#暮らしたい未来のまち」のタグはこれからも残ります。多くの方に、土木学会の発信なども参考にしていただきながら、これからも多くの方に未来の姿を描きつづけていただければと思っています。
ビッグピクチャー・イブニングトーク
今回の「ビッグピクチャー」の議論にあたり、検討メンバーが考える将来像などをお伝えしていく「ビッグピクチャー・イブニングトーク」をウェビナー形式で開催し、アーカイブ公開を行っていきます。
第1回は、「コロナ後の”土木”のビッグピクチャーとSFプロトタイピング」と題し、11/10(木)17時にzoomウェビナーで開催します。Youtubeでも同時配信予定です。ご興味ご関心いただけましたら、ご視聴ください。
コロナ後の”土木”のビッグピクチャー特別委員会
検討は、谷口会長を委員長とした「コロナ後の”土木”のビッグピクチャー特別委員会」で検討しています。議論の内容は、議事録要旨とともにグラフィックレコーディングを用いて発信しています。以下note記事からご覧ください。