高学歴が進みがちなのに発達障害東大卒が進んではいけない業界・職種に関して考察してみた
こちらは以前頂いたコメントから着想を得たものである。高学歴発達障害に向いている職場とは反対で、進んではいけない業界・職種に関して考察してみたい。
発達障害といっても、その種類は多様であるが、この記事では主にASDの場合にどのような職種を選択してはいけないのかに関して考察してみたい。ADHDは業務上遂行上でそこまで困難になることは少ないというのが理由だ。周囲をみていてもADHD単体の場合はそこまで苦労している方は少ない一方で、ASDの場合はかなり苦労しているケースが多い。
ASDに向かない職場とはどのようなもので、どのようなものがあるのか具体的な職種・業界の例も出しながら今回は考えていきたい。
以前記事のコメントでは以下のような特徴を満たす業界・職種は選択すべきでないと述べさせていただいた。今回は下記のポイントに関して更に深堀するためにコメントを付記した。
・臨機応変な対応が必要な業務
・文系総合職
・体育会系
・企画職(定義が曖昧)
・出張が多い
・長時間労働が必要
・手先の器用さが要求される
(コメント)
【業務内容がその都度変化に富み、臨機応変な対応が要求される職種】
→ASD的な特徴を有する発達障害者は、臨機応変な対応が苦手であることが多い。
営業職に就いているケースで、得意先と宴席を開く場合を想定したい。この場合先方の食べ物の好き嫌いを調査、時間調整を行い、先方が行きやすい場所を調べてお店を予約、更には宴席ではその場その場に応じて先方と話を合わせ、失礼のないような会話で場を盛り上げる必要がある。このような一連の流れるようなスマートな行動はASDの方が苦手とすることが多く、筆者はこれをするだけで週末は何もできなくなるくらい疲れてしまう上、かなりの予行演習が必要になると思う。定型発達の人間からすればこれの何が難しいの?といった感じだとは思うが、発達障害者にとってはこれだけでも本当に厳しいのだ。
これは普段の業務にも当てはまる。他の部署と連携し、何か案件を遂行していく必要がある業務では、その場その場で適切な立ち回りや根回しが必要になる。ホウレンソウや根回しは社会人には必要不可欠なスキルであるが、ASDはこれを苦手とすることが多い。
ASDが得意とするのは型にはまったルーティン作業やつまらなく根気が必要な複雑な事務作業、更には高度な専門知識が要求される業務である。
筆者が現在属している部署ではつい最近まで定型発達の体育会系の方が隣にいた。その方はたまたま理系出身であったため、筆者の部署に来たのだが、あまりにも業務がつまらないということですぐに異動希望を出し、いなくなってしまった。その方がおかしいと言いたいわけでは全くなく、むしろ普通の感覚であると思う。ASDの強みはこのようなつまらなく、面白味がなく、花形ではないような職種であっても、特段不満なく黙々とこなせるところである。企業内には、そのような日陰のような目立たない部署は多くある。大体そのような部署は人集めに苦労していることが多い。でも企業としての事業を継続させていく上ではそのような業務は必要不可欠であるし、人集めに苦労しているからこそ一度そこがはまれば重宝される可能性が高い。ASDの場合は色んな部署を見てみて、自分に合ったところを探す努力が不可欠だと思う。
【幅広い業務を積みながらジェネラリストを目指していく文系総合職】
→文系総合職においては、色んな部署を経験し、その会社内で管理職を目指すことを是とする。これもASDにとってはかなり厳しい。まずASDは変化に弱いので2~3年でジョブローテーションすると異動先で最初のうちはかなり適応に苦労するケースが多い。更にASDが管理職になったとして、うまく部下をマネジメント出来ると思えない。
実際に筆者も浅い年次の段階では色んな業務を経験したが、いずれも最初の導入段階ではかなり苦労した。前述したようにASDが最も得意とするのは、知識の積み重ねが必要な専門職やミドルオフイス、バックオフィスである。ジェネラリスト型で同一企業内で管理職を目指すルートよりも専門性を身に着け、労働市場においてジョブホップする方がASDには向いている。
