日系金融にいる東大卒の特徴

今回の記事では、日系金融に在籍している東大卒の特徴に関して述べたいと思う。
厳密には保険は金融ではないというツッコミを受けそうだが、今回は以下を日系金融と分類して今回のテ―マに関して考えてみたいと思う。

メガバンク
証券
生保
損保
信託銀行

クレジット、リ―スに行く東大卒はあまりにも少ないので一旦除外した。
また専門職採用は難易度が高く、東大生でもそれなりの対策が必要なので、今回はいずれもオ―プン採用と仮定して考える。政府系金融機関も一部は日系金融と同程度のレベルのところも存在するが、基本的には難関であるので今回は別枠で捉えることにする。

日系金融に入る東大卒には共通した一種の特徴があると考えている。今回は、それらの特徴に関して考えてみたい。もちろん全てに当てはまるわけではないと思うが、ある程度共通する部分として列挙させていただきたい。

尚、筆者自身も日系金融のオープン採用コースで拾われた身であり、以下の多くの特徴に当てはまる点は補足しておく。
また、近年は多くの日系金融にて、業務の集約化、効率化に伴いオープン採用の数が著しく減少しており、内定を取るのはひと昔前と比較して格段に難しくなっている点には注意されたい。

それでは以下に彼らの特徴を羅列していく。

1.ガクチカは弱いもしくは無し

これは筆者自身にも他の多くの日系金融内定者にも当てはまる最大級の特徴である。一般的には、就活市場では留学や体育会更には長期インターン等のガクチカは強いとされる一方で、塾講師、サークルなどのエピソードは弱いとされる。筆者自身は体育会、長期インターン、留学のいずれも経験したことが無く、また長期インターンに至っては学生時代はその存在すら認識していなかったと思う。
東大生で上記の強いガクチカを有しており、それらを面接できちんと話せるのであれば、総合商社やデベロッパーにも十分行ける可能性がある。それらが無いので、日系金融に落ち着いてしまう訳である。
あくまで筆者の周りだけかもしれないが、これが早慶、Marchあたりになると日系金融であっても強いガクチカを有した学生が結構な割合で存在する。
この弱いガクチカ、ガクチカ無しであっても内定を取れる辺りに「東大」と言う学歴の威光が存在するのかもしれない。
筆者自身もガクチカは無かったので、適当な塾講師の話をしていたが、そこには何一つ「物語」のようなものは存在していなかった。

2.発達障害系が高頻度で混じっている
更に言うと東大卒であれば、発達障害系であっても内定を取れてしまうのが日系金融の恐ろしいところかもしれない。
筆者自身が明らかに発達障害系であるし、これまでに見てきた事例でも結構発達障害系の東大卒が日系金融に交じっている。

発達障害系の東大生が入るのならどれが良いかと言う観点で考えてみたい。上記の5分類の日系金融の中では、オープン採用に占める東大卒の数は以下の通りである。

メガバンク>>>損保≻≻証券=生保≻信託

後ろに行けば行くほど当然ながら東大生の希少価値は上昇する。
昔は、日系金融のオープン採用で入社した場合は、メガバンクは必ず支店スタート、メガバンク以外はいきなり本社もありえた。

実は発達障害系の東大卒にとっては、東大生の希少価値が低く、必ず支店スタートであるメガバンクが一番しんどいかもしれない。
ただこれも後述するが、実は東大卒の場合は、最初の支店スタートもお飾りであることが多く、何も成果を上げていなくとも次の異動では本社のコーポレート部門に異動することが多いので、成果とか気にせず過ごせばよいと言う発想も良いかもしれない。

損保、証券、生保、信託のいずれも支店スタートの可能性があるが、多くの東大卒は本社スタートの可能性が高い。
仮に支店配属を引いてしまった場合に損保、証券はかなりきつそうな印象である。こちらはメガバンクの支店よりもしんどい可能性がある。
信託は、そこまで東大卒が多くなく、2社しか存在しないので、今回は考えない。ただ支店配属であっても、損保、証券、メガバンクよりはマシそうだ。

そう考えると、多くの東大生が積極的には進まないゆえに相対的に希少価値が高くなりやすく、また資本集約的な業態にカウントされる生保は発達障害系の東大卒にはオススメの進路かもしれない。
筆者の友人の中でも生保にオープンコースで入ったものは、資産運用部門に配属され、証券会社を顎で使っているようだ。

3.実は冊子掲載の常連だった連中も
日系金融に入るような東大生は、ギリギリで東大に合格した連中なのではないかと思われるかもしれない。筆者は入社後に昔の東大模試の成績優秀者一覧を見たことがあるが、文2上位トップ10に入っている連中(複数名)が普通にメガバンクとか損保に進んでいたので、実は大学受験時点での成績と就職活動での実績にはそこまで明確なパフォーマンスの相関関係はないのかもしれない。筆者自身も浪人時代は何回も冊子に掲載されていたので、別に筆者と同じ境遇の人が複数人いることには特段違和感はない。
彼らは大学受験の段階で、魂を吸い取られてしまっている。もしくはそもそも東大に入ることが人生の至上命題だったタイプも多い。
何を隠そう筆者自身もこのタイプであったので、このタイプの東大卒の気持ちは本当に痛いほど分かるというのが正直なところだ。

4.大学時代に何らかの挫折をしている

筆者自身もそうだが、日系金融に進学するタイプの東大生は大学時代に何らかの挫折をしていることが多い。
ここでいう挫折は別に何でも良い。
サークル活動が上手く行かなったとか、一人暮らしで生活が崩壊してしまったとか、進学振り分けが上手く行かなったとか、留年してしまったとか、就職活動が上手く行かなかったとか。本当に何でも良いのだが、何らかの形で挫折を経験しており、その経験から自信を無くしてしまっている者が多い。そして興味深いのは、この挫折の経験は、結構尾を引くみたいで、一度人生に対してネガティブな印象を持ってしまった者の意識は、なかなか昔の意識の高さには戻れないみたいだ。
労働の世界でも一度解雇される等の傷を負った者は、二度と昔のような勤労意欲で仕事に取り組めないようで、これを「傷跡効果」と呼ぶみたいだ。
所謂トラウマのようなものに日系金融入社組の東大生は苛まれているのかもしれない。

5.入社後も基本やる気はない、受身
彼らの最大の特徴かもしれない。
基本的に、所謂無キャである彼らは、業務に対しては受け身の姿勢であるし、キャリアに対しても特段展望がある訳ではない。
また転職市場に出ていくわけでもない。勿論目の前に与えられた業務はきちんとこなすのだが、自分から主体的に何かアクションを起こすわけでは無い。資格試験の勉強も全員が全員熱心に行う訳ではない。
ある意味彼らは人生に対して悟りを開いているとも言える。
下方就職であることも手伝ってか、彼らはさも余生を過ごしているように思える。
こちらについては以下のイブリースさんの「東大卒JTC余生論」の記事が詳しいので、ご参照頂きたい。


6.インカレの運動系サ―クル出身者が多い

これも明確に当てはまる。以前に以下の記事で述べた通りであるが、東大の文化系サークルは結構レベルが高く、無キャの東大卒では到底ついていくことが出来ない。また文化系にいる東大卒は角が立っていることも多く、それらの東大卒は日系金融はあまり採用したがらない。
東大卒であればやる気は無くとも良いので、角が立たない者を採用したいというのが日系金融の面接官の本音だと思う。

日系金融では創造性や革新性は要求されないので、運動系サークルで日々女子大生と戯れることを生業とする寝そべり族系の東大卒と相性が良いのだ。何にも興味・関心がない無キャ系の東大卒が一番日系金融にはフィットする。

7.ドメスティック志向で海外嫌い
これも日系金融のオープンコース組に当てはまる。
彼らは基本的に何にも興味がない傾向にあり、「海外、グローバル」もその例外ではない。
というか海外やグローバルに興味がある者は留学等をしているので、その時点で就職活動では優位に立つことが出来、総合商社等に入ってしまう。
筆者が話してきた多くの日系金融の東大卒は、海外に行くくらいなら、地方の温泉が充実したエリアに飛ばされたいと本気で思っているようなメンツである。
また後述するが、日系金融には地方出身組が多いことも関係していると思われる。彼らは、都内出身と比較して文化資本の面で劣っていることが多く、実用的な英語を使いこなせる訳ではない。
東大入試を突破できることと、英語を実用的に使いこなせるかというのはまた別の話であるのだ。この点では、明らかに早慶や上智、ICU辺りの帰国子女の方が優位な立場にあるだろう。
当然だが、彼らは海外勤務には全く興味関心がないのだが、一定程度東大卒で成果を上げていると、海外勤務になるものが出てくる。
それも金融なので新興国ではなく、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、香港のような先進国である。
彼らは本当はそのような地でバリバリ働きたいわけでは無いのに、下手に東大卒という肩書を持ってしまっているせいで海外勤務を余儀なく強いられることになる。