【体育会系の雰囲気が残り、同調圧力が強いマッチョな職種・業界】
→体育会系的な側面が強い職種・業界においては何事においても同調を求められることが多い。ASDはマイペースであり、自分の中での決まったルーティンが既に確立されてしまっているため、このような職場では激しいストレスを覚える可能性が高い。ちなみにこのような同調圧力は職場の至るところで存在する。付き合い残業、休日のゴルフ、特段意味のない早朝出社、効果のない在宅禁止等である。
筆者が一番ストレスに感じたのは職場の人と一緒に昼食にいくことを要求されたケースである。
会社の食堂に一人で行く→定食セットを頼む→携帯を触る→昼寝を20分程度取得する→外に出て散歩。このルーティンを社会人一年目の入社初日からずっと繰り返してきたので、これが出来ない日は本当にストレスを感じていたし、疲れも取れないので午後の業務には全く力が入らなった。他にも休日の誘いや業後の飲み会なども生活をかき乱されるので本当に辛かった。そもそもそのような場も人事評価に入ってくるので気が抜けない。伝統的な日系大手のフロントオフィスや業界全体として体育会系の気質が残る総合商社や不動産業界はASDが進んではいけない業界だと思う。
【雑多な関係人物を取りまとめる必要がある企画職】
→企画職といっても実はその言葉の定義は曖昧で雑多な業務内容をさすことが多い。ここではリエゾン的な役割を有する職種として企画職を定義する。そもそもASDはコミュ障であるケースが多い。リーダーシップも欠如していることが多い。そのためマネジメントやリエゾン等の人を巻き込む必要が職種は向かないことが多い。またこのような職種の場合は、業務内容がきちんと定まっているケースは少ない。ASDは明確な指示があったり、業務内容が具体的である方がフィットすると思うのでこのような職種は向かないと考えて良い。
【地方、海外出張が多くあり自分の生活リズムを維持しにくい職種】
これもこれまで繰り返し強調してきた点である。ASDは不規則な生活に弱いが、出張が多くある場合、必然的に生活は不規則になりがちである。また筆者の場合はそうなのだが、ASDは変に繊細で感覚過敏であるため、出張先のホテルでは寝ることが出来ないケースが多い。そもそも環境の変化を嫌うので、自宅に帰れないことに強いストレスを感じる可能性が高い。これらを踏まると定期的に出張があるフロントオフィスの職種はASDには向いていないと断言できる。
【長時間労働が連日要求される職種】
→長時間労働が問題になるか否かは人によるし、そもそも長時間労働は定型発達の人間にとっても辛いものである。それでもASDの場合は、長時間労働は問題になることが多い。
業後の飲み会や休日のゴルフも勤務だと考えると、実はオフィスに夜遅くまでいる長時間労働の方が問題になるケースは少なくない。筆者の場合は、夜遅くまでプログラミングを書いていても全然辛くなく、むしろ周囲のメンバーが帰った後に一人で残業している時が一番幸せである。
とは言え、過剰な長時間労働はやはりASDには向かない。そもそも疲れやすいことに加えて、ASDの多くは睡眠障害を抱えているケースも多いので、睡眠不足の状態で長時間労働を行うのはつらいかもしれない。また長時間労働を要求されると家庭もままならないし、自分のルーティンも維持できなくなる。
【手先の器用さが要求される現業的な職種】
→これは医者やメーカーの工場勤務で機器を操作する必要があるケース、ブルーカラーの場合等に要求される。ASDは多くの場合、手先に不器用さを抱えている。協調運動が苦手なことが原因であると思う。筆者の場合、小さい頃は家庭科や技術、美術、音楽の授業はいずれも苦手でこれが原因で内申書が取れず、結局東大なんて一人も出ないような公立高校ですら通らなった(というか内申書のビハインドが大きすぎたので受験もしなかった)
このような手先の器用さが要求される職種にASDがついてしまうと自身が評価されないだけでなく最悪事故を起こしてしまう可能性もあり、社会的なロスが大きい。
上記でASDに向かない職種に関して考察したが、実は東大卒が進みがちな進路の中でもこのような職種は多く存在する。
その中でも世間一般で花形と呼ばれる職種とそれがASDには不向きな理由を説明したい。
1. 国家公務員(官僚)
ひと昔前までは東大卒の王道の進路で筆者の周りでも優秀と言われている層の多くは官僚になっていた。近年ではその労働条件の悪さが知れ渡ってしまい、かなり人気は低迷してしまったようだ。
以下のポイントがASDには向かないと思う。
・超長時間労働
・旧態依然としたカルチャー
・優秀な人間が多いことから来る競争的な職場
・リエゾン的な役割の多さ(企画的な側面が強い)
・スペシャリスト志向よりもジェネラリスト志向が要求される
・若いうちでないと転職先に困る
・地方転勤も多い
やりがいはあるかもしれないが、普通に考えると労働条件は悪い。
2.総合商社(+デベロッパー)
筆者のときから人気は高かったが、その待遇の良さから近年では更に人気が上昇しているようだ。それでもASDには向かないと思うし、そもそも面接を突破できない可能性が高いと思う。筆者は帰国子女で英語が話せたので、就活生のときは総合商社を受けてみたらと言われたことも多かったが、やはり自分にはついていけないと思い、断念した記憶がある。
最初からコーポレート部門狙いで入社し、Windows2000を狙うのであればかなりコスパはいいかもしれないが、Windows2000は狙ってなれるものなのだろうか。この辺りに詳しい人がいたら是非教えてほしい。
以下の点がASDには厳しい
・体育会系出身の人が多く、そもそも定型発達でないと受かりにくい
・コミュニケーション能力が要求される
・スペシャリストよりもジェネラリスト志向
・社内外の付き合いが多い
・若いうちはポテンシャル採用で他業界に行けるが、中年以降はその限りではなく転職先に困るケースも
・海外駐在が回避しにくい。新興国や発展途上国に行くケースも多い(総合商社のケース)
3.政府系金融機関
こちらも東大卒には非常に人気が高い。確かに一般的な日系金融機関のリテール採用に行くよりは良いと思う。
政府系金融機関の場合は基本的に職種別採用を行っておらず、どちらかというとジェネラリスト志向が強い。個人的にはASDであれば、政府系金融機関のオープン採用に入るよりも日系金融(銀行、証券、生損保、その他)の金融専門職の方が向いていると思う。以下の点がASDには厳しい
・地方転勤あり
・文系総合職的な立ち位置
・社内全体の人数が少ないため、村社会的な組織体系
・ジェネラリスト志向が強い
・東大卒が多く、学歴や勉強が出来るという点だけで優位に立つことが難しい
4.投資銀行業務
当該業務は昨今の専門職志向の高まりの中で人気を博している。専門知識に加えて人間による交渉が要求される領域であるため、AIに代替される可能性も低い。
専門職という観点では、ASDに向いてそうだが、そうとは言えない事情がある。
まず投資銀行業務はカバレッジとプロダクツに分けることが出来る。
カバレッジは大企業相手にM&Aや資金調達の提案を行う営業部隊である。営業ではあるのだが、金融、企業財務の知識や更には顧客が属する業界の背景知識も必要になるため、ただの体育会系では務まらない。小売り、金融、商社、不動産、製薬などセクターで分かれていることが多い。
当該業務はASDにはかなり厳しい。まずかなりの長時間労働を要求される。昔の話にはなってしまうのだが、日系であれば毎日深夜11時、外資であれば26時までの超長時間労働をこなす必要がある。更に営業部隊であるため、スマートさが要求される。筆者は金融業界に属しているのでよく分かるのだが、この領域は慶応卒が本当に多い。しかも大体は内部上がりである。
東大ほどの頭脳は要求されないが、そこそこの地頭、育ちの良さ、体力、スマートさが必要な業務なので慶応卒にはうってつけなのである。外資、日系問わず投資銀行部門のカバレッジは慶応が最大派閥だと思う。東大や京大、東工大などの国立がメインのマーケット業務とは大きな違いである。