8.都内出身者の割合は高くない
日系金融に入る東大生の多くは、非首都圏出身者である。これは就職活動への注力具合と情報格差によるものだ。
当たり前だが、実家というバックオフィスが常に多くの雑務をこなしてくれる実家勢と比較して地方出身者は就職活動で不利だ。
また首都圏出身者はエリサラである父親を有していることが多く、就職活動の段階で何らかのアドバイスを貰える可能性が高く、日系金融のオープンコースは反対されるのかもしれない。
そのような複数の要因を背景にして、日系金融に入ってくる東大生は非首都圏出身者で多くを占められるようになる。

この論点に関しては、以下の記事も参照されたい。

9.配属は優遇される
これは割と明確で、金融業界は学歴厨なので、東大生の配属はかなり優遇されていると思える。メガバンク以外であれば、本社スタートは珍しくないし、メガバンクであっても支店配属はあくまで初期配属だけに留まることが多い。
ネット上の記事では、メガバンクの支店でMarch卒に営業成績が~みたいな記事を見たことがあるが、筆者の感想としては、「そもそも東大卒の中堅で支店に配属されている奴とか見たことないけど」と言うのが本音で、あれは東大を貶めたいライターが架空のストーリーをでっちあげたのではないかと考えている。

また最初の配属以降もその成果や働きぶりに比して優遇された配属をされるものが多く、基本的には本社勤務が長くなるイメージだ。
フロントの専門職は部門別採用が行われているので、そこには食って入ることは出来ないのだが、コーポレート系の間接部門に多くの東大卒は配属されている。
これは後述する部分と繋がってくる部分なのだが、日系金融にいる東大卒の多くは温室育ちなのである。

10.実はここが東大文系の中間層
日系金融に入る東大卒にはどうしても本意ではない、就職活動が上手く行かなかったというネガティブなイメージが付きまとうが、実際には、東大生であっても日系金融に入れる東大生は中の上から中の下の層である。
各形態のトップ企業に入れるのは恐らく、上位3~4割程度、それ以外の2番手以降であっても少なくとも上位半分くらいには位置している必要がある。
ひと昔前であれば、メガバンクで各30人程度、それ以外で合計100名程度はいたと思うので、日系金融の入社する東大生は実は200人も存在した。
勿論トップ層でないことは明白なのだが、かといって落ちこぼれとも明確には言えない本当に中間層なのである。

11.嫌な奴はほとんどいない、むしろかなり優しい
最後のこの部分が日系金融にいる東大生を表すのにふさわしい特徴だと思われる。
東大在学中は、結構競争的な東大生や意識の高いものにも遭遇してきたのだが、日系金融に入るとそのような東大生は見なくなった。東大生ってこんなに優しかったっけ?と言う錯覚に陥ってしまったのだが、勿論東大生が全員優しいという訳ではなく、実際は「そのような」東大卒が日系金融に入っていきている、と言うのが正しい実態であると思う。
日系金融の中でも比較的競争的で厳しい社風と言われるような会社であっても東大卒だけは何故か優しいという事は往々にしてあった。
彼らが優しくなる理由がこの記事のサマリーになるのかもしれないが、以下のような要素があると思われる。

・基本的には無キャで自分に自信がない
・挫折を経験しており、人の気持ちが分かる
・競争社会に興味がなく、他人を出し抜く必要性を感じていない
・勝手に配属が優遇され、基本的に温室育ちで過ごしてきた
・人生や仕事に対してさして興味がない
・東大入試突破が至上命題であり、社内の出世はおまけでしかない(余生マインド)
・そもそも当たり障りのないメンツが採用されている

この部分が筆者が今回の記事で一番強調したかった部分であり、かつ今回の記事の本質的な部分でもあると思う。
日系金融には陰湿な人も多いと言われるが、上記のような要因を背景に東大卒だけはその限りでないことが多い。勿論これは京大や東工大にも当てはまる。

上記が筆者が見てきた、東大卒で日系金融に進む者の特徴である。総じて言えるのは、彼らの多くは「東大までの人」であるのだが、金融機関は基本的に学歴主義が強く、そこまで悪くないポストに収まっているというのが筆者が見てきた多くの者に当てはまる。
そして同時に金融業界は、元々利益率が高く、彼らはその能力やパフォーマンスに比して好待遇を得ている。これが彼らにある種の「認知的不協和」を生じさせる原因ともなり、「椅子理論」のような考え方を生み出す原因ともなっているのだ。

金融業界は確かに仕事はつまらなく、厳しい業界ではあるのだが、学生時代に何もしてこなかった自覚がある無キャ系東大生は一度が検討の余地があるかもしれない。