次がプロダクツであるが、こちらはカバレッジがとってきたM&Aや資金調達の案件を実際に執行する部隊である。営業活動をカバレッジとともに行うことも多いが、どちらかというと要求されるのはM&Aや資金調達に関連する深い知識である。こちらの領域であればASDでも行けそうだと一見思うのだが、やはり厳しいと思う。
まずかなりの長時間労働が要求される。平均するとカバレッジよりも労働時間は長いかもしれない。M&Aの執行部隊なんかに関しては案件のクロージング前は連日の徹夜を要求されることもあるとも聞く。
また営業部隊ではないとは言え、立ち振る舞いのスマートさや立ち回りのうまさも要求される。業務量が単純に多いため、手際よく業務を片付けていく必要もある。プロダクツの場合は東大卒や京大卒も多くなるが、それでも最大派閥は慶応であろう。
ちなみにいずれの職場も非常に競争的な雰囲気である。当該業務の場合は、金融が好きというよりも事業や経営に関心のあるメンバーが多く、将来的には起業を考えているメンバーが多い。そのためメンバーは非常にエネルギッシュで常に獲物を狙っているような獰猛な肉食系の方が多い印象だ。
それゆえ社内競争は非常に厳しく、日系、外資問わず出来ないメンバーに対する当たりは非常にきつい。このような競争的な環境に繊細でのろまなASDがついて行けるとはとても思えないのだ。
まとめると投資銀行業務の場合は、以下の点がASDには厳しい。
・軍隊チックな雰囲気
・連日要求される長時間労働
・カバレッジにおいては特にスマートさが必要
・そもそも対顧客ビジネスなのでコミュニケーション能力が要求される
・社内競争が非常に厳しく、メンバーがアグレッシブで他人に厳しい
5.重工長大産業の文系総合職
これはイメージとしては、鉄道やインフラ、鉄鋼などのメーカーの文系総合職である。筆者は就活生のときに何となくホワイトそうという理由で、インフラ系の一社を受けたのだが、適性検査で落ちた。発達障害を見抜くための特殊な試験を受けた記憶がある。
これらの業界の特徴としては、業界固有のスキルや知識が他には横展開できない点がある。そのためこれらの企業に新卒で入社すると基本的にはずっと同じ会社で長年勤めていくことになるし、要求されるのはスペシャリストではなく圧倒的なジェネラリスト能力である。
年齢を重ねるにつれて転職もしにくくなっていくので、村社会から逃げることが出来なくなってしまう。筆者は適性試験で落ちたと前述したが、きっとこれらの業界では能力の凸凹はかなりのマイナス要素なのだと思う。
まとめると文系総合職のネガティブ要素がそのままASDには厳しい業界となってしまう。
6.外科医を筆頭に手先の器用さが要求される専攻
医者というだけでASDに不向きだとは言えない。むしろバイトだけで生きて行けたり、個人で開業することも出来る医者は社会不適合なASDにはかなりおススメだと思う。
ただこれは、患者に迷惑をかけないのであればという前提条件付きである。
普通に考えると手先が不器用でろくに手術が出来ないのであれば外科医やその他手先の器用さが要求される専攻医は向いていないし、患者のためにもならない方がいいだろう。
筆者は現在AGAの治療のためにクリニックに通っているが、見ている感じ手先の器用さは必要には見えない。医者には色んな稼ぐ方法があるので無理に手術が要求される専攻を選択する必要はない。またこれらの専攻の場合は手術があるため長時間労働になることも多い。
上記の理由からASDを抱える方には手先の器用さが要求されるような外科医は向いていない。
ざっと色んな職業を並べてみたが、いずれも花形職種で在り、かなりの高給が期待できる職種ばかりだ。やはりそれなりの高給を安定して稼ぐためには学歴に加えて定型発達で在り、人としての完成度も要求されるということだ。
ASDの方には、就職偏差値や世間体に惑わされずに是非自分に合った職業を選択してほしい。